パラアンキロサウルス類

パラアンキロサウルス類：ゴンドワナ大陸の謎に包まれた曲竜類

パラアンキロサウルス類（Parankylosauria）は、南アメリカ大陸、南極大陸、オーストラリア大陸といった、かつてのゴンドワナ大陸に存在した基盤的な曲竜類のグループです。ジュラ紀中期に他の曲竜類から分岐したと考えられていますが、化石記録が少ないため、正確な分岐時期は不明です。

研究史：ゴンドワナ大陸の曲竜類研究

ゴンドワナ大陸は、現在では南アメリカ、南極、オーストラリア、アフリカ、インド亜大陸、ジーランディアに分裂していますが、中生代には一つの超大陸でした。北半球のローラシア大陸と比較して、ゴンドワナ大陸の曲竜類の研究は遅れており、化石記録も限られています。

1904年にはオーストラリアで曲竜類の化石が報告されましたが、多くは誤同定であり、後に曲竜類ではないと判明しました。1964年にオーストラリアで初めて確実な曲竜類が発見され、1980年にミンミ・パラベルテブラ（Minmi paravertebra）と命名されました。この発見により、南アメリカとオーストラリアの曲竜類が生物地理学的に関連している可能性が指摘されました。

ゴンドワナ大陸産の曲竜類は、化石資料の乏しさから研究が難航していました。特に、南極大陸で発見されたアンタークトペルタの脊椎骨は、真曲竜類とは大きく異なっており、キメラ標本である可能性や、海棲爬虫類に属する可能性も指摘されていました。

しかし、2021年に発表されたステゴウロスの記載によって状況は一変しました。ステゴウロスのタイプ標本は保存状態が良く、南半球産の曲竜類が単一系統のグループを形成していることが明らかになったのです。この研究に基づき、セルジオ・ソト＝アクーニャらは、ステゴウロス、アンタークトペルタ、クンバラサウルスを含むグループを「パラアンキロサウルス類」と名付けました。

ただし、パラアンキロサウルス類はゴンドワナ大陸唯一の曲竜類ではありませんでした。2022年にはアルゼンチンからノドサウルス科のパタゴペルタが記載され、北アメリカ産のノドサウルス科と近縁であることが判明しました。これは、パラアンキロサウルス類に加え、より派生的な真曲竜類も南アメリカに生息していたことを示唆しています。また、2024年の研究ではパタゴペルタもパラアンキロサウルス類に含まれる可能性が指摘されています。

解剖学的特徴：小型で特徴的なスパイクを持つ

パラアンキロサウルス類の既知の属は、全長1.5メートルから4.0メートル程度の小型恐竜であり、頭蓋骨が比較的大きいことが特徴です。最も特徴的なのは、尾の先端にあるマクアウィトル（スパイク）です。これは、5対の頑丈な皮骨板が融合して形成されたもので、尾の側面を覆い、先端付近では全体を囲んでいます。ステゴウロスでは確認されており、アンタークトペルタでも間接的な証拠から存在が示唆されています。

ステゴウロスでは、このスパイクが尾の短縮と関連しており、他の曲竜類よりも椎骨の数が少ないことが特徴です。また、パラアンキロサウルス類の体の大部分は骨硬膜で覆われており、棘のある装甲として機能していたと考えられています。

原始的な特徴：真曲竜類との比較

パラアンキロサウルス類は、真曲竜類と比較して、より原始的な獣脚類や剣竜類の特徴を多く保持しています。特に、胴体に対して手足が長く細いことが顕著です。頭蓋骨は他の曲竜類と類似しており、曲竜類の進化の初期に高度な頭骨形質が獲得されたことを示唆しています。

また、パラアンキロサウルス類は、真曲竜類と比較して装甲が軽い可能性が指摘されています。クンバラサウルスでは骨皮が保存されておらず、他の属でも側腹の骨皮が確認されていないことから、真曲竜類のような過剰な構造ではなかったと考えられています。

分類：系統学的位置づけ

パラアンキロサウルス類は、「アンキロサウルスよりもステゴウロスに近いすべての分類群」と系統学的に定義され、真曲竜類と対をなすグループです。彼らの系統樹は研究者によって議論されていますが、ゴンドワナ大陸の曲竜類の進化を理解する上で重要な位置を占めています。

パラアンキロサウルス類の研究はまだ始まったばかりですが、今後の化石発見や系統解析によって、彼らの進化史や生態がより明らかになることが期待されます。

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