ビルマ民主同盟

ビルマ民主同盟 (DAB)

ビルマ民主同盟（Democratic Alliance of Burma：DAB）は、1988年にミャンマー（ビルマ）の民族民主戦線（NDF）加盟勢力と様々な民主派武装組織など、合計22団体によって設立された同盟体です。

結成の背景と経緯

1988年8月8日に始まった全土的な民主化運動「8888民主化運動」の波及を鎮めるため、同年9月18日、ミャンマー国軍はクーデターを実行し、ソーマウン議長率いる国家秩序回復評議会（SLORC）を発足させました。これに反発した民主化運動に参加していた多くの若者や活動家は、身の安全を求めてタイ国境地帯やカチン丘陵地帯、インド、バングラデシュなどへ逃避しました。
亡命者たちが集まる中で、反体制的な学生を中心とする全ビルマ学生民主戦線（ABSDF）が、1988年11月5日にカレン民族同盟（KNU）の拠点であるコウムラで結成されました。さらに、民主派勢力と少数民族武装勢力との広範な連携を構築する目的で、同年11月14日から18日にかけて、同じくKNUの支配地域にあるクレルダイに22の組織が一堂に会し、ビルマ民主同盟（DAB）の結成に至りました。NDFの一員であったカレンニー民族進歩党（KNPP）は、ビルマ族に対する不信感からDABへの参加を見送りました。
DABの指導部では、議長にKNUの最高指導者ボー・ミャ、副議長にはカチン独立機構（KIO）のブランセンと新モン州党（NMSP）のナイ・シュエチンが選ばれました。しかし、中央執行委員会における最上級のビルマ族代表に、人民愛国党（PPP）のトウィンや、かつて議会制民主主義党（PDP）に所属しビルマ民主主義回復委員会（CRDB）にいたティンマウンウィンが選出されたことに対し、民主派の若い世代からは強い不満の声が上がったとされています。

活動と直面した困難

DABが結成された後、国軍は泰緬国境地帯に集結した反体制武装勢力を深刻な脅威とみなすようになり、1989年頃からKNUの支配地域に対する大規模な攻撃を開始しました。ワンカーやマポケ、パルーといったKNUの主要拠点が次々と国軍の手に落ち、戦闘開始からわずか1年半で約4万人ものカレン族住民がタイへの避難を余儀なくされました。
さらに、タイ政府が従来の方針を転換したことが、DABを窮地に追い込みました。タイ政府はそれまで、泰緬国境のミャンマー側武装勢力を国境警備隊の代わりとして暗黙のうちに利用してきましたが、この時期にSLORCとの関係を強化し、国境地帯の森林伐採権やアンダマン海の漁業権を獲得しました。これにより、国軍はタイ領内を経由してKNUを側面や背面から攻撃することが可能となり、KNUおよびDABの軍事的な劣勢が決定的となりました。

こうした厳しい状況下でも、ボー・ミャをはじめとするDABの幹部たちは、1990年に予定されていた総選挙に大きな期待を寄せていました。総選挙を前に、ボー・ミャはSLORC議長のソーマウン宛に親書を送付し、泰緬国境に逃れてきたビルマ族の若者たちが歓迎されている状況を伝え、KNUが「人種戦争」を戦っているという見方を否定しました。そして、「40年に及ぶ内戦の経験が疑いなく証明しているのは、本質的に政治問題である内戦を軍事力だけで解決することは不可能である」という主張を述べました。
一方、DAB内部では、総選挙でスー・チー率いる国民民主連盟（NLD）などの政党が「不正選挙」によって敗れる可能性が高いと予測し、これらの民主派政党と合流して暫定政府を樹立する準備も進めていました。しかし、実際の総選挙ではNLDが圧倒的な勝利を収めました。この結果を受けて、DABはNLDが多数を占める議会を「制憲議会」として認めると表明し、支配下にあったマナプロウに「連邦大学」を設立して、独自の「連邦憲法」案を策定する意向を各政党に伝達しました。
しかし、SLORCは選挙結果を反故にし、NLDの当選議員を逮捕するなど弾圧を強化しました。弾圧から逃れたNLD議員たちもまた、KNUやDABの支配下にある泰緬国境地帯へ身を寄せました。1990年12月18日には、これらのNLD議員を中心にビルマ連邦国民政府（NCGUB）が組織され、スー・チーの従兄弟であるセインウィンが首相に就任しました。DABはNCGUBへの支持を表明し、共にビルマ民主戦線（DFB）を設立して連携を深めました。
軍事的な抵抗も続けられました。1991年10月、KNLAとABSDFの合同部隊約300人が、ヤンゴンからわずか30kmの地点にあるトゥワンテ郡区に上陸し、約18年ぶりにこの地域で反乱軍が出現したことは国軍に大きな衝撃を与えましたが、わずか3週間で部隊は壊滅しました。
1992年3月、国軍は国軍記念日の3月27日までにマナプロウを攻略することを目標に、KNUおよびDABの支配地域に対して再び大規模な攻撃を仕掛けました。国軍は多数の戦略拠点を占領し、マナプロウ自体の攻略には失敗したものの、これを包囲下に置きました。4月28日に国軍は一方的に停戦を宣言して撤退しましたが、この戦闘でKNU・DAB連合軍は600人以上（KNU公式発表では180人）の戦死者を出したとも言われています。
このような軍事的苦境と政治的連携の進展の中、1992年7月31日には、NDF、DAB、NCGUB、そしてNLDの「解放区」代表が集まり、「マナプロウ協定」を締結しました。この協定に基づき、ボー・ミャ、ブランセン、ナイ・シュエチン、セインウィンを主要な指導者とする、将来的なビルマ連邦に向けた統一的なプラットホームであるビルマ連邦国民評議会（National Council Union of Burma: NCUB）が結成されました。

崩壊

NCUBの結成によって反体制派全体の統一的な枠組みが作られましたが、これがDABの結束を保つことには繋がりませんでした。1993年4月、DABの主要な軍事組織の一つであるカチン独立機構（KIO）の軍事部門（KIA）が、独自の判断で政府との停戦交渉に入ったことがDAB内部に大きな波紋を投げかけました。KNUはこれを強く非難し、KIAをNDFおよびDABから除名する措置を取りました。しかし、この後も新モン州党（NMSP）やカレンニー民族進歩党（KNPP）などが次々と政府との停戦交渉に加わっていきました。
そして1993年12月末、DABの中心的存在であったKNU自身も、政府との停戦交渉を開始する意向を公式に表明しました。翌1994年1月には、KNUは共同戦線を張っていたABSDFに対して武装解除を命じ、一部の幹部を拘束するなど、民主化運動陣営との協力関係からの離脱を鮮明にしました。このKNUの動きにより、DABはその活動の基盤を失い、事実上の崩壊に至りました。

主な構成組織

アラカン解放党 (ALP)
チン民族戦線 (CNF)
カチン独立機構（KIO）
カレン民族同盟 (KNU)
カヤン新領土党（KNLP）
ラフ統一党（LNUP）
新モン州党（NMSP）
パラウン州解放党（PSLP）
パオ民族機構 (PNO)
シャン州軍 (北) （SSA-N）
ワ民族機構（WNO)
[全ビルマ学生民主戦線]
全ビルマ・ムスリム連合（ABMU）
全ビルマ青年僧連盟（ABYMU）
ビルマ民主主義回復委員会（CRDB）
ドイツ・ビルマ協会（GBA）
ゼネスト委員会ラングーン（GSCR）
ムスリム解放機構（MLO）
海外ビルマ解放戦線（OBLF）
海外カレン機構（OKO）
人民解放戦線（PLF）
人民愛国党（PPP）

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