フォード・スペクトロン

フォード・スペクトロン：マツダ・ボンゴの兄弟車とその歴史

フォード・スペクトロンは、フォード・モーターが販売していたキャブオーバー型ワンボックスカーです。マツダからのOEM供給を受けており、ボンゴの姉妹車として知られています。この記事では、スペクトロンの概要、歴史、特徴に加え、日本国内向けの商用車であるJ80、J100、そして海外向けのエコノバンについても詳しく解説します。

概要

1979年、フォードとマツダは資本提携を結び、フォードはアジア、オセアニア、環太平洋地域向けの小型車の開発と生産をマツダに委ねました。この提携の一環として、1981年から2代目マツダ・ボンゴが、エコノバン（商用車）とスペクトロン（乗用車）という名前でOEM供給され、販売が開始されました。プラットフォームにはマツダ・Sプラットフォームが採用されています。これらのモデルは当初、日本では販売されていませんでした。

その後、日本国内でフォードの販売チャネルであるオートラマが発足し、取り扱い車種の拡大を目指して日本国内でも販売が開始されました。同時にバンとトラックも発売されましたが、日本では「三菱ミニカ・エコノ」の商標が存在したため、「フォード・エコノバン」という名称は使われず、ボンゴをベースにしたモデルはJ80、ボンゴブローニイをベースにしたモデルはJ100として販売されました。なお、J100は海外ではエコノバン マキシ（ECONOVAN MAXI）という名称で販売され、日本には存在しないブローニィワゴンのフォード版はスペクトロン スペーサー（SPECTRON SPACER）として販売されました。

日本での販売が終了した後も、海外向けのエコノバン/スペクトロンの販売は継続され、オセアニア地域を中心に4代目ボンゴをベースにしたモデルも存在していました。しかし、2013年10月に台湾の福特六和汽車での台湾仕様車の生産が終了したことにより、スペクトロンは絶版となりました。

歴史

1981年: オセアニア地域向けに2代目ボンゴのOEM車として販売開始。
1983年: フルモデルチェンジが行われ、日本国内での販売も開始。スペクトロンのグレードはXLと上級グレードのXL-Tの2種類が設定されました。
1986年: マイナーチェンジを実施。スペクトロンのフロントマスクが、J80、J100と共通のデザインから専用のものに変更されました。
1989年: スペクトロンに特別仕様車「スポーツ」が発売。このモデルは1991年まで毎年発売されました。
1990年: マイナーチェンジを実施。XLグレードが廃止され、新たにモンターニュグレードが追加されました。J80のバンパー形状が変更され、全車にリアアンダーミラーと集中ドアロックが標準装備となりました。
1995年: ボンゴフレンディをベースとした後継車種「フリーダ」が登場。ただし、スペクトロンも併売されました。スペクトロンのディーゼルエンジンは、2.0Lインタークーラーターボディーゼルに変更されました。
1996年: J80がマイナーチェンジを実施。フロントバンパーとフロントドアウィンドウの形状が変更されました。
1998年1月: スペクトロンの販売が終了。J100がマイナーチェンジを実施。J80同様にフロントバンパーとフロントドアウィンドウの形状が変更されました。
1999年: J80とJ100の生産が終了。一部の海外向けエコノバン/スペクトロンがフルモデルチェンジされました。
2013年: 台湾向けの生産が終了し、エコノバンの32年の歴史に幕を閉じました。

特徴

スペクトロンの外観と内装は、OEM供給元であるボンゴに準じていますが、フロントマスク、エンブレム、リアコンビネーションランプのレンズにはオリジナルのデザインが採用されています（J80、J100バンも最終型ではリアコンビランプレンズがボンゴと共通化）。3代目ボンゴ/ボンゴブローニィのバン・トラックは、デビュー以来、何度かフロントマスクの変更を受けていますが、J80/J100はボンゴに合わせたバンパーのみの変更で、フロントグリルは最後まで変更されませんでした。

また、F8型ガソリンエンジン車は、特殊車両を除く一般的な自動車としては、最後の手動チョーク採用車でした。外装以外の改良や変更はボンゴと同時に行われています。詳細については、マツダ・ボンゴおよびボンゴブローニィの項目を参照してください。

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