ヒサカキ

ヒサカキ（姫榊）について

ヒサカキ（学名: Eurya japonica var. japonica）は、モッコク科ヒサカキ属に分類される常緑性の小高木です。サカキによく似ていますが、より小型であることから「姫サカキ」が転じてヒサカキと呼ばれるようになったとされています。別名としてホソバヒサカキのほか、ビシャコ、ビシャ、ヘンダラ、ササキ、シャシャキといった地方名も存在します。

分布と生育環境

ヒサカキは、日本の本州（岩手県、秋田県以西）、四国、九州、沖縄に分布し、国外では朝鮮半島南部、中国、台湾にも見られます。山地や丘陵地で生育しており、特に照葉樹林ではごく普通に見られる植物です。低木層に生えることが多いですが、直射日光にも強く、伐採後も生き残ることがあります。また、庭木としても栽培されることがあります。

特徴

ヒサカキは、樹高が4〜7m程度になる常緑広葉樹の小高木です。樹皮は灰褐色から暗灰褐色で滑らかです。一年枝は緑色で、葉柄が枝に流れるように稜を形成しています。枝は横に広がり、葉が左右交互に配置されて平面状に見える傾向があります。

葉は互生し、長さ3〜8cmの狭倒卵形または楕円形で、先端が尖っています。葉の縁には丸い鋸歯があり、鋸歯がないサカキと区別できます。葉は革質で厚みがあり、表面には光沢があります。

花期は3〜4月で、雌雄異株です。葉の付け根から枝の下側に、径3〜6mm程度の白い花が多数下向きに咲きます。花は淡黄色で壺状の5弁花であり、都市ガスに似た独特の強い芳香を放ちます。雄花には10〜15個の雄しべが、雌花には1個の雌しべがあります。

果実は直径4mmの球形で、秋から冬にかけて黒紫色に熟します。
冬芽は裸芽で、枝先と葉腋につき、枝とほぼ同色です。枝先の頂芽は披針形で大きく先が曲がっており、側芽は小さいです。花芽が多数つきます。

利用

ヒサカキは、日陰に強く、土質を選ばない性質を持っています。葉に光沢があり美しいことから、庭木や生垣として利用されます。また、関東地方ではサカキの代用として神事に用いられることもあります。

文化

ヒサカキは、墓や仏壇へのお供え（仏さん柴）や玉串として、神仏に捧げられることが多いです。これは、サカキが入手しにくい関東地方以北で、サカキの代用品として使われるためです。名前の由来には、サカキでないことから「非榊」とする説や、サカキより小さいことから「姫榊」がなまったとする説があります。

ヒサカキの花言葉は「神を尊ぶ」です。

近縁種

ヒサカキ属には、他に日本に8種（変種を含む）が知られています。その多くは南方離島に分布していますが、ハマヒサカキ（学名: Eurya emarginata）は海岸林に普通な小高木で、潮風や乾燥に強いため街路樹として利用されることがあります。

脚注

注釈

出典

参考文献
鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽：四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、27頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
田中潔『知っておきたい100の木：日本の暮らしを支える樹木たち』主婦の友社〈主婦の友ベストBOOKS〉、2011年7月31日、17頁。ISBN 978-4-07-278497-6。
西田尚道監修 学習研究社編『日本の樹木』 5巻、学習研究社〈増補改訂 ベストフィールド図鑑〉、2009年8月4日、78頁。ISBN 978-4-05-403844-8。
平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、42頁。ISBN 4-522-21557-6。
北村四郎・村田源『原色日本植物図鑑・木本編II』保育社、1979年10月。ISBN 4-586-30050-7。

関連項目

コウヤマキ
シキミ

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