フメゲイ

フメゲイ（生没年不詳）は、大元ウルスに仕えた官僚です。モンゴル語で「臭い」を意味する人名に由来し、『元史』では旭邁傑と表記されます。彼は晋王イェスン・テムルの下で重要な役割を果たしました。

帝位継承とフメゲイ

1260年代、クビライは帝位継承戦争に勝利し、支配領域をヒタイ、タングート、モンゴル高原に分け、それぞれを息子たちに統治させました。モンゴル高原はカマラ、イェスン・テムルへと受け継がれ、フメゲイはイェスン・テムルに仕えました。

大元ウルスの朝廷では、皇太后ダギとその寵臣テムデルが国政を壟断していました。ゲゲーン・カアンはこれに不満を抱き、即位後に彼らを弾圧したため、カアン暗殺計画が企てられました。テクシらはイェスン・テムルを後継者候補として擁立しようと画策し、その際、使者はダウラト・シャーにのみ計画を伝え、フメゲイには知らせないよう指示しました。このことから、フメゲイはイェスン・テムル配下の中でもダウラト・シャーと対立する立場にあったと考えられます。

イェスン・テムルの即位とフメゲイの活躍

1323年8月4日、南坡の変でゲゲーン・カアンが暗殺されると、イェスン・テムルはクリルタイで即位を表明しました。即位後、フメゲイは宣政院使に任命されます。他の任命者が暗殺実行犯や擁立計画協力者ばかりだったことから、フメゲイはイェスン・テムル自身の抜擢で任命されたと考えられています。

イェスン・テムルは、フメゲイを中書右丞相に任命し、大都に派遣してテクシらの処刑と家産没収を命じました。さらに、テクシが率いていたアスト軍団の統轄も委ねました。マイヌがゲゲーン・カアン暗殺実行犯の処罰に連座することを恐れて潜邸に逃れた際には、フメゲイはマイヌを厚遇するよう進言し、イェスン・テムルはこれを受け入れました。また、南坡の変以来の功績により、フメゲイは多額の褒賞を授与されました。

泰定年間の活動と評価

泰定と改元された後も天災が続き、国内は不安定化しました。フメゲイは、災害の責任は自身にあるとしてカアンに上奏しましたが、慰留されています。また、呉淞江の改修にも携わりました。財政不足を理由に厩馬の軽減、衛士の縮小、諸王への濫賜の節減を上奏し、飢饉を理由に上都の皇后の居所の修繕取りやめを進言するなど、財政再建に尽力しました。1325年には右丞相を退き、タシュ・テムルに地位を譲っています。

『元史』には列伝がありませんが、『新元史』に立伝され、柯劭忞はカアン暗殺犯を処刑し、先朝の法度を守ったフメゲイを「賢相」として評価しています。

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