パルナッソス (マンテーニャ)

アンドレア・マンテーニャ作『パルナッソス』

概要

『パルナッソス』は、初期イタリア・ルネサンスを代表する画家アンドレア・マンテーニャが1497年にテンペラで描いた絵画です。キャンバスに描かれた本作は、太陽神アポロンと学芸の女神ミューズたちが住むパルナッソス山を舞台に、神話的な場面を描いています。この作品は、マントヴァ公フランチェスコ2世・ゴンザーガとその妻イザベラ・デステの結婚を祝福する寓意として解釈されており、当時の人文主義的な思想を反映した傑作として知られています。現在はパリのルーヴル美術館に所蔵されています。

歴史的背景

マンテーニャは、フォルノーヴォの戦いでのフランチェスコ2世の勝利を記念して『勝利の聖母』を制作しました。その後、イザベラ・デステは自身のストゥディオーロ（書斎）の装飾をマンテーニャ、ピエトロ・ペルジーノ、ロレンツォ・コスタに依頼しました。このプロジェクトでは、イザベラとその文学顧問たちが考案した厳格なプログラムに従い、最も尊敬されていたマンテーニャが中心的な役割を担いました。

『パルナッソス』は、このストゥディオーロのためにマンテーニャが最初に制作した絵画です。記録によると、1497年に絵画に使用する絵具が送付されており、イザベラ宛の手紙では、彼女がマントヴァに戻る頃には絵が完成すると伝えられていました。絵画の主題は、宮廷詩人パリーデ・ダ・チェレザーラによって提案されました。

マンテーニャが1506年に死去した後、作品は当時一般的になりつつあった油彩技法で部分的に塗り直されました。この補筆はおそらくロレンツォ・レオンブルーノによるもので、ミューズたち、アポロン、ウェヌスの頭部、風景などが修正されました。1627年、作品はストゥディオーロにあった他の4作品と共にカルロ1世・ゴンザーガ＝ネヴェルスからリシュリュー枢機卿に贈られ、その後ルイ14世のコレクションを経て、ルーヴル美術館に収蔵されました。

作品の解釈

絵画の正確な意味については諸説ありますが、伝統的な解釈は、15世紀のバッティスタ・フィエーラの詩に基づいています。この詩では、絵画はパルナッソス山を表し、イザベラ・デステをウェヌス、その夫フランチェスコ2世をマールスとする寓意であるとされています。本来、パルナッソス山はアポロンとミューズに捧げられた場所ですが、この絵画の中心人物はウェヌスとマールスです。

ウェヌスとマールスは、象徴的なベッドの前にあるアーチ型の岩の上に描かれています。マールスの背後には多くの実をつけた木々が、ウェヌスの背後には一つだけ実をつけた木があります。これは受精を象徴しています。ウェヌスのポーズは古代ギリシア・ローマ彫刻を参考にしています。二人は、官能的な愛と天上の愛を象徴するアンテロースを伴っています。アンテロースは弓と吹き矢を持ち、吹き矢の先は洞窟の鍛冶場にいるウェヌスの夫ウルカヌスの生殖器に向けられています。妻の不倫に怒るウルカヌスの背後にはブドウがあり、酔っ払いの不摂生を象徴しています。

アーチの下の空き地では、アポロンがリラを弾いています。9人のミューズが踊り、普遍的な調和を表現しています。右側には、翼のある馬ペガサスの蹄が地面に触れることで、ヘリコン山の滝となる泉が生まれています。ミューズは伝統的に森の中で踊るものですが、本作のタイトルである「パルナッソス（山）」という表現は必ずしも正確ではありません。

ペガサスの横には、翼のある帽子を被り、ケーリュケイオン（蛇が巻き付いた翼のある杖）を持ち、伝令の靴を履いたメルクリウスが描かれています。彼は、ウェヌスとマールスという不倫の二人を保護するためにこの場所にいます。

イザベラのストゥディオーロの他の絵画

イザベラのストゥディオーロには、以下のような絵画も飾られていました。

ロレンツォ・コスタ 『イザベラ・デステ戴冠の寓意』
ロレンツォ・コスタ『コムスの支配』
マンテーニャ『美徳の勝利』
ピエトロ・ペルジーノ『愛欲と純潔の戦い』

これらの絵画はすべてルーヴル美術館に所蔵されています。

まとめ

『パルナッソス』は、アンドレア・マンテーニャの卓越した技巧と、当時の人文主義的な思想が融合した傑作です。神話的なテーマを使いながらも、マントヴァ公夫妻の結婚を祝福するという意図が込められており、その複雑な象徴性と美しい構成は、観る者を魅了します。この作品は、ルネサンス絵画の重要な例として、現在も多くの人々に愛されています。

参考文献

中山公男監修『週刊グレート・アーティスト 44　マンテーニャ』、同朋舎出版、1990年刊行
ヴァンサン・ポマレッド監修・解説『ルーヴル美術館 収蔵絵画のすべて』、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2011年刊行、ISBN 978-4-7993-1048-9
中山公男・佐々木英也責任編集『NHKルーブル美術館IV ルネサンスの波動』、日本放送出版協会、1985年刊行　ISBN 4-14-008424-3
De Nicolò Salmazo, Alberta (1997). Mantegna. Milan: Electa

外部リンク

* ルーヴル美術館公式サイト、アンドレア・マンテーニャ『パルナッソス』 (フランス語)

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