ピエール・シェフェール

ピエール・シェフェール：ミュージック・コンクレートのパイオニア

ピエール・シェフェール (1910年-1995年) は、20世紀を代表するフランスの作曲家であり、現代[[音楽]]史にその名を刻む重要な人物です。彼は、ピエール・アンリと共にミュージック・コンクレートの創始者として広く知られており、磁気テープを用いた音楽の先駆者として、音楽の歴史に革新をもたらしました。

シェフェールは、技術者であった両親の影響を受け、自身も当初は技術の道を志していました。エコール・ポリテクニークで学び、ストラスブールで電信技師として勤務した後、1936年にパリのフランス国営放送に入社します。ここで彼は録音された音を使った実験を始め、ラジオ放送局という環境が録音装置を自由に使えるという利点に気づいたのです。

1935年から1943年にかけては、著名な作曲家ナディア・ブーランジェに師事。その後、1944年には世界初のラジオ技術実験スタジオを開設しました。このスタジオで、彼は録音された音を様々な速度で再生したり、異なる音を組み合わせたりする実験を重ねました。これは、当時としては画期的な技術であり、これらの実験から生まれた最初の作品が、1948年の「エチュード」5つの小品です。この作品は、スプリンクラーや汽車などの日常の音を素材として構成されており、彼の音楽における実験的なアプローチを象徴しています。

この頃、シェフェールは芸術集団「若きフランス」を設立し、音楽以外にも演劇や視覚芸術に関心を広げます。1942年には、後の「クラブ・デセー」として知られるようになる「ステュディオ・デセー」を共同設立。第二次世界大戦中のレジスタンス運動の拠点となったこのスタジオは、彼の音楽活動の中心的な場所となりました。

1949年、シェフェールはピエール・アンリと出会い、「ミュージック・コンクレート研究グループ」を結成します。1951年にはフランス国営放送から公的な承認を受け、テープレコーダーを備えた新しいスタジオを設立。それまでターンテーブルを用いて創作していたシェフェールにとって、これは大きな進歩でした。

その後も実験を続け、1952年には自身の創作方法論をまとめた著作『具体音楽の探究について』を出版。1953年には研究グループを離れますが、リュック・フェラーリやフランソワ＝ベルナール・マーシュらと共に、それを音楽研究グループへと改組しました。

1960年には「フランス国立放送研究部」を設立し部長に就任。この頃から作曲活動は減少しますが、音響の研究と教育に力を注ぐようになります。彼の最後の作曲作品は1959年の《Etudes aux Objets》でした。新しい職務では、物体の音波の特性の研究を指揮し、1966年には重要な著作『Traité des objets musicaux（音楽的対象の論文）』を出版します。この本では、あらゆる音源を分類し、それぞれの特徴を7つのカテゴリーに整理しています。この大著は、英語とスペイン語にも翻訳され、世界中で高く評価されました。

シェフェールは、パリ音楽院などで電子[[音楽]]を指導するなど、教育活動にも積極的に携わっていました。入門書から専門書まで幅広い著作を執筆し、1990年まで旺盛な執筆活動を続けました。晩年はアルツハイマー病を患い、1995年、エクサンプロヴァンスで逝去しました。享年85歳でした。

シェフェールは、ミュージック・コンクレートという新しい音楽表現の可能性を開拓し、その発展に大きく貢献しました。彼の作品、著作、そして教育活動は、現代[[音楽]]のみならず、音響学やメディアアートなど、様々な分野に大きな影響を与え続けています。彼の功績は、現代[[音楽]]史に不滅の足跡を残しています。

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