ビゼーアン

ビゼーアン（Visean）

ビゼーアンは、石炭紀の中期に当たる地質時代区分で、国際層序委員会によって定められています。この時代は約3億4670万年前から3億3090万年前にかけて存在し、特に前の期のトルネーシアンと次の期のサープコビアンとの間に位置します。ビゼーアンという名称は、1832年にベルギーの古生物学者アンドレ・デュモンによって命名され、同国のリエージュ州ヴィゼに由来しています。ビゼーアン階の模式地は、ベルギーのナミュール州ディナンにありますが、この地域の層序との整合性が問題視され、国際標準模式層断面（GSSP）は中国南部の広西チワン族自治区にあるLuzhai累層に置かれることが提案されています。

命名と定義

ビゼーアン階は、もともとは西ヨーロッパ地域の地質時代の一部として認識されていました。前のTournaisian階と次のNamurian階といった区分と相互に関連づけられます。北アメリカにおいては、上部のOdsagean階およびMeramecian階、さらに下部のChesterian階と対応しています。こちらの地域区分では、ビゼーアンは特に生物多様性が復活した重要な時期とされています。

この時代における生物の基準となるのは、フズリナの種であるEoparastaffella simplexの初出現であり、ビゼーアンの最上部にはコノドントの種Lochriea ziegleriが現れます。イギリスの層序では、ビゼーアンはChadian、Arundian、Holkerian、Asbian、Brigantianという5つの亜階に分かれています。

生物と環境

ビゼーアンは、後期デボン紀の大量絶滅から生物が回復した時期として知られています。石炭紀初頭の約1500万年間には陸上動物の化石はほとんど発見されていなかったため、この期間は「ローマーの空白」として知られることになりました。しかし、ビゼーアンの前期には再び多様な生物が登場します。特に、3億3600万年前というビゼーアン中期には、大規模なサンゴ礁が形成され、当時の海洋生態系は復活しました。

この変化は、火山活動がトルネーシアンからビゼーアンにかけて特に盛んだったアジア地域とも関連があります。中国の新疆ウイグル自治区に位置するTrukestan累層はその証拠とされ、デボン紀からビゼーアン期にわたる火山岩が観察されています。さらに、日本における秋吉帯でも、トルネーシアンからビゼーアンにかけて生物礁が形成される重要な時期がありました。

古生物地理と日本の研究

ビゼーアン階における貴重な化石群は日本でも発見されています。特に、秋吉石灰岩にはビゼーアンから中期ペルム紀後期にかけての生物が含まれており、海綿動物、サンゴ、腕足動物、頭足類、有孔虫などが含まれています。兵庫県や岩手県での化石発見もあり、その多様性は地域の古環境を学ぶ上で重要です。

例えば、加労山層からは多くの腕足動物とサンゴの化石が見つかり、これがビゼーアンの特徴的な生物群を示す証拠となっています。また、日立市を模式地とする大雄院層でもビゼーアン階の化石が報告されていますが、その詳細な堆積年代は今後の研究が期待されます。

ビゼーアンは、古生物学や地質学において特に生物多様性や地質活動の観察において重要な役割を持つ時代です。この時期の研究を通じて、地球の歴史や生命の進化について新たな理解が得られています。

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