ビーバー科

ビーバー科（Castoridae）

ビーバー科は、現生のビーバーと、すでに絶滅した様々な化石種を含むグループです。かつては齧歯類の中で非常に多様なグループでしたが、現在ではビーバー属のみが生き残っています。

特徴

ビーバー科の動物は、比較的中型の哺乳類で、他の齧歯類と比べると体が大きいのが特徴です。彼らは半水生の生活に適応しており、滑らかな体と水かきのある後足を持ち、水中での動きに優れています。また、扁平で鱗状の尾は、水中での方向転換に役立つ重要な役割を果たします。ビーバーは通常、小さな家族単位で生活し、草や泥でできた巣とダムの周辺に縄張りを持って暮らします。

食性は草食性で、夏には葉や草を主に食べ、冬にはヤナギなどの木本を摂取します。彼らは非常に強力な切歯を持っており、これは木を切り倒したり、食物をかじったりするのに役立ちます。歯の構造は、他の一般的な齧歯類と同様の基本構造を持っています。

進化

ビーバー科の最も古い化石記録は、始新世後期から漸新世にかけての北アメリカとアジアに生息していたAgnotocastor属に遡ります。その他、Steneofiber属も初期のビーバー科の属として知られており、漸新世から中新世のヨーロッパに生息していました。Steneofiber属は、現生のビーバーに近いCastorinae亜科の初期のメンバーと考えられています。彼らの歯はまだ木を齧るのに完全には適応しておらず、ビーバー類が木を食べる食性を獲得したのは比較的後になってからであると考えられています。しかし、半水生生活への適応はこの頃からすでに始まっていました。

その後、これらの初期の種は、Palaeocastor属（中新世、ネブラスカ）のような形に進化しました。Palaeocastor属はマスクラットほどの大きさで、深さ2.5mにもなるコルク抜きのようならせん状の巣穴を掘って生活していました。

更新世には、ヨーロッパのTrogontherium属や北アメリカのCastoroides属のような巨大なビーバーも出現しました。Castoroides属はアメリカクロクマと同程度の大きさでしたが、脳のサイズは現代のビーバーとほとんど変わりませんでした。これらの巨大ビーバーも巧みな遊泳者であり、沼地などの水辺に生息していたと考えられています。

分類

McKennaとBellは、ビーバー科をCastoroidinae亜科とCastorinae亜科の2つに分けました。しかし、より最近の研究では、基盤的な分類群としてAgnotocastorinae亜科とPalaeocastorinae亜科の2つの亜科が追加で認められています。この分類に従い、ビーバー科の中でCastoroidinae亜科とCastorinae亜科は姉妹群であり、他の2つの亜科よりも近い共通祖先を持つと考えられています。これらの亜科には、ダムを建設する能力を持つ半水生種が含まれています。Palaeocastorinae亜科には、穴を掘る習性を持つMigmacastor属などが含まれています。

以下にKorthとRybczynskiによるビーバー科の分類を示します（両者の見解が異なる場合は、Rybczynskiの分類を優先しています）。

ビーバー科 Castoridae
†Migmacastor属
†Agnotocastorinae亜科 (側系統)
†Agnotocastorini族
†Agnotocastor属
†Neatocastor属
†Anchitheriomyini族
†Anchitheriomys属
†Propalaeocastor属
†Oligotheriomys属
†Palaeocastorinae亜科
†Palaeocastor属
†Capacikala属
†Pseudopalaeocastor属
†Euhapsini族
†Euhapsis属
†Fossorcastor属
†Castoroidinae亜科
†Priusaulax属(Castoroidinae亜科内の位置は疑わしい)
†Nothodipoidini族
†Eucastor属
†Microdipoides属
†Nothodipoides属
†Castoroidini族 (側系統)
†Monosaulax属
†Prodipoides属
†Dipoides属
†Castoroides属
†Procastoroides属
†Trogontheriini族
†Trogontherium属
†Boreofiber属
†Euroxenomys属
†Youngofiber属
†Asiacastor属
Castorinae亜科
†Chalicomys属 (Palaeomys属とも)
†Steneofiber属
†Zamolxifiber属
†Romanofiber属
†Schreuderia属
†Sinocastor属
†Hystricops属
ビーバー属 Castor – 現生のビーバー
アメリカビーバー Castor canadensis
ヨーロッパビーバー Castor fiber
* †Castor californicus

分布

現在、ビーバーの分布はユーラシア大陸と北米大陸の北部に限定されていますが、中新世には日本列島にも生息していました。岐阜県可児市（瑞浪層群）や長崎県北松浦郡と松浦市（佐世保層群・野島層群）からも、ビーバー科の大型種や小型種の化石が発見されています。

もう一度検索