フロリースカツプ

フロリースカツプ牝系：日本競馬史を彩る名門一族

明治末期から大正時代にかけて、日本競馬界に大きな足跡を残した競走馬がいます。小岩井農場がイギリスから輸入したフロリースカツプ（1904年～1927年）です。ビューチフルドリーマーやアストニシメントなど、同時期に輸入された他の優良牝馬と共に、20世紀以降の日本の競走馬の血統基盤を築き上げました。

フロリースカツプの偉大さは、その子孫たちの輝かしい活躍によって証明されています。帝室御賞典（現在の天皇賞の前身）を制したフロラーカップ、同じく帝室御賞典を制覇したスターカップ、日本ダービーを制したミナミホマレやマツミドリ、古牝馬チャンピオンのガーネツト、そして年度代表馬に輝いたコダマやキタノカチドキ、さらにチャンピオンスプリンターのニホンピロウイナー、JRA賞特別賞を受賞したスペシャルウィークなど、数多くの名馬がフロリースカツプの血を引いています。

その活躍は21世紀に入っても続いており、年度代表馬ウオッカや3歳牡馬チャンピオンのメイショウサムソンといったスターホースも、フロリースカツプの血を受け継いでいます。1世紀以上を経た現在も、その牝系は日本競馬界において大きな存在感を示し続けているのです。

華麗なる子孫たちの系譜

フロリースカツプの成功は、優れた繁殖能力によるところが大きいです。1907年に小岩井農場に輸入された彼女は、数々の名馬を輩出しました。特に、インタグリオーとの間に生まれた第四フロリースカツプは、繁殖牝馬として優秀で、帝室御賞典・優勝内国産馬連合競走を制したフロラーカップを出産。フロラーカップは「フロリスト」として繁殖入りし、さらに帝室御賞典優勝馬であるハクリユウ、ハクセツ、スターカップ、アカイシダケ、そして東京優駿（日本ダービー）優勝馬であるミナミホマレなど、数々の活躍馬を世に送り出しました。

戦後から1960年代にかけては、スターカップの孫であるヤマニンモアー、ケンホウ、タイセイホープが重賞で活躍を見せました。また、スターカップとダイオライトの間に生まれた第弐スターカップからは、シラオキ牝系の祖であるシラオキが誕生。さらに、スターカップの姉である第弐フロリストの系統からは、ハヤオー、ケンチカラ、そして1959年に牝馬として史上初となる天皇賞と有馬記念の二冠を達成したガーネツトといった名馬が輩出されました。

フロリースカツプの他の産駒からも、数多くの活躍馬が誕生しました。インタグリオーとの仔である第六フロリースカツプ、ガロンとの仔である第九フロリースカツプもそれぞれ独自の牝系を築き上げました。戦後から1960年代にかけては、ヤシマドオター、トサモアー、マツミドリなどが重賞レースで活躍。1970年代以降は、第六フロリースカツプ系統からは短距離・マイル路線で活躍したニホンピロウイナー、クラシック戦線で活躍したキタノカチドキ、そしてエリザベス女王杯で人気薄の勝利を収めたサンドピアリスなどが輩出されました。第九フロリースカツプ系統からは、カツラノハイセイコなど、数々の名馬が誕生しています。

1990年代には、シラオキ牝系から菊花賞を制したマチカネフクキタルが登場。同じくシラオキ牝系からは、クラシックと古馬戦線で活躍し、当時の日本最高賞金を獲得したスペシャルウィークが誕生しました。

21世紀に入っても、その活躍は止まりません。2000年代には、ガーネツトの牝系から出たメイショウサムソンが皐月賞と東京優駿のクラシック二冠を制覇し、古馬戦線でも天皇賞春秋連覇を達成。シラオキ牝系からは、牝馬として64年ぶり、史上3頭目となる東京優駿を制した名牝ウオッカが登場しました。そして2021年には、トサモアーの子孫であるレイパパレが大阪杯を制覇するなど、フロリースカツプの輸入から100年以上が経過した現在も、その牝系は日本競馬界で重要な地位を維持し続けているのです。

フロリースカツプ牝系の未来

フロリースカツプ牝系は、日本競馬史に燦然と輝く名門一族です。その血統は、数々の名馬を輩出し、日本競馬の発展に大きく貢献してきました。これからも、その系譜は受け継がれ、新たなスターホースを生み出し続けることでしょう。 その未来に、大きな期待が寄せられています。

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