ピエール・ジリウー

ピエール・ジリウー（1876年6月17日 - 1948年12月26日）は、フランス出身の画家であり、その作風は多岐にわたります。初期にはポール・ゴーギャンの影響を強く受け、クロワゾニスムのスタイルで作品を制作しました。その後、20世紀初頭にはロシア人芸術家のマリアンネ・フォン・ヴェレフキンやアレクセイ・フォン・ヤウレンスキーと親交を深め、表現主義の画家たちと行動を共にしました。ミュンヘン新芸術家協会のメンバーとしても活動し、フォーヴィスムの初期にもその名を連ねています。

生い立ちと画業の始まり

ピエール・ジリウーは、パリで鉱業会社のエンジニアの息子として生まれました。父親の転勤で幼少期をマルセイユで過ごし、アマチュア画家であった父親の影響で、10歳から油絵を始めました。軍務を終えた後、風刺雑誌に絵を描き、1900年にパリに移り、画家としての道を歩み始めます。彼は基本的に独学でしたが、ジュール・モンジュのスタジオを訪れ、ジャック・ヴィヨンやフェルナン・ピエ、ファビアン・ローネーといった画家たちと交流しました。ルーブル美術館での研究や、ロートレック、セザンヌ、ルイ・アンクタン、ファン・ゴッホらの展覧会を通じて、自身の画風を磨きました。

画家としての成功と多様なスタイル

社交的な性格から、多くの画家たちと親交を深め、有力な画商にも気に入られたジリウーは、画家として成功を収めました。彼は様々な画家のスタイルを試み、特にゴーギャンに影響を受けたクロワゾニスムの作品は、彼の初期の代表的なスタイルとなりました。また、1905年のサロン・ドートンヌでは、アンリ・マティス、アンドレ・ドラン、アルベール・マルケらと共に作品を出展し、フォーヴィスムの先駆者の一人としても評価されています。彼の代表作の一つである『ゴーギャンへのオマージュ』は、1906年に描かれました。

表現主義との出会いとミュンヘン新芸術家協会

1906年、ジリウーは、マリアンネ・フォン・ヴェレフキンとアレクセイ・フォン・ヤウレンスキーと出会い、親交を深めました。彼らの滞在中に、ジリウーの故郷に近いソセ＝レ＝パンの保養地に滞在したヤウレンスキーらに、ジリウーのスタイルは影響を与えたと言われています。1907年にはイタリアを旅し、シエナで初期のイタリア美術に触れ、その色彩に影響を受けました。その後、神話などを題材にした作品を描くようになります。

1908年末から、ヤウレンスキーらが立ち上げたミュンヘン新芸術家協会に、1909年12月の第一回グループ展に友情のために参加しました。彼はこの展覧会に参加した唯一のフランス人画家となりました。翌年には正式メンバーとなり、第二回展にはジョルジュ・ブラック、アンドレ・ドラン、キース・ヴァン・ドンゲンといったフランス人画家も参加するようになりました。

青騎士との交流と第一次世界大戦

ヴァシリー・カンディンスキーやフランツ・マルクら、ミュンヘンの前衛画家たちとも交流を深めたジリウーは、カンディンスキーらが創刊した芸術年刊誌『青騎士』に論文を寄稿する予定でしたが、実現には至りませんでした。また、ベルリン分離派を脱退した青騎士のメンバーが結成した「新分離派」の展覧会にも参加しました。

第一次世界大戦が始まると、ドイツの画家たちとの交流は途絶え、ジリウー自身も軍役につきました。戦後は、壁画制作や版画制作、本の挿絵といった仕事に携わり、画家としての活動を続けました。

作品の特徴と影響

ピエール・ジリウーの作品は、ゴーギャンの影響を受けたクロワゾニスムから、フォーヴィスム、そしてイタリア美術からの影響を受けた神話的なテーマまで、多様なスタイルを示しています。彼の色彩感覚は、特にシエナの初期イタリア美術からの影響を強く受けており、その後の作品に大きな影響を与えています。彼は、同時代の画家たちとの交流を通じて、自身のスタイルを常に進化させ続け、20世紀初頭の美術界において重要な役割を果たしました。

晩年

第一次世界大戦後、ジリウーは壁画制作や版画、本の挿絵の仕事に力を注ぎました。彼の作品は、その多様なスタイルと、同時代の芸術運動への積極的な参加を通じて、現代美術史において重要な位置を占めています。1948年12月26日、ジリウーは生涯を閉じましたが、彼の作品は今日でも多くの人々に愛され、研究されています。

もう一度検索