ヒメクグ

ヒメクグ（Kyllinga brevifolia var. leiolepis）

ヒメクグは、カヤツリグサ科ヒメクグ属（またはカヤツリグサ属）に分類される多年草です。湿った場所を好み、高さは30cm程度と小型です。特徴的なのは、花茎の先端に一つだけ付く、丸いくす玉のような穂です。

特徴

地下茎と葉

地下茎は地表近くを横に這い、茶色の鞘に覆われています。節ごとに花茎をまばらに出しますが、匍匐茎の伸びが悪いと花茎が集まって生えることもあります。花茎を出す前には、短い茎から根出葉を広げます。根出葉は平らに広がり、黄緑色で表面には強い光沢があります。

花茎と花序

花茎は断面が三角形で、緑色でつやがあります。先端には花序がつきます。花序のすぐ下には、長さの異なる3枚程度の苞があり、葉状で水平に広がります。花序は多数の小穂が球状に集まったもので、通常は1つ（まれに2～3個）です。

小穂

小穂は左右から扁平で、カヤツリグサ属の一般的な形と同じく、2つ折りの鱗片が2列に並びます。しかし、花数は非常に少なく、鱗片も数枚程度、花も2つ程度しかありません。一つの小穂から実る果実は1つだけです。小穂の先端が尖っているため、花序全体が短いイガのある栗のように見えるのが特徴的です。果実が熟すと、小穂は基部から外れて落ちます。

分布

日本全国に分布しており、湿った日当たりの良い場所によく見られます。特に水田のあぜ道などではよく見られる植物です。国外では、朝鮮半島、中国、ウスリー地方に分布しています。

近縁種

アイダクグ（Kyllinga brevifolia var. brevifolia）

ヒメクグの基本変種であり、やや大柄で茎も太い印象です。決定的な違いは小穂にあります。ヒメクグでは2つ折りの鱗片の背側の稜（竜骨）が滑らかなのに対し、アイダクグではここに少数の鋸歯があります。アイダクグは本州以南、中国からインドネシア、インドにかけて分布します。両種を亜種とみなす説もあります。

オオヒメクグ（Kyllinga killingia）

沖縄県に普通に見られる種で、ヒメクグとよく似ています。小穂の竜骨に翼（平らな出っ張り）があるのが特徴です。外見的には、ヒメクグよりもやや背が高く、穂が緑色を帯びるヒメクグやアイダクグに対し、オオヒメクグは穂が白っぽいことで区別できます。オオヒメクグは中国からミクロネシア、インド、アフリカまで広く分布します。

似た植物

ヒンジガヤツリ（Lipocarpha microcephala）

ヒンジガヤツリは、水田によく出現し、花茎の先端に丸い穂をつける姿がヒメクグと似ています。しかし、小穂の構造が大きく異なるため、別の属に分類されています。ヒンジガヤツリには匍匐茎がなく、球状の花序が通常3つ程度つくことが、ヒメクグとの外見上の大きな違いです。和名の品字蚊帳釣は、3つ並んだ花序が漢字の「品」の字に似ていることに由来します。

参考文献

佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他『日本の野生植物　草本II 離弁花類』,(1982年、平凡社)
北村四郎・村田源・小山鐵夫『原色日本植物図鑑 草本編(III)・単子葉類（改定49刷）』,(1987年、保育社)

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