フランツ・モーリッツ・フォン・ラシー

フランツ・モーリッツ・フォン・ラシー伯爵：オーストリア軍の改革者

フランツ・モーリッツ・フォン・ラシー伯爵（1725年10月21日 - 1801年11月24日）は、神聖ローマ帝国の軍人であり、元帥でした。父はロシア軍元帥のペーター・フォン・ラシー伯爵であり、彼はマリア・テレジアの治世下で活躍し、神聖ローマ皇帝ヨーゼフ2世の親しい友人で顧問となりました。

生い立ちと初期の軍歴

1725年、フランツ・モーリッツ・フォン・ラシーはサンクトペテルブルクで生まれました。アイルランド出身の父、ペーター・フォン・ラシーは、フランスとロシアで軍人として活躍し、ロシア軍の元帥にまで上り詰めました。フランツはドイツで軍事教育を受け、その後オーストリア軍に入隊しました。オーストリア継承戦争では、イタリア、ボヘミア、シュレージエン、オーストリア領ネーデルラントを転戦し、二度負傷しました。終戦時には中佐に昇進し、25歳で大佐、そして歩兵連隊長となりました。

七年戦争での活躍

1756年に七年戦争が勃発すると、ラシーも戦場に身を投じます。ロボジッツの戦いで頭角を現し、少将に昇進。しかし、この戦いでも負傷してしまいます。翌1757年のプラハの戦いでは、自身4度目の負傷を負いながらも奮戦。同年末のブレスラウの戦いでの勝利に貢献しました。しかし、ロイテンの戦いでは再び負傷。撤退を援護しました。その後は、レオポルト・フォン・ダウン元帥と共に、エルンスト・ギデオン・フォン・ラウドンの助けを借りながら、プロイセン王フリードリヒ2世と戦い続けました。

32歳で中将に昇進したラシーは、ダウン元帥によって補給総監に任命されます。しかし、ロイテンの戦いなどでの大敗を受けて、オーストリア軍は慎重な戦略を取るようになり、ラシーもその影響を受けました。1758年10月15日のホッホキルヒの戦いの後、ラシーはマリア・テレジア軍事勲章を授与されました。1759年、会戦での勝利を得られない状況が続き、ラシーとダウンは不興を買ってしまいます。ラシーが砲兵大将に昇進できたのは、ラウドンがクネルスドルフの戦いで勝利に貢献したことによるものでした。1760年、フリードリヒ2世がドレスデン包囲戦に失敗した後、ラシーは軍を率いてプロイセン軍を追撃しました。しかし、ラシーの軍指揮官としての才能はダウン元帥からも疑われており、1760年11月のトルガウの戦いでは、負傷した際にもラシーに指揮権が委ねられることはありませんでした。

軍制改革と晩年

フベルトゥスブルク条約締結後、ラシーはついにその才能を発揮する機会を得ます。マリア・テレジアが息子のヨーゼフ2世にオーストリアの軍務を委ねると、ラシーは1766年に元帥に叙せられ、軍の改革を命じられます。彼は新しい軍法典と補給体制を構築し、オーストリア軍はより少ない支出で、より大規模で装備の整った軍隊を維持できるようになりました。この功績により、マリア・テレジアとヨーゼフ2世の両方から重用される存在となります。ラシーはヨーゼフ2世の改革を支持し、第一次ポーランド分割を主導しますが、健康を害して1773年に辞任し、南フランスへと向かいます。その後復帰しますが、再任はされず、非公式な顧問として留まりました。

バイエルン継承戦争では、ラシーとラウドンがオーストリア軍の総指揮官を務めました。また、墺土戦争にも参戦しましたが、すでに高齢であったラシーは、目立った活躍をすることはできませんでした。レオポルト2世の治世（1790年 - 1792年）まで政界と軍務に関与した後、ウィーン近郊のノイヴァルデック城に引退し、1801年に同地で亡くなりました。彼の遺体は、城内の霊廟に埋葬されています。

参考文献

Constantin von Wurzbach: Lacy, Franz Moriz Graf von. In: Biographisches Lexikon des Kaiserthums Oesterreich. Band 13, Verlag L. C. Zamarski, Wien 1865, S. 464–469.
Alfred Ritter von Arneth (1883). "Lacy, Franz Moriz Graf". Allgemeine Deutsche Biographie (ドイツ語). Vol. 17. Leipzig: Duncker & Humblot. pp. 487–499.
Johannes Kunisch: Lacy, Franz Moritz Graf v.. In: Neue Deutsche Biographie (NDB). Band 13, Duncker & Humblot, Berlin 1982, ISBN 3-428-00194-X, S. 382 (電子テキスト版).
Ruvigny, Melville H., The Nobilities of Europe

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