フリードリッヒ・フォン・シュトルーベ

フリードリッヒ・ゲオルク・ヴィルヘルム・フォン・シュトルーベ

フリードリッヒ・ゲオルク・ヴィルヘルム・フォン・シュトルーベ（1793年4月15日 - 1864年11月23日）は、ドイツ系の血を引くロシアの天文学者および測地学者です。彼は、四世代にわたって天文学者を輩出したシュトルーベ家という学術一家の中心人物として知られています。

現在のドイツ、ハンブルクの一部であるアルトナで生を受けました。この地は当時デンマーク領でした。若くして学問の道を志し、1808年にロシア帝国領であったタルトゥ（現在のエストニア）にあるタルトゥ大学で学びました。大学卒業後、1813年からタルトゥ天文台で研究に携わるようになり、1820年にはその所長に就任しました。彼は1839年まで同天文台で活動を続け、特に二重星の研究と測地学分野で顕著な成果を挙げました。

彼の天文学における主要な業績の一つは、二重星に関する詳細な観測です。ウィリアム・ハーシェルやジョン・ハーシェル、ジェームズ・サウスといった先行する著名な研究者たちの成果をも凌駕する、精緻な観測データを蓄積しました。特に、2714組の連星について、その軌道運動に伴うわずかな位置変化を精密に測定した功績は大きく、これらの研究結果は1837年に『二重星および多重星の精密測定（Stellarum duplicium et multiplicium mensurae micrometricae per magnum Fraunhoferi tubum annis a 1824 ad 1837 in specula Dorpatensi institutae）』として発表されました。

また、恒星までの距離を測るための重要な手法である年周視差の測定にも取り組みました。1843年には光行差の値を測定するなど、この分野でも貢献しています。恒星の年周視差を最初に測定したフリードリッヒ・ベッセルには一歩及ばなかったものの、シュトルーベ自身も1837年にはこと座のベガの年周視差測定に成功しています。

天文学と並行して、測地学の分野でも極めて重要な業績を残しました。彼は「シュトルーヴェの測地弧」と呼ばれる、ノルウェー北部のハンメルフェストから黒海に近い現在のウクライナ、スタラ・ネクラシウカに至る、総延長約2820キロメートルにも及ぶ広大な範囲の子午線弧長を測量するための三角点群の設置プロジェクトを主導しました。この歴史的な測量事業で用いられた観測点の一部は、その科学的・歴史的価値が認められ、2005年にユネスコの世界遺産に登録されています。

タルトゥ天文台での長年の活動の後、シュトルーベはサンクトペテルブルク近郊に新たに建設されたプルコヴォ天文台の初代所長に就任し、その発展に尽力しました。

彼の卓越した功績は高く評価され、1826年には王立天文学会からゴールドメダルを、1827年にはロイヤル・メダルを受賞しています。また、イギリスの王立協会のフェローにも選出されました。

シュトルーベ家の天文学における貢献を記念して、小惑星の一つであるシュトルーヴィーナには、この家族の名前が冠されています。フリードリッヒ・シュトルーベは、二重星研究、恒星天文学、そして広大な測地測量事業という多岐にわたる分野で、後世に大きな影響を与える功績を残した偉大な学者です。

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