パット・マステロット

1955年 9月10日にアメリカ合衆国カリフォルニア州チコで誕生したパット・マステロットは、そのキャリアを通じてポップからプログレッシブ・ロックまで、幅広いジャンルで活躍するドラマーです。

来歴

10歳でドラムを手にし、その後ロサンゼルスへと活動の場を移すと、1980年代からはスタジオ・ミュージシャンとして本格的に活動を開始しました。1981年には、日本で開催された第12回世界歌謡祭に、ホリー・ペンフィールドのバックバンドとして参加。この時、日本のロックバンド、スーパースランプのドラマー、サンプラザ中野氏のパフォーマンスに感銘を受け、親交を深めたという逸話が残っています。

1983年にはMr.ミスターを結成し、翌1984年にデビューを果たしました。1985年にリリースされたセカンド・アルバム『ウェルカム・トゥ・ザ・リアル・ワールド』は全米Billboard 200チャートで首位を獲得し、バンドは商業的に大きな成功を収めました。Mr.ミスターでの活動と並行して、パットは多忙なスタジオワークを続け、ポインター・シスターズ、エディ・マネー、パティ・ラベル、ケニー・ロギンス、XTCといった多様なジャンルのアーティストたちのレコーディングに参加しました。

Mr.ミスターが1989年に解散した後も、パットの活動は多岐にわたりました。ホール&オーツやロビン・ヒッチコックらとの共演を経て、1993年にはデヴィッド・シルヴィアンとロバート・フリップによるプロジェクトのツアーメンバーに加わります。さらに、ロバート・フリップの門下生であるギタリスト、スティーヴ・ボールと共にプロメテウスを結成し、1994年には唯一のアルバム『火神プロメテウスの物語』をリリースしました。

そして1994年、パットはプログレッシブ・ロック界の伝説的バンド、キング・クリムゾンに迎え入れられます。当初はビル・ブルーフォードとのツイン・ドラム編成でバンドのリズムを支えました。1997年から1999年にかけてバンドが一時的にプロジェクト単位で活動していた時期には、プロジェクト3やプロジェクト4として作品を制作。ビル・ブルーフォード脱退後は、パットがキング・クリムゾンのメインドラマーとして活動を継続しました。

キング・クリムゾンでの活動と並行して、パットは数多くの革新的で実験的なプロジェクトに参加しています。1999年にはトリオバンドのマスティカを結成しアルバム『99』を発表。2001年にはキング・クリムゾンの作品にも関わったエンジニア、ビル・マニヨンとのユニットBPM & Mとして『エクストラクツ&アーティファクツ』をリリースしました。また、ロバート・フリップの教え子ギタリストによるカリフォルニア・ギター・トリオのアルバムに、ベーシストのトニー・レヴィンと共にゲスト参加。フィンランドのアコーディオン奏者キンモ・ポーヨネンらとのユニットKTUや、トニー・レヴィンとのDUOプロジェクトTUでも活動を展開しています。2007年にはスウェーデンのプログレッシブ・ロックバンド、フラワー・キングスのツアーメンバーとして一時的に参加しました。

2008年にはキング・クリムゾンにギャヴィン・ハリソン（ポーキュパイン・ツリー）が加入し、バンドは再びパットとギャヴィンによるツイン・ドラム体制となります。同年から2010年にかけては、アラン・ホールズワース、テリー・ボジオ、トニー・レヴィンという豪華メンバーと共にHoBoLeMaと呼ばれるプロジェクトでツアーを行い、テリー・ボジオの日本公演にもスペシャルゲストとして参加しました。

2010年6月、パットはトニー・レヴィンらと共に結成したトリオバンド「スティック・メン」として来日公演を行い、その後も同バンドの主要メンバーとして精力的に活動。日本にも度々訪れており、2015年12月には再始動したキング・クリムゾンのメンバーとして再び日本のファンにその演奏を披露しました。

使用機材

パット・マステロットは、主にドラム・ワークショップ（dw）製のドラムセットを使用しています。ドラムヘッドにはエヴァンス（EVANS）製、シンバルにはパイステ（PAiSTe）製、スティックにはヴィックファース（Vic Firth）製を用いることが多いようです。

Mr.ミスター時代の大衆的なヒットから、キング・クリムゾンやスティック・メンでの複雑なアンサンブルまで、常に進化し続ける彼のドラミングは、世界の音楽シーンにおいて独自の存在感を放っています。

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