ピペリジン

ピペリジンとは

ピペリジン（Piperidine）は、有機化合物の1種で、6員環構造を持つ複素環式アミンです。胡椒の辛味成分であるピペリンの構造中に存在し、その胡椒（Piper）にちなんで名付けられました。別名として、ヘキサヒドロピリジン、ペンタメチレンイミンとも呼ばれます。

構造と性質

ピペリジンは、シクロヘキサンの6つのメチレン基のうち1つの炭素が窒素に置き換わり、水素が1つ外れた構造を持つ環状の第二級アミンです。常圧下での融点は-9 ℃から-7 ℃程度、沸点は106 ℃です。したがって、常温常圧では無色の液体として存在し、特有の悪臭を放ちます。

第二級アミンであるため、マウスの胃腸環境下で亜硝酸塩と反応し、ニトロソピペリジン（発がん性リスク2B）を生成する可能性が指摘されています。

用途

ピペリジンは、ペプチドの固相合成法で汎用されるFmoc保護基の脱保護剤として広く利用されています。これは、ペプチド合成において、特定のアミノ酸を選択的に反応させるために重要な役割を果たします。

誘導体

ピペリジンは基本的な構造を持つため、多くの誘導体が存在します。例えば、精神刺激薬であるメチルフェニデートの構造中にその環構造が見られます。また、幻覚剤として知られるフェンサイクリジン（1-（1-フェニルシクロヘキシル）ピペリジン）を熱分解することによっても生成されます。

混同しやすい化合物

ピペリジン(Piperidine)と類似した名称を持つものの、全く異なる化合物がいくつか存在します。例えば、[ピペリシン]は不飽和高級脂肪酸アミドであり、[ヒペリシン]はセイヨウオトギリソウに含まれる主要な生理活性物質の一つです。これらの化合物は、構造も性質もピペリジンとは大きく異なります。

関連事項

シクロヘキシルアミン
ピリジン
アニリン
ピロール
* ウルフ・スファンテ・フォン・オイラー - 1942年にピペリジンを発見。

ピペリジンは、その独特な構造と反応性から、様々な分野で応用されている重要な化合物です。その誘導体も多岐にわたり、医薬品、農薬、高分子材料など、幅広い分野で利用されています。

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