ビシュバリク

ビシュバリク：天山山脈の古都

ビシュバリクは、かつて天山山脈東部の北麓に位置した都市で、9世紀から13世紀にかけて天山ウイグル王国の首都として繁栄しました。この都市は、漢語の史料では「別失八里」など様々な表記で記されていますが、トルコ語で「5つの城」を意味する「ビシュバリク」という名前で知られています。その歴史は古く、8世紀のオルホン碑文には既にその名が刻まれています。

歴史

ビシュバリクの前身は、1世紀に栄えた車師後国の首都である金満城と考えられています。7世紀に入ると、この地域は唐の支配下に入り、646年には天山山脈北麓に庭州が設置されました。702年には庭州の府治が金満県からビシュバリクに移され、北庭大都護府が置かれたため、中国からは長い間「北庭」と呼ばれていました。この時期には、中国からの移民が流入し、仏寺が建てられる一方で、トルコ系遊牧民も放牧を行っていました。この地は、唐、西突厥、吐蕃の係争地でしたが、840年頃にキルギス族に追われた漢北ウイグル族によって天山ウイグル王国が建国されると、その首都となりました。

1211年、天山ウイグル王国の国王バルチュク・アルト・テギンはチンギス・カンに臣従しましたが、その後も一定の自治を保ちました。しかし、カイドゥの乱の後、1270年頃にはウイグル王コチガル・テギンがビシュバリクを放棄し、高昌に遷都しました。それでも、この都市は東西交易の要衝としての重要性を失わず、1281年にはビシュバリクとカフカーズ山脈の間に30の駅伝が設置されました。一時期、元帥府が置かれましたが、カイドゥ王国が滅亡するとチャガタイ・ハン国の支配下に入り、チャガタイ・ハン国が東西に分裂すると、14世紀末には東トルキスタンを領有するモグーリスタン・ハン国の中心地となりました。

1391年4月、モグーリスタンのヒズル・ホージャ・ハンの使節が南京に到着した際には、モグーリスタン・ハン国はビシュバリクを首都としていました。15世紀半ばまで明との間で使節の往来がありましたが、ワイス・ハンの即位後にモグーリスタン・ハン国の本拠地は西方のイリバリクに移されました。清が天山南北路を制圧すると、行政の中心はウルムチに移され、ビシュバリクは天山の中心都市としての役割を終えました。1902年には、かつて庭州と呼ばれた行政区画に孚遠県が設置され、1952年にジムサル県に改名されて現在に至ります。

文化

天山ウイグル王国時代のビシュバリクは、様々な人種と文化が混在する、まさに文化の坩堝でした。丘処丘の記録によれば、ウイグル人の他に漢人、イラン系の商人なども居住しており、仏教、道教、儒教が信仰されていました。唐代に建てられた仏教寺院の他にも、ウイグル人によって建立されたマニ教寺院も存在しました。食料については、泉水を利用した稲と麦の栽培や、周囲の草原で飼育された家畜が供給されていました。9世紀末にビシュバリクを訪れた宋の使節、王延徳は馬肉と羊肉による歓待を受け、国賓だけでなく貧しい人々も肉を口にすることができたと記録されています。

『明史』には、モグーリスタン・ハン国治下のビシュバリクでは遊牧生活が送られていたことが記されており、住民の衣食も遊牧民であるオイラト族と同じであったと考えられています。


ビシュバリクは、シルクロードの要衝として、様々な文化が交錯した歴史を持つ都市でした。その遺構は、今日の新疆ウイグル自治区ジムサル県北部の北庭故城としてその姿をとどめています。

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