パリ地方音楽院
パリ地方音楽院（仏: Conservatoire à rayonnement régional de Paris、略称: CRR de Paris）は、フランスの首都パリ中心部、高級住宅街として知られる8区に主要な施設を構える公立の芸術教育機関です。フランス文化省の監督下にあるこの音楽院は、国内に設置された41校の地域圏立音楽院の一つであり、特に質の高い教育を提供する名門校として評価されています。音楽、舞踊、演劇の各分野において、多岐にわたる専門教育プログラムを提供しています。
CRR de Parisの歴史は、特に音楽教育の拠点としてのマドリッド通りの変遷と深く結びついています。現在の本部キャンパスがあるパリ8区のマドリッド通り14番地は、かつてフランス音楽界の最高学府であるパリ国立高等音楽・舞踊学校（CNSMDP）が1911年から1990年まで使用していた由緒ある場所です。この地へのCNSMDPの移転は、著名な作曲家ガブリエル・フォーレによって実現されました。CNSMDPの存在は、この界隈に弦楽器や弓の工房、楽譜店、管楽器店などが集積する音楽関連の街並みを形成しました。
1990年にCNSMDPがラ・ヴィレット公園に移転した後、パリ市の主導により、1978年に設置されていた旧パリ国立地方音楽院が、このマドリッド通りの旧CNSMDP校舎に移転・再編され、現在のCRR de Parisの基盤が確立されました。移転後、1994年から1996年にかけて、デュボスク＆ランドフスキ建築事務所による大規模な内装改修が行われ、建物の外観を維持しつつ、教育施設として現代的な機能が強化されました。この改修は、当時の文化省関係者やパリ市関係者も立ち会う盛大な落成式で祝われました。2006年10月12日の政令により、国の管轄から地方自治体へと運営が移管され、現在の「パリ地方音楽院」という名称になりました。ジャック・タッデイ氏が長年にわたり院長を務めるなど、多くの教育者がその発展に貢献しています。
CRR de Parisは、初等レベルからプロフェッショナルの育成まで、幅広い年齢とレベルに対応した教育を提供しています。パリ市内の中等教育機関との連携プログラムや、パリ国立高等音楽院をはじめとする国内外の高等音楽院への進学準備課程、さらには既に専門家として活動している者向けのプロ養成講座など、多様なニーズに応じたコースが設けられています。特に注目すべきは、ソルボンヌ大学およびパリ・ブローニュ・ビヤンクール高等音楽院との連携による学士課程（国家音楽家資格、DNSPM; Bac+3）の取得が可能である点です。これにより、高度な実技能力と学術的な知識を兼ね備えた音楽家の育成が行われています。
CRR de Parisは、以下の主要な10学科を中心に構成されており、さらに各学科内で楽器や分野、専門性に応じた専攻やクラスが細分化されています。
器楽科 (Département Instrumental)
声楽科 (Département voix)
ジャズ科 (Jazz)
古楽科 (Musique ancienne)
管弦楽科 (Formation à l'orchestre)
室内楽科 (Musique de chambre)
フォルマシオン・ミュジカル、エクリチュール、教養科
少年少女合唱科 (Le jeune chœur de Paris)
演劇科 (Le théâtre au CRR de Paris)
舞踊科 (La danse au CRR de Paris)
CRR de Parisは、提供する分野に応じて複数のキャンパスに施設を設けています。
音楽科施設: 本部キャンパスであるマドリッド通りの施設は、建築面積約5,500平方メートルを誇ります。ここには、著名な音楽家を記念して名付けられた複数のホールがあります。主要なホールとしては、マルセル・ランドスキ・ホール（400席）、オリヴィエ・アラン・オルガンホール（100席）、ガブリエル・フォーレ・ホール（80席）、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ・オルガン合唱ホール（50席）などがあります。その他、ローベール、ガビー・カサデシュ、クロード・デルヴァンクール、ピエール・サンカン、ジョルジュ・プレットル、ジャン＝ピエール・ランパル、リリ・ラスキヌ、アンドレ・ナヴァラを記念したホールも備えています。また、約50室の教室や練習室に加え、各ホールと連携した録音スタジオも完備されており、学生は充実した環境で学ぶことができます。
舞踊科施設: 舞踊科の高等教育課程は、パリ市庁舎がモンマルトル地区に設置したアベス劇場内にあります。建築面積は約2,300平方メートルで、ここにはセルジュ・リファール、マーサ・グレアム、ヴァーツラフ・ニジンスキー、ジョージ・バランシンといった舞踊史上の巨匠たちの名を冠したスタジオが4つ設けられています。その他、教室、練習室、メディアライブラリー、カフェテリア、事務室などを備え、舞踊教育に特化した環境を提供しています。この施設は、シャルル・ヴァンデンホーヴを含む著名な建築家や芸術家が設計に関わった建築物の一部であり、1996年に落成式が行われました。
* 演劇科施設および図書館施設: 演劇科およびパリ市音楽院中央図書館は、かつてレ・アル地区にあった市場跡地に建設された大規模な地下センター、フォーラムの地下に位置しています。この地下空間は、1985年にポール・シュメトフの設計によって完成しました。2007年1月からは、この施設内に演劇高等教育課程（ESAD）が開設され、舞台芸術における現代的な美学と俳優技術を習得するための3年間のカリキュラムが提供されています。学生主導の舞台プロジェクトも積極的に支援されています。
パリ市音楽院中央図書館は、1988年に開設され、建築面積約1,500平方メートルの空間に、主にクラシック音楽を中心とした約50,000冊の音楽出版物や楽譜を収蔵しています。楽譜資料が大部分を占め、室内楽、声楽、音楽理論書、オーケストラ・スコア、パート譜などが豊富に揃っています。また、現代音楽のスコアや一般的な器楽レパートリーに加え、『ニューグローヴ音楽大事典』や『MGG (Die Musik in Geschichte und Gegenwart)』といった主要な音楽辞典・事典の複数エディションも備えています。閉架資料はCRR de Parisおよびパリ市内の18校の区立音楽院の学生・教授が利用可能ですが、開架資料は一般の公共利用者にも開かれており、広く音楽愛好家に利用されています。
これらの施設は、パリ地方音楽院が多分野にわたる芸術教育を推進し、パリの文化・芸術活動に貢献するための重要な基盤となっています。
歴史
CRR de Parisの歴史は、特に音楽教育の拠点としてのマドリッド通りの変遷と深く結びついています。現在の本部キャンパスがあるパリ8区のマドリッド通り14番地は、かつてフランス音楽界の最高学府であるパリ国立高等音楽・舞踊学校（CNSMDP）が1911年から1990年まで使用していた由緒ある場所です。この地へのCNSMDPの移転は、著名な作曲家ガブリエル・フォーレによって実現されました。CNSMDPの存在は、この界隈に弦楽器や弓の工房、楽譜店、管楽器店などが集積する音楽関連の街並みを形成しました。
1990年にCNSMDPがラ・ヴィレット公園に移転した後、パリ市の主導により、1978年に設置されていた旧パリ国立地方音楽院が、このマドリッド通りの旧CNSMDP校舎に移転・再編され、現在のCRR de Parisの基盤が確立されました。移転後、1994年から1996年にかけて、デュボスク＆ランドフスキ建築事務所による大規模な内装改修が行われ、建物の外観を維持しつつ、教育施設として現代的な機能が強化されました。この改修は、当時の文化省関係者やパリ市関係者も立ち会う盛大な落成式で祝われました。2006年10月12日の政令により、国の管轄から地方自治体へと運営が移管され、現在の「パリ地方音楽院」という名称になりました。ジャック・タッデイ氏が長年にわたり院長を務めるなど、多くの教育者がその発展に貢献しています。
教育内容
CRR de Parisは、初等レベルからプロフェッショナルの育成まで、幅広い年齢とレベルに対応した教育を提供しています。パリ市内の中等教育機関との連携プログラムや、パリ国立高等音楽院をはじめとする国内外の高等音楽院への進学準備課程、さらには既に専門家として活動している者向けのプロ養成講座など、多様なニーズに応じたコースが設けられています。特に注目すべきは、ソルボンヌ大学およびパリ・ブローニュ・ビヤンクール高等音楽院との連携による学士課程（国家音楽家資格、DNSPM; Bac+3）の取得が可能である点です。これにより、高度な実技能力と学術的な知識を兼ね備えた音楽家の育成が行われています。
学科
CRR de Parisは、以下の主要な10学科を中心に構成されており、さらに各学科内で楽器や分野、専門性に応じた専攻やクラスが細分化されています。
器楽科 (Département Instrumental)
声楽科 (Département voix)
ジャズ科 (Jazz)
古楽科 (Musique ancienne)
管弦楽科 (Formation à l'orchestre)
室内楽科 (Musique de chambre)
フォルマシオン・ミュジカル、エクリチュール、教養科
少年少女合唱科 (Le jeune chœur de Paris)
演劇科 (Le théâtre au CRR de Paris)
舞踊科 (La danse au CRR de Paris)
施設
CRR de Parisは、提供する分野に応じて複数のキャンパスに施設を設けています。
音楽科施設: 本部キャンパスであるマドリッド通りの施設は、建築面積約5,500平方メートルを誇ります。ここには、著名な音楽家を記念して名付けられた複数のホールがあります。主要なホールとしては、マルセル・ランドスキ・ホール（400席）、オリヴィエ・アラン・オルガンホール（100席）、ガブリエル・フォーレ・ホール（80席）、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ・オルガン合唱ホール（50席）などがあります。その他、ローベール、ガビー・カサデシュ、クロード・デルヴァンクール、ピエール・サンカン、ジョルジュ・プレットル、ジャン＝ピエール・ランパル、リリ・ラスキヌ、アンドレ・ナヴァラを記念したホールも備えています。また、約50室の教室や練習室に加え、各ホールと連携した録音スタジオも完備されており、学生は充実した環境で学ぶことができます。
舞踊科施設: 舞踊科の高等教育課程は、パリ市庁舎がモンマルトル地区に設置したアベス劇場内にあります。建築面積は約2,300平方メートルで、ここにはセルジュ・リファール、マーサ・グレアム、ヴァーツラフ・ニジンスキー、ジョージ・バランシンといった舞踊史上の巨匠たちの名を冠したスタジオが4つ設けられています。その他、教室、練習室、メディアライブラリー、カフェテリア、事務室などを備え、舞踊教育に特化した環境を提供しています。この施設は、シャルル・ヴァンデンホーヴを含む著名な建築家や芸術家が設計に関わった建築物の一部であり、1996年に落成式が行われました。
* 演劇科施設および図書館施設: 演劇科およびパリ市音楽院中央図書館は、かつてレ・アル地区にあった市場跡地に建設された大規模な地下センター、フォーラムの地下に位置しています。この地下空間は、1985年にポール・シュメトフの設計によって完成しました。2007年1月からは、この施設内に演劇高等教育課程（ESAD）が開設され、舞台芸術における現代的な美学と俳優技術を習得するための3年間のカリキュラムが提供されています。学生主導の舞台プロジェクトも積極的に支援されています。
パリ市音楽院中央図書館は、1988年に開設され、建築面積約1,500平方メートルの空間に、主にクラシック音楽を中心とした約50,000冊の音楽出版物や楽譜を収蔵しています。楽譜資料が大部分を占め、室内楽、声楽、音楽理論書、オーケストラ・スコア、パート譜などが豊富に揃っています。また、現代音楽のスコアや一般的な器楽レパートリーに加え、『ニューグローヴ音楽大事典』や『MGG (Die Musik in Geschichte und Gegenwart)』といった主要な音楽辞典・事典の複数エディションも備えています。閉架資料はCRR de Parisおよびパリ市内の18校の区立音楽院の学生・教授が利用可能ですが、開架資料は一般の公共利用者にも開かれており、広く音楽愛好家に利用されています。
これらの施設は、パリ地方音楽院が多分野にわたる芸術教育を推進し、パリの文化・芸術活動に貢献するための重要な基盤となっています。
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