パガン島

パガン島は、北マリアナ諸島に位置する島で、アメリカ合衆国の自治領である北マリアナ諸島に属しています。サイパン島の北約320kmに位置し、北にはアグリハン島、南にはアラマガン島があります。面積は約48平方キロメートルで、北部諸島の中では最大の島です。島名は、スペイン語の「pagano（異教徒）」に由来するチャモロ語からきています。

島は、2つの火山から構成されています。北東部には標高570mの活火山であるパガン山があり、南西部には4つの火口を持つ標高548mの高地があります。この高地は、通称クタキヤシ、丸山、またはツルギ山とも呼ばれます。2つの火山の間は、溶岩が固まってできた地峡部でつながっており、幅が最も狭いところでは約500mです。火山学では、パガン山を「北パガン」、南西部の高地を「南パガン」と呼ぶことがあります。

北東部のパガン山は活発な火山活動を続けており、1981年には大規模な噴火で溶岩を噴出しました。その後も断続的に噴火を繰り返しており、1993年にも比較的大きな噴火がありました。一方、南西部の高地は、1864年の噴火以降、大きな活動は確認されていません。パガン山の西方には2つの湖があり、その一つであるラグナ湖の北岸からは温泉が湧出していました。

2006年には、人工衛星の観測により、北パガンから火山灰や火山ガスが小規模に噴出していることが確認されましたが、特に被害は報告されていません。

島の平地には、野原もありますが、多くはヤシや松などの森林が広がっています。古くから人が住んでいたため、持ち込まれた動植物によって生態系が大きく変化しており、ヤギ、ブタ、ウシなどの家畜が野生化しています。特にウシは数百頭まで繁殖しています。

1981年の噴火により、島の住民53人は島から避難しました。その後、多くは島に戻らず、2005年時点では、北西部のバンダラ集落に約20人が暮らしていましたが、2008年には2名にまで減少しました。

交通手段は、定期便はなく、サイパン島から船やヘリコプターをチャーターする必要があります。第二次世界大戦中に使用された滑走路は、1981年の噴火で溶岩流に覆われてしまいましたが、現在は整備されておらず、草が生い茂った状態です。小型の双発固定翼機であれば、かろうじて離着陸が可能です。滑走路の脇には、零戦と九七式重爆撃機の残骸が残されています。これらの残骸は、1944年秋に硫黄島から飛び立ち、サイパン島の米軍基地への空爆を試みた後、パガン島に不時着したものです。

歴史的には、1668年に宣教師のサンビトレスが来島し、サント・イグナチオと名付けました。1672年には、スペインが統治のために住民をグアム島に強制移住させましたが、その後チャモロ人は19世紀前半に戻りました。この頃には、カロリン諸島からカナカ人も移住してきました。

第一次世界大戦後、ドイツの敗北により、日本が委任統治を開始すると、沖縄などから日本人の入植が本格化し、コプラや綿花などの栽培が盛んになりました。マリアナ諸島外からも多くのカナカ人が移住し、これらの栽培に従事しました。また、カツオやマグロなどの漁業も行われました。

1933年に日本が国際連盟を脱退した後、島は哨戒基地としての役割を重視され、1935年頃から飛行場の造成、1937年頃から海軍基地の建設が始まりました。第二次世界大戦中の1942年当時、島には日本人413人、カナカ人229人が暮らしていました。

1944年6月には、陸軍の混成連隊が配備され、連合国軍による空爆が激しくなり、約2ヶ月で食料が不足する事態となりました。同年12月には潜水艦による物資輸送が行われましたが、終戦まで食料不足が続きました。爆撃による人的被害はほとんどありませんでしたが、栄養不良による死者は数百人に及びました。終戦後の1945年10月下旬から、数度にわたる引き上げが行われました。

第二次世界大戦後はアメリカの信託統治領となり、その後、アメリカの自治領となりました。

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