ピウス9世 (ローマ教皇)

ピウス9世の生涯と教皇としての影響

ピウス9世（Pius IX）、本名ジョヴァンニ・マリア・マスタイ＝フェッレッティは、1792年5月13日に教皇領セニガッリアで生まれ、1878年2月7日に教皇宮殿で逝去しました。彼は1846年から1878年までの31年7か月という、ローマ教皇として最も長い在位期間を記録した教皇で、カトリック教会の重要な指導者として知られています。

教皇への道

ジョヴァンニ・フェレッティは貴族の家に生まれ、神学校で教育を受ける中で宗教的な使命を感じ、1819年に叙階されました。1823年には南アメリカに派遣され宣教団の監査官として活動しましたが、政治的混乱により任務は失敗し、1851年にはイタリアのスポレート大司教に任命されることとなりました。その後、1840年には枢機卿に選ばれ、ついにグレゴリウス16世の後を受けて教皇に選出されました。

選出された彼は、54歳であり、1700年以来最も若い教皇として広く歓迎されました。初期の在位中は、保守的だった先代と異なり自由主義的な姿勢を見せ、多くの政策改革を行いました。

自由主義的アプローチ

彼の初期の政策は、治安改善のための市民軍の結成や、鉄道敷設の許可、出版検閲の緩和など、近代化を推進するものでした。その結果、ピウス9世は「覚醒教皇」として国民からの支持を受けることとなりました。特に、イタリア統一に向けた動きを背景に彼に対する期待感が高まりました。

反動と教皇の変化

しかし、1848年のフランス2月革命などの影響を受け、教皇の自由主義姿勢は次第に后退します。1848年に新憲法の発布を行うものの、その内容は教会側の優遇を認めるものであり、多くの失望を招きました。また、同年の戦争介入への姿勢を取る中で、彼はリソルジメント運動との距離を置くようになりました。この結果、1864年の「誤謬表」によって近代思想を否定し、教皇庁と近代社会との断絶が進みました。

サルデーニャ王国との対立

教皇の方針転換に民衆の反発が高まり、1848年には教皇の信任が厚かった政府首班が暗殺され、暴動が発生しました。ピウス9世はローマを去り、1849年にはローマ共和国の成立を厳しく警戒することとなりました。フランス軍の援助を求める一方で、教皇とサルデーニャ王国の対立は悪化し、教皇権の危機が続きました。

バチカンの囚人宣言

1870年にはローマがサルデーニャ軍によって占領され、教皇領が廃止されました。ピウス9世はこの状況を受けて「バチカンの囚人」と宣言し、イタリア政府との断絶状態に突入しました。以降、生涯をバチカンで過ごし、カトリックの指導者としての役割を果たし続けました。

最晩年と死去

彼の晩年には、ドイツのビスマルクとの文化闘争や、フランスのカトリック中央党への支持を表明しました。つまり、彼はカトリック勢力の維持に向けて積極的に活動を続けました。弟子たちに対する影響力を保持しながら、1878年2月7日に死去しました。

影響と教皇列福

ピウス9世は、日本のカトリック教会とも縁が深く、1862年には日本の二十六聖人を列聖しました。長い在位の後、彼の死後多くの人々から否定的な感情を受けたものの、2000年には教皇ヨハネ・パウロ2世によって列福され、その遺産は今日まで議論され続けています。

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