フロージ

伝説の王、フロージ：北欧神話に名を残す謎多き存在

フロージ（古ノルド語: Fróði、古英語: Frōda）は、北欧の様々な文献に登場する伝説的なデンマーク王の名前です。『ベーオウルフ』、『散文のエッダ』、『ユングリング家のサガ』、『デンマーク人の事績』、『グロッティの歌』などにその名を見ることができます。中高ドイツ語の叙事詩『ラーベンシュラフト』にも、端役として登場します。この称号は、北欧神フレイに由来すると考えられています。

日本語では、フロジ、フロディ、フロデなど、複数の表記が見られます。

フリズレイヴの子として

『グロッティの歌』では、フロージはフリズレイヴ(Fridleif)の息子とされています。『ユングリング家のサガ』によれば、彼が所有する蜜酒の樽に、親交のあったスウェーデン王フィヨルニルが転落し、溺死したとされています。

スノッリ・ストゥルルソンは『散文のエッダ』で、フロージがローマ皇帝アウグストゥスと同時代の人であり、キリストが誕生した頃に統治していたと記し、フロージの治世が平和であったと解説しています。アイスランドの文献では、フロージを非常に初期のデンマーク王としていますが、『デンマーク人の事績』では、フロージは統治者の血統の中では比較的後期の人物として描かれています。しかし、サクソもアウグストゥスと同時代であることを考慮し、キリストの誕生に言及しています。

ハルフダンの父として

『ユングリング家のサガ』と『デンマーク人の事績』によれば、フロージはハルフダン(Halfdan)の父でした。『ユングリング家のサガ』では、彼の父はダン王であるとし、フロージが〈高慢の〉または〈温和の〉と呼ばれていたと伝えています。彼は5世紀または6世紀に生きていたとされています。

スウェーデンの王エギルが奴隷のトゥンニ（またはチュンニ）を倒すのを助けた〈勇敢なフロージ〉を、同一人物と考える人もいます。エギルはデンマークへの貢納はしませんでしたが、定期的に贈り物を贈っていました。しかし、彼の息子オーッタル（またはオッタル）はフロージと不仲であり貢納を拒否したため、デンマークとスウェーデンの間に争いが起こりました。

インギャルドの父として

『ベーオウルフ』に登場するインギャルド(Ingjald)の父フロージは、ヘアゾベアルド(Heathobards)の王フロデです。このフロージは、ヘアゾベアルド人とデネ人の間の敵意の中で、ハルフダンの兄弟として登場します。フロージはハルフダンを殺害し、ハルフダンの息子ハルガとフロースガールによって殺されます。

サクソ・グラマティクスは、このフロージを非常に後期の伝説的な王として設定しています。サクソは、この遺恨話に触れていますが、ハルフダンとの関係には言及していません。代わりに、フロージがサクソン人によって殺害されたこと、そして遺恨を解消するために彼の息子インゲルドとサクソンの王女が政略結婚したものの、それが失敗に終わったことなどに言及しています。

その他の記述

スウェーデン南部のイドル高地発祥の伝説では、フロデとして知られる王が、スメン湖を作ったとされる牛ウルコン(Urkon)に殺されたと伝えられています。

『デンマーク人の事績』には、6人のフロージ(Frothos)が登場します。

Frotho I
Frotho II
Frotho III
Frotho IV
Frotho V
Frotho VI

現代でも、Fróðiの表記はアイスランド語やフェロー語で使われており、FrothoやFrodoとしてラテン語化されています。J・R・R・トールキンによる『指輪物語』の主人公、フロドの名前もこのフロージに由来すると考えられています。英語化された表記には、Frode、Fródi、Fróthi、Frodhiなどがあります。デンマーク語、ノルウェー語、スウェーデン語での表記はFrodeです。名前の意味は「利口、博識、賢明」といったものです。

スカンディナヴィアには、2008年時点でノルウェーに約11384名、デンマークに約1413名、スウェーデンに約307名のFrodeという名前の人が存在します。

フロージ王は、様々な文献に登場する伝説的な存在であり、その生涯や業績は多くの謎に包まれています。しかし、彼の名は現代にも受け継がれ、北欧の文化に深く根付いています。

もう一度検索