フリック・オブ・ザ・リスト

「フリック・オブ・ザ・リスト」楽曲解説

「フリック・オブ・ザ・リスト」（Flick of the Wrist）は、1974年にイギリスのロックバンド、クイーンによって発表された楽曲です。この曲は、同じくクイーンの代表曲である「キラー・クイーン」との両A面シングルとしてリリースされ、その独特な音楽性と歌詞で多くのファンを魅了しました。作詞・作曲は、クイーンのボーカリストであるフレディ・マーキュリーが手掛けています。

楽曲の背景

フレディ・マーキュリーは、この曲に登場する人物が具体的に誰を指しているのかを明言していません。しかし、当時クイーンが契約していたトライデント・スタジオのシェフィールド兄弟を風刺したものではないかという説が有力です。歌詞には、搾取や権力乱用を連想させるような言葉が散りばめられており、そのダークな雰囲気は楽曲の大きな特徴となっています。

音楽的特徴

この曲は、コールアンドレスポンス形式のコーラスワークが印象的です。バッキング・ボーカルとリード・ボーカルが交互に掛け合うように歌い進められ、楽曲に奥行きとダイナミズムを与えています。また、ギターのブライアン・メイは、肝炎からの回復後にこの曲を聴かずにギターとコーラスをレコーディングしたというエピソードがあります。彼の独特なギタープレイが、楽曲の魅力を一層引き立てています。

アルバムバージョンとシングルバージョン

「フリック・オブ・ザ・リスト」は、アルバム『シアー・ハート・アタック』において、「テニメント・ファンスター」、「フリック・オブ・ザ・リスト」、「谷間のゆり」の3曲が連続して収録されており、それぞれの曲は独立して録音された後、繋ぎ合わされる形で一つのメドレーとして構成されています。このため、CDで再発される際にトラックの分割位置を調整する必要がありました。アルバムバージョンでは、「テニメント・ファンスター」からクレッシェンドで始まり、曲の最後の歌詞「... baby, you've been had」が次の曲「谷間のゆり」の冒頭に繋がるように構成されています。この独特な構成は、アルバム全体の流れをよりドラマチックに演出しています。

この曲のオリジナルマスター録音は、様々な形でリリースされています。日本では、CDシングル再発盤「懐かしのラヴァー・ボーイ」のB面として、「テニメント・ファンスター」と共に収録されました。また、オランダでは「フリック・オブ・ザ・リスト」単独のシングルとして、アメリカでは「炎のロックンロール」のB面として「谷間のゆり」と共にリリースされました。

BBCセッション

2011年に発売された『シアー・ハート・アタック (リミテッド・エディション)』には、ボーナストラックとして1974年10月にBBCセッションで録音された音源が収録されています。このBBCセッションバージョンでは、アルバムバージョンとは異なるアレンジや演奏を楽しむことができ、ファンにとっては貴重な音源となっています。

パーソネル

この楽曲の演奏には、以下のメンバーが参加しています。

フレディ・マーキュリー：リードボーカル、バッキングボーカル、ピアノ
ブライアン・メイ：エレクトリックギター（リードギター、リズムギター）、バッキングボーカル
ロジャー・テイラー：ドラムス、パーカッション、バッキングボーカル
ジョン・ディーコン：ベース

クイーンのメンバー全員がそれぞれの才能を発揮し、この楽曲の独特な世界観を創り上げています。

「フリック・オブ・ザ・リスト」は、クイーンの多様な音楽性を象徴する楽曲の一つであり、その複雑な構成と歌詞、そしてメンバーの卓越した演奏技術が融合した傑作と言えるでしょう。

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