バンクーバー・カナックス

カナダのブリティッシュコロンビア州バンクーバーに拠点を置くバンクーバー・カナックスは、ナショナルホッケーリーグ（NHL）に加盟するプロアイスホッケーチームです。

創設と初期の歩み

チームの歴史は1945年に始まります。太平洋岸ホッケーリーグ（PCHL）がバンクーバー市にフランチャイズの設立を決定したことに伴い、バンクーバー・カナックスが誕生しました。創設からわずか2シーズン目でPCHLのタイトルを獲得するなど、チームは順調なスタートを切りました。

1952年には、PCHLが西部カナダシニアホッケーリーグと合併し、プロマイナーリーグである西部ホッケーリーグ（WHL）が設立されます。カナックスはWHLに加盟し、このリーグでも成功を収めました。ジョニー・バウワー、アンディー・バスゲート、トニー・エスポジト、ボビー・オア、フィル・マロニーといった数々のスター選手を輩出し、1958年、1960年、1969年、1970年にはWHLの優勝トロフィーであるレスター・パトリック・カップを獲得しています。

NHL加盟への道

NHLは1965年、新たに6チームを加えるリーグ拡張計画（後に「エクスパンション・シックス」と呼ばれる）を発表しました。当時WHLに加盟していたカナックスのオーナーであり、元バンクーバー市長でもあるフレッド・ヒューム氏は、バンクーバー市としてこの計画への参加を申請することを表明しました。

しかし、NHLの理事会に対するプレゼンテーションは準備不足が顕著であり、さらにバンクーバーのオーナーグループと、シカゴ・ブラックホークスのジェームス・ノリスやトロント・メープルリーフスのスタフォード・スマイス（バンクーバー市へのアリーナ建設に失敗し、同市を嫌悪していたとされる）といった既存オーナーとの関係が悪かったことなども影響し、参加申請は認められませんでした。

にもかかわらず、将来的なNHL加盟を期待して、ホームアリーナとなるパシフィック・コロシアムがバンクーバー展示場の敷地に建設されました。

1970年、別のオーナーグループがマイナーリーグ所属のカナックスを買収しました。そして、度重なる交渉の結果、チームは600万ドルを支払ってNHLへの参入が決定しました。この際、リーグ全体の均衡を保つため、バンクーバーが北米大陸の西海岸に位置するにもかかわらず、カナックスは東部地区に配置されました（同年には、シカゴ・ブラックホークスが東部地区から西部地区へ移動しています）。

NHL加盟初年度の1970年 10月9日、カナックスはロサンゼルス・キングスと初の公式戦を行い、バリー・ウィルキンスがチーム初ゴールを記録しました。初勝利は10月11日のトロント・メープルリーフス戦で、5対3で勝利を収めています。

スタンレー・カップ決勝への挑戦

カナックスはチーム史上、2011年までに3度スタンレー・カップ決勝の舞台に立っています。

1982年: 初めての決勝進出は1982年でした。決勝では強豪ニューヨーク・アイランダースと対戦しましたが、歯が立たず4連敗で敗退しました。

1994年: 二度目の決勝進出は1994年です。このシーズン、カナックスは西カンファレンス7位という下馬評を覆し、快進撃を見せました。キャプテンのトレーバー・リンデン、点取り屋として活躍したパベル・ブレ、そしてゴーリーのカーク・マクリーンらの活躍がチームを牽引し、決勝まで駆け上がりました。決勝ではニューヨーク・レンジャースと対戦し、シリーズは最終第7戦までもつれ込む激戦となりましたが、3勝4敗で惜しくも敗れました。この敗北を受けて、バンクーバー市内では一部のファンが暴徒化する騒動が発生しました。

1994年以降: 1994年の後、マーク・メシエのようなスター選手もチームに加わりましたが、再び決勝に進むような成績は残せませんでした。しばらくプレーオフからも遠ざかる時期が続きます。

2006年の転換: 2006年、フロリダ・パンサーズからスターゴーリー、ロベルト・ルオンゴを獲得したことで、チームは再びプレーオフ進出を果たします。ルオンゴにとって初のプレーオフでしたが、1回戦のダラス・スターズとのシリーズでは、両チームのゴーリー（スターズはマーティ・ターコ）が好セーブを連発する激しい試合展開となりました。最終的に4勝3敗で2回戦へ進出しましたが、続くラウンドで後にスタンレー・カップを制覇するアナハイム・ダックスと対戦。攻撃力の課題を露呈し、2回戦で敗退となりました。

* 2011年: 三度目のスタンレー・カップ決勝は2011年でした。ボストン・ブルーインズとの対戦は、こちらもフルセットの激闘となりましたが、バンクーバーで開催された最終第7戦で0対4と完敗し、3勝4敗で優勝はなりませんでした。18年ぶりにカナダへカップをもたらすという大きな期待があっただけに、この敗北に対する一部ファンの怒りは大きく、試合後には大規模な暴動が発生しました。車両への放火や略奪行為などが発生し、出動した機動隊が催涙弾などを用いて鎮圧にあたり、100人以上の逮捕者が出ました。この出来事は、チームの歴史における暗い一面として記憶されています。

カナックスは、NHLでのスタンレー・カップ獲得にはまだ至っていませんが、その歴史を通じて数々のドラマと熱狂を生み出し、バンクーバーの街に深く根差した存在であり続けています。

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