ピアノ三重奏曲第2番 (シューベルト)

ピアノ三重奏曲第2番変ホ長調 作品100、D929

フランツ・シューベルトによって作曲されたこのピアノ三重奏曲は、豊かな歌心が魅力的であり、調性や曲調が大きく変化する点が特長です。この作品は、彼の若い頃の作品とは異なり、晩年特有の深い感情や寂寥感が漂っています。全4楽章からなり、演奏時間は約45分ですが、一部のカットを除けば約50分になります。

概要

この作品は、1827年11月に作曲されたとされています。この時期、シューベルトは身体的な健康が優れなかったものの、創作には驚異的なエネルギーを注いでいました。彼はこの曲の他にも、歌曲集「冬の旅」や後期のピアノソナタをも手掛けており、自己の苦悩を乗り越えつつ、晩年の傑作群を残していったのです。

初演

シューベルトの生前、この曲は既に知られており、ウィーン楽友協会での初演が行われました。初演は1827年12月26日、続いて1828年3月26日に2度目の演奏が行われました。どちらの公演も評判が良く、シューベルトは特に評判になったことを友人に誇らしげに書き送っています。その構成の中で、第2回の演奏会では320フローリンを稼ぐ成功を収めました。

出版

この作品は、1828年の秋にライプツィヒのプロープスト社から「作品100」として出版されました。シューベルトの生存時に国外から出版された唯一の作品であり、ただし、シューベルト自身の手によって終楽章に大規模なカットが施されていることに注意が必要です。もともとの原典版は、ベーレンライター社から出版されているので、興味がある方はそちらを参照することができます。

構成

このピアノ三重奏曲は、以下の4つの楽章から構成されています。

1. 第1楽章：アレグロ 変ホ長調、ソナタ形式（3/4拍子、634小節）
力強く厚みのあるユニゾン主題が導入部にあり、対比するように、ささやくようなピアノの第2主題が続きます。

2. 第2楽章：アンダンテ・コン・モート ハ短調、三部形式（2/4拍子、212小節）
ピアノのリズムにのるチェロのロマンティックな主題が美しく響き、続いてヴァイオリンも加わっていく優雅な楽章です。この主題は、シューベルトが耳にしたスウェーデンの民謡「太陽は沈み」を基にしています。

3. 第3楽章：スケルツァンド アレグロ・モデラート、変ホ長調、三部形式（3/4拍子、175小節）
この楽章では、カノンの手法を用いたスケルツォが特徴的で、トリオ部分は変イ長調に移ります。

4. 第4楽章：アレグロ・モデラート 変ホ長調、ロンド・ソナタ形式（6/8拍子、748小節）
この楽章は「天国的な長さ」とも評されるもので、後半では前の楽章の主題が再現されます。原典版では、出版時にカットされた部分を含め、846小節にわたる大作となっています。

参考

第2楽章の主題は映画『バリー・リンドン』のラブシーンで使用され、深い感情を引き起こす名曲とされています。このほか、映画『メカニック』では主人公がLPレコードを聴く際にも登場し、その中で特別な感覚を与えています。

脚注

シューベルトのこの作品は、彼の後期の特徴を色濃く残したものであり、演奏者や聴衆にとっても意義深いものです。彼の豊かで多面性に富む表現は、今でも多くの人々に影響を与え続けています。

外部リンク

• - シューベルト『ピアノ三重奏曲第2番』作品100、D929の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト

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