ヒトツバタゴ

ヒトツバタゴ（一つ葉タゴ）とは

ヒトツバタゴ（学名：Chionanthus retusus）は、モクセイ科ヒトツバタゴ属に分類される落葉広葉樹の高木です。同じモクセイ科のトネリコに似ていますが、トネリコが複葉であるのに対し、ヒトツバタゴは小葉を持たない単葉であることが特徴です。この特徴から「一つ葉タゴ」という和名が付けられました。

別名として「ナンジャモンジャ」と呼ばれることもありますが、この名前はクスノキやニレなど、他の樹種にも使われるため注意が必要です。中国では流蘇樹（りゅうそじゅ）と呼ばれています。

分布と生育地

ヒトツバタゴは、中国、台湾、朝鮮半島、そして日本に分布しています。日本では、対馬、長野県、岐阜県東濃地方の木曽川周辺、愛知県に隔離分布しており、非常に珍しい分布形態を示しています。人為的に植栽されたものが、公園などで見られることもあります。

形態と生態

ヒトツバタゴは、成長すると樹高が20メートルを超える高木になります。樹皮は灰褐色で縦に切れ込みが入り、若い木では橙色を帯びて薄く剥がれます。一年枝は細く、細かい毛が生えています。

葉は長楕円形で、長さは4〜10センチ[[メートル]]程度です。長い葉柄を持ち、枝に対生します。花期は5月頃で、新枝の先に円錐状の集散花序を形成します。花冠は深く4つに裂けています。

雌雄異株で、雄花のみをつける株と両性花をつける株があります。秋には、直径1センチ[[メートル]]程度の楕円形の果実が実り、黒く熟します。

冬芽は円錐形で、芽鱗には短毛が多く見られます。頂芽は側芽よりも大きく、側芽は枝に対生します。頂芽、側芽ともに副芽がつくことが多いです。葉痕は半円形で、維管束痕が弧状に多数並びます。

日本における希少種としての位置づけ

日本では、ヒトツバタゴは希少種のひとつであり、環境省のレッドリストで絶滅危惧II類(VU)に指定されています。天然での分布域が狭く、長野県、愛知県の木曽川流域、岐阜県東濃地方、長崎県対馬市に自生しています。

各県のレッドデータブックにも掲載されており、長野県と愛知県では絶滅危惧I類、岐阜県と長崎県では絶滅危惧II類に指定されています。

愛知県犬山市池野西洞、岐阜県瑞浪市釜戸町、同県恵那市笠置町、同県中津川市蛭川の自生地は、国の天然記念物「ヒトツバタゴ自生地」に指定されています。その他、瑞浪市大湫町、恵那市大井町、同市中野方町、中津川市苗木、同市落合新茶屋の自生地が岐阜県指定天然記念物、瑞浪市稲津町萩原の自生地が同市指定天然記念物、土岐市泉町白山神社境内のハナノキ・ヒトツバタゴが国の天然記念物となっています。

また、長崎県対馬市上対馬町鰐浦地区には、約3000本のヒトツバタゴが自生しており、「鰐浦ヒトツバタゴ自生地」として国の天然記念物に指定されています。

保護上の位置づけと利用

環境省レッドリストでは、絶滅危惧II類(VU)に指定されています。

公園木、鉢植え、花壇などで利用され、その美しい花姿が人々に親しまれています。

近縁種

ヒトツバタゴ属の植物は、世界で約80種が知られており、多くは熱帯、亜[[熱帯]]地域に分布しています。その中でも、東アジアのヒトツバタゴと、北アメリカのアメリカヒトツバタゴの2種が主に温帯地域に分布しています。

熱帯地域の種は常緑性ですが、温帯地域の2種は落[[葉性]]です。常緑の種は、Linociera属に分類されることもあります。

ヒトツバタゴ属（Chionanthos）の名前は、ギリシャ語の「chion（雪）」と「anthos（花）」に由来し、雪のように白い花を咲かせる特徴を表しています。

アメリカヒトツバタゴ

アメリカヒトツバタゴ（学名：Chionanthus virginicus）は、北米東南部に自生する小高木で、樹高は10メートル程度です。ヒトツバタゴに比べて葉が大きく、花序は古い枝の脇から出ます。

自治体の木

ヒトツバタゴは、以下の自治体で市の木に指定されています。
岐阜県土岐市：県道66号線沿いのヒトツバタゴ並木は「なんじゃもんじゃ街道」として親しまれています。
長崎県対馬市：姉妹都市である岐阜県中津川市もヒトツバタゴの自生地です。
大韓民国慶尚南道梁山市
大韓民国大邱広域市南区



参考文献
鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽：四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、52頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
鈴木庸夫・菱山忠三郎・西田尚道・畔上能力・鳥居恒夫・新井二郎『春の花』山と溪谷社〈山渓ポケット図鑑 1〉、1995年3月。ISBN 978-4635070119。

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