ファロール

ファロール（Pharol）

ファロール、あるいはファロルとして知られる存在は、アメリカのSF作家C・L・ムーアによって創造された架空の神性です。今日では、ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの作品世界を基盤として発展したクトゥルフ神話大系において、旧支配者の一柱として数えられています。特に「暗黒のファロール（ブラック・ファロール）」という異名で称されることがあります。

この神性の初出は、C・L・ムーアの代表的なSFシリーズであるノースウェスト・スミス・シリーズの記念すべき第一作『シャンブロウ』です。この作品の中で、ファロールは金星に住む一部の種族が抱く、古い時代の迷信的な信仰対象としてその名が登場します。その後も、シリーズの他の作品において、金星人の台詞や思考の中にしばしば言及されることとなります。

ファロールに関する詳細な設定が明らかになるのは、同じくノースウェスト・スミス・シリーズの第4作にあたる『神々の遺灰』においてです。この物語の中で、ファロールは太陽系がまだ若く、惑星が現在とは異なる姿をしていた太古の時代に、やがて崩壊して小惑星帯となるとされるある惑星に君臨していたことが示唆されます。ファロールは単独で存在するのではなく、配下とされる二柱の神性と共に、三神一体としてその惑星を支配していたと語られています。

ムーア自身の作品に登場したファロールは、その夫である作家ヘンリー・カットナーの作品世界にも引き継がれました。カットナーは1929年に発表した短編『ヒュドラ』の中でファロールに言及しています。こうした異なる作家による言及や描写が積み重なるにつれて、ファロールはムーアの単なるSF的な設定から、より広範なコズミックホラーの文脈へと位置づけられるようになります。やがてクトゥルフ神話が多くの作家によって体系化・拡張されていく過程で、ファロールもその神話大系における邪神の一柱として確固たる地位を築いていきました。リン・カーターやリチャード・L・ティアニーといった後続の作家たちも、自身のクトゥルフ神話作品の中でファロールを登場させたり、言及したりすることで、その存在感をさらに強めています。

眷属

太古の太陽系において、ファロールが君臨していたとされる惑星で、彼と共に三神一体を形成していた配下の二柱の神性が存在します。これらの眷属は以下の名前で知られていますが、その性質や姿、あるいはどのような役割を果たしていたのかといった詳細については、ほとんど情報が失われており、名前以外のことは全く不明とされています。

• - セーグ（Saig）
• - ルサ（Lsa）

彼女たちに関する知識の欠如は、ファロールと共に失われた太古の時代や文明の深遠さ、そしてその恐るべき力がもはや理解不能なほど遠い過去に属していることを示唆しているのかもしれません。

主な登場・言及作品

ファロールが登場、あるいは言及される主な作品は以下の通りです。

登場作品

• - C・L・ムーア『神々の遺灰』（邦訳：『シャンブロウ』論創社 ほか収録）
• - リン・カーター『シャッガイ』（邦訳：『エイボンの書』新紀元社 ほか収録）

言及作品

• - C・L・ムーア『シャンブロウ』（邦訳：『シャンブロウ』論創社 ほか収録）
• - C・L・ムーア ノースウェスト・スミス・シリーズの他作品
• - ヘンリー・カットナー『ヒュドラ』（邦訳：『クトゥルー9』青心社 ほか収録）
• - リチャード・L・ティアニー『ファロールの召喚』（邦訳：『エイボンの書』新紀元社 ほか収録）

これらの作品を通じて、ファロールはSFとホラーの境界領域に位置する神秘的かつ恐ろしい存在として、読者に印象づけられています。

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