ピアノ協奏曲第1番 (ヴィラ＝ロボス)

ピアノ協奏曲第1番 W453

ブラジルの作曲家、エイトル・ヴィラ＝ロボス（Heitor Villa-Lobos, 1887-1959）が1945年にリオデジャネイロで完成させた「ピアノ協奏曲第1番 W453」は、彼の数ある作品の中でも特に重要な位置を占める一つです。この作品は、カナダ出身のピアニスト、エレン・バロン（Ellen Ballon, 1898-1969）からの委嘱を受けて書かれました。

概要

作品の初演は、作曲の翌年、1946年10月11日にブラジルのリオデジャネイロ市立劇場で行われました。独奏ピアノは作品を委嘱したエレン・バロン自身が担当し、オーケストラは市立劇場交響楽団が務め、指揮は作曲者であるヴィラ＝ロボス自身がタクトを振りました。この記念すべき演奏会は、当時開催されていた「ヴィラ＝ロボス音楽祭」という特別な機会の中で実現したものです。

初演後、エレン・バロンはこの協奏曲を各地に紹介する役割を担いました。1946年にはアメリカのダラスで、名指揮者アンタル・ドラティ（Antal Doráti, 1906-1988）の指揮によりアメリカ初演を行っています。さらに1947年10月28日には、カナダのモントリオールのプラトー講堂にて、デジレ・デフォー（Désiré Defauw, 1885-1960）の指揮でカナダ初演を果たしました。1956年にはロンドンでも、トーマス・ビーチャム（Thomas Beecham, 1879-1961）という巨匠の指揮のもとで演奏しています。また、バロンは1949年にはエルネスト・アンセルメ（Ernest Ansermet, 1883-1969）指揮によるこの協奏曲の録音も残しており、1951年1月30日および31日にはアンセルメとモントリオール交響楽団との共演でカナダでの再演も行われるなど、彼女にとって非常に重要なレパートリーでした。

ヴィラ＝ロボスは生涯に5曲のピアノ協奏曲を作曲していますが、その中でこの第1番はしばしば最も優れた作品として評価されることが一般的です。

楽器編成

この協奏曲は、独奏ピアノに加えて以下のような大規模なオーケストラのために書かれています。

ピッコロ
フルート 2
オーボエ 2
コーラングレ
クラリネット 2
バスクラリネット
ファゴット 2
コントラファゴット
ホルン 4
トランペット 3
トロンボーン 3
バストロンボーン
チューバ
ティンパニ
打楽器（タムタム、トライアングル、バスドラムなど）
ハープ
* 弦五部（ヴァイオリン第1部、ヴァイオリン第2部、ヴィオラ、チェロ、コントラバス）

このような多彩かつ厚みのある編成により、豊かな響きと多様な色彩が実現されています。

楽曲構成

全体の演奏時間は約33分30秒で、4つの楽章で構成されています。ヴィラ＝ロボスは彼の5つのピアノ協奏曲すべてを4楽章構成としていますが、伝統的なソナタ形式のように旋律素材を発展させて楽章を構築するという手法には必ずしも厳密に従っていません。むしろ、彼は楽章の区切りや構造を明確にするためにリズム素材を巧みに活用しているのが特徴です。

第1楽章 Allegro (12/8拍子)

この楽章は、まず提示されたある主題が展開された後、別の主題が現れてさらに発展するという、まるで異なる要素を組み合わせたモザイクのような手法で書かれています。このような主題の扱いや構成の手法は、ヴィラ＝ロボスの代表的な器楽作品群である「ショーロス」シリーズにも見られる、彼独特のアプローチです。

第2楽章 Allegro (poco scherzando) (12/8拍子)

この楽章は第1楽章とアタッカ（切れ目なく続けて演奏する指示）で繋がっており、続けて演奏されます。軽快でスケルツォ風の性格を持っています。

第3楽章 Andante – Andantino (quasi andante) – Cadenza (3/4拍子)

緩やかなテンポで始まり、テンポや表情が変化しながら進みます。独奏ピアニストの技巧と表現力が光るカデンツァ（独奏の技巧を見せる無伴奏部分）が含まれています。

第4楽章 Allegro non troppo (2/4拍子)

速すぎないアレグロのテンポで書かれた終楽章です。ヴィラ＝ロボスがリズムを構造の基盤として重視する作曲スタイルが反映された楽章と言えます。

全体を通して、ヴィラ＝ロボスらしい躍動的なリズム、豊かなメロディ、そしてブラジル的な要素が感じられる響きが特徴的な作品であり、彼のピアノ協奏曲の中でも特に演奏機会の多い作品の一つとなっています。

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