ヒタキ科

ヒタキ科 (Muscicapidae)

ヒタキ科は、スズメ目に分類される鳥類のグループです。この科に属する鳥は、一般的に「ヒタキ」と呼ばれてきましたが、近年、100種以上がツグミ科から移籍し、その中にはコマドリ類やシキチョウ類、ルリチョウ類なども含まれています。

英語圏では、伝統的にヒタキ科に分類されていた種を「flycatchers」、ツグミ科から移籍した種を「chats」と区別していますが、これは自然分類に基づくものではありません。

特徴

ヒタキ科の鳥は、旧大陸やオーストラリア区の中低緯度地域に広く分布しています。

形態: 嘴は横に平たく、付け根が太く、剛毛が生えています。
生息環境: 主に森林に生息しています。
食性: 枝の上にとまり、飛んでいる昆虫を見つけると飛び上がって捕食し、再び元の枝に戻る「ヒタキ型」の給餌方法を行います。これは、彼らの狩りのスタイルの特徴です。

系統と分類

ヒタキ科は、ツグミ科と非常に近い関係にあり、この2つの科でヒタキ上科の大部分を構成しています。ただし、ムラサキツグミやイワトビヒタキなど、ヒタキ科内での系統的な位置づけが明確でない種も存在し、これらの種はツグミ科に分類されるという説もあります。

亜科の再編

従来のヒタキ科は、ヒタキ亜科とノビタキ亜科に分けられ、英語ではそれぞれ「flycatchers」「chats」と総称されてきました。しかし、これらの亜科は多系統であることが判明し、Sangsterらの研究によって4つの亜科に再編されました。

旧ヒタキ亜科: 現在のヒタキ族、アオヒタキ亜科、ノビタキ亜科の一部
旧ノビタキ亜科: 現在のシキチョウ族、ヨーロッパコマドリ亜科、ノビタキ亜科の大部分

ノビタキ亜科はヒタキ科の中で最大の亜科であり、内部は複数の系統に分けられています。

歴史

ヒタキ科の分類は、長年にわたって変遷を遂げてきました。

Hartertは、1910年に拡大されたヒタキ科を提唱し、ヒタキ亜科やツグミ亜科など、約10の亜科を置きました。これらの亜科は、後に個別の科として扱われるようになりました。当時、ヒタキ科にはflycatchersのみが含まれ、chatsはツグミ科のノビタキ亜科とされていました。

Sibley & Ahlquistは、ノビタキ亜科がツグミ亜科よりもヒタキ科に近縁であると考え、ノビタキ亜科をヒタキ亜科の族としました。さらに、ツグミ亜科もヒタキ科に含め、拡大したヒタキ科を以下のように分類しました。

ツグミ亜科/ツグミ科
ヒタキ亜科/ヒタキ科
ノビタキ族/ノビタキ亜科
ヒタキ族/ヒタキ亜科

その後、これらの亜科は科として、族は亜科として扱われるようになりました。つまり、ノビタキ亜科がツグミ科からヒタキ科に移されたことになります。

しかし、これらの亜科も多系統であることが判明し、BeresfordやVoelker & Spellmanらの研究によって修正され、Sangsterらによって4つの亜科に再編されました。この再編により、ヒタキ科の範囲も変更され、Sibley & Ahlquistがノビタキ類からツグミ類に移した属はヒタキ科に戻され、伝統的にツグミ亜科に含まれていたルリチョウ属やイソヒヨドリ属もノビタキ亜科に移されました。

属と種

国際鳥類学会議 (IOC) によると、ヒタキ科には46属317種が含まれています。

主な属

ヒタキ亜科: ムジヒタキ属、モリヒタキ属、クロヒタキ属、サメビタキ属、ハイイロヒタキ属
シキチョウ族: クロヤブコマ属、シキチョウ属
アオヒタキ亜科: アイイロヒタキ属、ヒメアオヒタキ属、アオヒタキ属
ヨーロッパコマドリ亜科: マミジロムジヒタキ属、ヨーロッパコマドリ属、ツグミヒタキ属、ハヤナキヒタキ属
ノビタキ亜科: コマドリ属、サヨナキドリ属、ノゴマ属、ルリビタキ属、ルリチョウ属、エンビシキチョウ属、キビタキ属、ジョウビタキ属、イソヒヨドリ属、ノビタキ属、サバクヒタキ属

ヒタキ科の分類は複雑であり、現在も研究が進められています。今後の研究によって、さらに分類が変更される可能性があります。

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