パーシモン (競走馬)

パーシモン：英国競馬史に輝く名馬とその血統

パーシモン (Persimmon、1893年 - 1908年) は、19世紀末から20世紀初頭にかけてイギリス競馬界を席巻したサラブレッドです。その名は、父馬St. Simonと母馬Perditaの名を組み合わせたもので、英語で柿を意味します。1893年、後のイギリス国王となるエドワード7世のサンドリンガム王立牧場で生まれました。兄弟にはグッドウッドカップ優勝馬やイギリスクラシック三冠馬もおり、恵まれた血統を受け継いでいました。

パーシモンの馬体は申し分なく、優れた能力を秘めていましたが、気性はやや頑固で神経質な面がありました。それでも、兄弟や父馬と比べると大人しく、危険な逸話などは残されていません。

輝かしい競走馬としてのキャリア

1895年6月、コヴェントリーステークスでデビューすると見事勝利を収めました。2歳時にはリッチモンドステークスも制し、3戦2勝という好成績を残しました。ミドルパークステークスでは体調不良の中出走し3着に敗れましたが、このレースで出会ったセントフラスキンとは、後に生涯にわたるライバル関係を築くことになります。

翌1896年、クラシック戦線への挑戦が始まりました。2000ギニーステークスへの出走を予定していたものの、体調不良により回避。エプソムダービーに直行することとなります。エプソムダービーでは、2000ギニーを圧勝したセントフラスキンとの対戦が実現。両馬は後方からレースを進めましたが、先に抜け出したセントフラスキンに食らいつき、激しい叩き合いを演じます。最後はクビ差でパーシモンが勝利、エプソムダービーの栄冠を掴みました。皇太子の所有馬がダービーを制したことで、エプソム競馬場は熱狂の渦に包まれました。ゴール直後の興奮の様子は、当時のニュース映像として残されています。

7月のプリンセスオブウェールズステークスでは、再びセントフラスキンと対戦。今度は半馬身差でセントフラスキンに敗れましたが、セントフラスキンの故障による引退により、両馬の直接対決はこれが最後となりました。秋にはセントレジャーステークスを制し、二冠を達成。さらにジョッキークラブステークスでも前年のエプソムダービー優勝馬を相手に2馬身差で勝利するなど、その実力を証明しました。

4歳時にはアスコットゴールドカップを8馬身差で制し、親子制覇を達成。エクリプスステークスも制したのち、引退しました。数々のビッグレースを制したパーシモンの獲得賞金は、34,706ポンドに達し、父馬セントサイモン産駒の中で最高額となりました。

種牡馬としての成功

引退後はサンドリンガム王立牧場で種牡馬となりました。初年度の種付け料は300ギニーと高額に設定されましたが、その期待に見事に応えました。多くの活躍馬を輩出しましたが、中でも代表的な産駒は、初年度産駒のセプターです。セプターはイギリスクラシック四冠を制覇し、パーシモンは父であるセントサイモンを抜き、種牡馬ランキングで首位を獲得しました。他にもプリンスパラタイン、ユアマジェスティ、キーストーン、ペロラといったクラシックホースのほか、ジンファンデルなど数々の名馬を送り出し、1902、1906、1908、1912年の4回リーディングサイアーに輝き、セントサイモンに続く名種牡馬としての地位を確立しました。ライバルだったセントフラスキンもリーディングサイアーとなり、セントアマントなど活躍馬を輩出しました。

パーシモンは1908年、馬房で脚を滑らせて骨折し、安楽死となりました。死後には銅像が作られ、現在でもサンドリンガム王立牧場にその姿は残されています。

血統とその後

セントサイモン系の衰退とともに、パーシモンの子孫はイギリスでは一時途絶えましたが、そのひ孫にあたるプリンスローズがベルギー、フランスで活躍し、現在までその血統は受け継がれています。しかし、現存する父系子孫は多くはありません。パーシモンは、競走馬として、そして種牡馬として、イギリス競馬史に大きな足跡を残した名馬として、今も語り継がれています。

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