フリック入力

フリック入力とは

フリック入力とは、タッチスクリーン上で指を素早く動かす、または弾く操作全般を指します。特に、スマートフォンやタブレットなどのタッチパネル式デバイスにおいて、指をスライドさせる操作を指すことが多いです。日本では、このフリック操作を用いた日本語入力方式が非常に普及しています。

日本語入力方式としてのフリック入力

日本語入力におけるフリック入力は、テンキーのように配置された各行の「あ」段のキーを中心に、周囲に「い」「う」「え」「お」段の文字が配置されている方式です。例えば、「か」行の「あ」段である「か」を押しつつ、目的の文字がある方向に指をスライド（フリック）させることで、「き」「く」「け」「こ」を入力します。この方式は、従来のトグル入力（同じキーを複数回押すことで文字を切り替える方式）に比べて、より素早い入力が可能です。

フリック入力は、1998年にApple Newton用に開発された日本語入力システム「Hanabi」がそのルーツとされています。その後、2008年にiPhoneに採用されたことで急速に普及しました。この技術は、発明家でシンガーソングライターの小川コータ氏が考案し、特許を取得しています。その後、この特許権はマイクロソフトに譲渡されました。

OS操作におけるフリック入力

OSの操作におけるフリック入力は、2007年1月発売のWindows Vistaの一部エディションで、「ペンフリック」という名称で採用されました。初期設定では、上下左右のフリック操作がスクロールやブラウザの戻る・進むといった操作に割り当てられており、詳細設定で斜め方向の操作も認識させ、コピーやペーストなどの機能を割り当てることも可能でした。続くWindows 7では、「Windows タッチ」という名称で、フリックを含む操作が「タッチジェスチャ」という名称になり、ズームや回転などのマルチタッチ操作にも対応しました。スマートフォン向けの組み込みOSでは、Windows Phone 7からフリック操作に対応しています。

フリック入力が可能な日本語入力システム

フリック入力に対応している主な日本語入力システムには以下のようなものがあります。

iOS標準の日本語入力システム
Android向けIMEアプリケーション
Google 日本語入力
Gboard (Google 日本語入力の後継)
POBox Touch
OpenWnn (iWnn)系: Simeji、OpenWnnフリック入力対応版、OpenWnn plusなど
Windows Phone 7.5以降の日本語入力システム
ATOK (ATOK for iOS, ATOK for Android)

日本語以外でのフリック入力

フリック入力は、日本語入力において広く普及していますが、海外ではほとんど利用されていません。これは、日本語の音韻構造とフリック入力の相性が良いため、日本独自の進化を遂げた結果であると考えられます。日本語以外の言語では、QWERTY配列などのソフトウェアキーボード入力が一般的であり、特にラテン文字圏では、指を画面から離さずに文字をなぞる「スワイプ入力」が広く利用されています。中国語圏では、QWERTY配列のソフトウェアキーボードによるピンイン入力、韓国語圏ではハングルを構成する部品を配列したキーボードによる入力が一般的です。

この違いは、スマートフォンの端末の選好性にも影響を与えています。日本以外の国では、ソフトウェアキーボードの入力操作を容易にするためにスマートフォン端末が大型化する傾向がある一方、日本ではフリック入力が主流であるため、小型のスマートフォン端末を求めるユーザーが多いという状況を生み出しています。

日本でフリック入力が普及した理由

日本でフリック入力が普及した理由として、日本語の音韻体系である五十音図とフリック入力の操作体系が非常に相性が良いことが挙げられます。五十音図の「子音10行」×「母音5段」の構成と、フリック入力の「テンキーの10文字」×「上下左右・移動せずの5種類の動き」の組み合わせが、効率的な入力を実現しています。

一方で、日本語以外の主要言語で主流のスワイプ入力が、日本語入力システムではあまり提供されていない状況も指摘されています。

フリック入力に関連する特許

フリック入力に関する特許には、以下のようなものがあります。

特許5210471 「文字入力システム」
特許4694579 「文字入力システム」
特許4907612 「文字入力システム」
特許4979100 「文字入力システム」
特許4969710 「文字入力システム」

脚注

関連項目

日本語入力システム
スマートフォン
トグル入力
2タッチ入力
T9
かな入力
ローマ字入力

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