フスン

フスン(哈散納)

フスン（? - 1255年）は、ケレイト部出身でチンギス・カンに仕えた千人隊長の一人です。『元史』では哈散納、『元朝秘史』では許孫と記されています。名前はモンゴル語で「水」や「河」を意味するウスンに由来すると考えられています。

生涯

フスンがチンギス・カンに仕えるようになった経緯は詳しく分かっていませんが、チンギス・カンとケレイト部のオン・カンとの戦いに従軍し、功績を挙げたことが記録されています。オン・カンとの戦いで敗走したチンギス・カンがバルジュナ湖に至った際、フスンも共に泥水をすすり、後世に語り継がれる「バルジュナ湖の功臣」の一人に数えられるようになりました。その後、チンギス・カンの中央アジア遠征にも従軍し、サマルカンドやブハラの攻略に参加しています。

オゴデイ・カアンの治世下では、平陽路・太原路のダルガチ（長官）に任命されましたが、まもなく病で亡くなりました。

系譜

フスンの死後、息子のニグベイが後を継ぎました。ニグベイはモンケ・カアンの南宋親征に従軍して功績を挙げましたが、自身も病で亡くなりました。ニグベイの子であるサディミシュもまた病死し、その息子であるムバーラクが千人隊長となりました。ムバーラクは西域親軍副都指揮使に任ぜられ、オルジェイトゥ・カアン（成宗テムル）の時代である大徳元年（1297年）に亡くなると、弟のトゥメンダイが後を継ぎました。トゥメンダイの死後は、その息子であるカラジャンが地位を継承しました。

異説

王国維は『元朝秘史』に登場する「許孫」について、別箇所に登場する「バアリン部のコルチ・ウスン・エブゲン」を「コルチ」と「ウスン・エブゲン」の二名であると解釈し、後者と「許孫」を同一人物であると考えました。しかし、『集史』と『元朝秘史』を比較考察すると、「バアリン部のコルチ・ウスン・エブゲン」が一人の人名であることが明らかであり、現在では「許孫」を『元史』に記される「哈散納」に比定する説が有力です。

参考文献

村上正二訳注『モンゴル秘史 2巻』平凡社、1972年
『元史』巻122列伝9
『新元史』巻129列伝26
『蒙兀児史記』巻34列伝22

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