ピリッポス3世

ピリッポス3世とは

ピリッポス3世（希: Φίλιππος Γ'、紀元前359年 - 紀元前317年12月25日）は、アルゲアス朝のマケドニア王として知られています。本名はアリダイオス（希: Αρριδαίος）で、彼は偉大なるアレクサンドロス3世（一般にアレクサンドロス大王と呼ばれる）の異母兄にあたります。彼は名目的な王位の継承者となったものの、その治世は短く制約されたものでした。

生涯の経緯

アリダイオスは父王ピリッポス2世と彼の愛人であるラリサ出身の踊り子ピリンナとの間に生まれました。彼は庶子として生まれましたが、後に父と異母弟アレクサンドロスとの間に生じた婚姻問題により、その地位が相対的に高まりました。アレクサンドロスが母オリュンピアスと共にマケドニアから逃げ出す事態に至った時、アリダイオスは一時的にアレクサンドロスのライバル的な立場になりました。

プルタルコスによると、オリュンピアスはアリダイオスの影響力の強まりを危惧し、彼に毒を盛った結果、アリダイオスは知的障害を負い、実質的に王位継承の資格を失いました。

しかし、この状況はアレクサンドロスが紀元前323年に急死したことにより一変しました。アレクサンドロスの死後、彼には王位を継ぐ息子がいなかったため、その遺言「最も強き者がわが後を継げ」という曖昧な内容が、まさに混乱を引き起こしました。バビロンで開かれた会議では、アレクサンドロスと愛妾バルシネの間に生まれた幼少のヘラクレスが王位を継ぐ可能性が議論されたものの、彼は庶子であり、誰も彼を支持しようとはしませんでした。

この時、突如として無名の兵士がアリダイオスの名を挙げ、彼が王位の資格を持つと主張しました。多くの者がこの意見に賛同し、アリダイオスは再び王位への道を歩むこととなります。

王としての立場

アリダイオスはピリッポス3世として即位し、アレクサンドロス大王の妃ロクサネによって子供が産まれるのを待つことになりました。生まれた場合、その子供が男子であれば、アリダイオスと共に統治することが決まっていました。実際にロクサネは男子を産み、その子供はアレクサンドロス4世と名づけられましたが、アリダイオスはあくまで名目的な王でした。

その後、アレクサンドロス4世の後見人としてペルディッカスが、ピリッポス3世の後見人としてはクラテロスが定められましたが、ディアドコイ戦争は続き、クラテロスは紀元前321年に戦死しました。ピリッポス3世はマケドニアに移されたものの、その実権は次第に脆弱化していきました。

権力の争いと最期

ピリッポス3世の妻エウリュディケ2世は、カッサンドロスと結束して権力を得ようとしました。これに対抗する形で、オリュンピアスが軍を率いてマケドニアに向かいます。紀元前317年、オリュンピアスはピリッポス3世を捕らえ、彼は処刑されることとなりました。

彼の治世は名目上のものであり、実質的には他の武将たちの争いに巻き込まれ、最期を迎えました。王位を奪われ、操り人形のような存在であったピリッポス3世の人生は、古代マケドニアの政治の複雑さを象徴するものであると言えます。

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