フォード・フェスティバ

フォード・フェスティバ：世界を舞台にした小型車の歴史

フォード・フェスティバは、マツダと起亜自動車の協業によって生まれた小型車です。日本やアメリカなど、世界各国のフォード販売網を通じて販売され、経済的な価格と実用的なデザインで多くのユーザーに支持されました。その歴史は、初代モデルから3代目モデル、そして派生モデルへと続きます。

初代フェスティバ (1986年 - 1993年): マツダ開発による個性派

初代フェスティバは、マツダが開発し、当時のフォード販売店「オートラマ」で販売されました。特徴的なブリスターフェンダーを持つ3ドアハッチバックで、1.1Lと1.3Lの直列4気筒SOHCエンジンを搭載。荷室を広く取った商用車仕様の「フェスティバ・カーゴ」も存在しました。

革新的な点は、後のファミリアやユーノス・ロードスターにも採用された新型B型エンジンを採用したこと。また、クーラーボックス内蔵のダッシュボード、スライド＆リクライニング可能なリアシート、全席フルフラットアレンジなど、優れたユーティリティが魅力でした。これらの特徴は、後継車種であるマツダ・デミオにも受け継がれています。

コンパクトなボディと高い利便性、そして「キャンバストップ」と呼ばれるオープンエア感覚を楽しめるサンルーフは、特に女性ユーザーから人気を集め、日本フォードブランドにおける最大のヒット作となりました。CMには尾崎亜美の楽曲と田中康夫が起用され、大々的な宣伝活動が行われました。

グレード展開も豊富で、「S」(減衰力可変式ショックアブソーバー搭載のスポーティモデル)、「GHIA」(上級グレード)、「GL」(中間グレード)、「L」(廉価グレード)がラインナップ。キャンバストップは「CANVAS TOP」グレードのみに設定され、他グレードはオプションのスライディングルーフが選択可能でした。マイナーチェンジでは、キャブレター車のオートチョーク化、メーター周りのデザイン変更、GHIAグレードのシートを本革に変更するなど、改良が加えられました。

さらに、1.3L DOHCエンジンを搭載した高性能モデル「GT」と「GT-X」、そして300台限定の特別仕様車「GT-A」も登場。「GT-A」は、アバルトやアルファロメオを彷彿とさせるデザインと鮮やかなロッソコルサのボディカラーが特徴で、当時オートラマに在籍していた中島秀之氏によって企画されました。

キア・プライド（初代）とグローバル展開

韓国の起亜自動車では、フェスティバを「キア・プライド」として生産・販売。3ドアハッチバックの他に、5ドアハッチバック、4ドアセダン（プライド・ベータ）、ステーションワゴンもラインナップされました。

起亜は、北米、台湾、オーストラリアなど世界各国への輸出や、他自動車メーカーへの技術供与を主導。モデル末期には、日本市場にも左ハンドル仕様の5ドアハッチバック「フェスティバ5」と4ドアセダン「フェスティバβ」が輸入されましたが、販売は低調でした。

イランのサーイパー社では、ハッチバックやセダンに加え、ピックアップトラックも生産され、現在も販売が続けられています。

マツダ・121（2代目）と競合関係

ヨーロッパとオセアニア地域では、2代目マツダ・121として販売。特にオセアニアでは、起亜生産のフォード・フェスティバと並行して販売され、販売面での競合関係にありました。ラインナップは3ドアハッチバックのみでしたが、フェスティバには設定の無かったキャンバストップ（「Fun Top」）が設定されました。1991年にはフルモデルチェンジを行い、3代目121はオートザム・レビューベースとなりました。

2代目フェスティバ (1993年 - 1997年): デザイン変更と販売低迷

2代目フェスティバは、北米とオーストラリア市場の要望を反映し、クーペ風のデザインに変更されました。しかし、質感の低さや後部座席の閉塞感が敬遠され、日本では販売が低迷しました。エンジンは1.3Lと1.5Lの直列4気筒SOHCを採用。DOHCエンジン搭載モデルは設定されませんでした。

1996年には3代目となるフェスティバ・ミニワゴンが登場しましたが、2代目はしばらく併売されました。

キア・アヴェラとフォード・アスパイア

2代目フェスティバも、起亜自動車によって「キア・アヴェラ」として生産されました。プライドと同様に5ドアハッチバックやセダン（アヴェラ・デルタ）が存在し、アメリカではフォード・アスパイアとして、台湾ではフォード・フェスティバとして、オーストラリアとニュージーランドでは右ハンドル仕様のフェスティバとして販売されました。

3代目フェスティバ・ミニワゴン (1996年 - 2003年) とフェスティバの終焉

正確には2代目でフェスティバは終了しましたが、マツダ・デミオのOEM車として「フェスティバ・ミニワゴン」が販売されました。しかし、2002年にフォード・ジャパンがOEM車販売から撤退する方針に変更したことにより、2003年に生産・販売を終了。17年にわたるフェスティバの歴史に幕を閉じました。

車名由来

フェスティバは英語の「フェスティバル（祭り）」に由来しています。

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