アストニシメント

アストニシメント：日本競馬史を彩る偉大な繁殖牝馬

アストニシメント (Astonishment、1902年 - 不明) は、イギリスで生まれた繁殖牝馬であり、日本の競馬界に計り知れない貢献を果たした馬として知られています。1907年、小岩井農場によって日本へ輸入された彼女は、その後の日本競馬の血統基盤を築く礎となった「基礎輸入牝馬」の一頭です。

アストニシメント自身は競走馬として活躍した記録は残っていませんが、その子孫たちは数々の重賞競走、そしてGI競走を制覇し、日本競馬の歴史に名を刻んでいます。特に、JRA顕彰馬に選定されているクリフジとメジロマックイーンは、アストニシメントの血を受け継ぐ代表的な名馬として広く知られています。

アストニシメント牝系の輝かしい歴史

アストニシメントの直仔から重賞勝ち馬は輩出しませんでしたが、彼女の血脈はインタグリオーとの配合によって生まれた第弐アストニシメントへと受け継がれました。第弐アストニシメントは、帝室御賞典と優勝内国産馬連合競走を制したアスベルを産みました。アスベルは競走馬引退後、「オーグメント」の名で種牡馬として活躍し、その血統はさらに広がりを見せます。さらに、第弐アストニシメントの半姉である種光、そして第弐アストニシメントの全妹である第五アストニシメントからも数多くの活躍馬が輩出され、アストニシメント牝系の隆盛を築き上げました。

戦中から戦後にかけては、種光の孫であるクリフジが東京優駿（日本ダービー）、優駿[[牝馬]]（オークス）、菊花賞（当時、京都農林省賞典四歳呼馬）という変則三冠を達成し、その名を轟かせました。また、オーグメントからはヤマトナデシコ、第五アストニシメントのラインからはエベレストといった繁殖牝馬が登場し、アストニシメント牝系の拡大に貢献しました。これらの馬は自身の大レース制覇こそ少ないものの、優れた繁殖能力によって、その血統を次の世代へと繋いでいきました。

1950年代から1960年代にかけては、オーグメントの孫であるオーエンスとハタカゼ、ヤマトナデシコの孫であるヤマトキヨウダイと曾孫のモンタサン、そしてエベレストの産駒であるチトセホープなどが主要レースで活躍しました。さらに、オーグメントの産駒である第六オーグメントからは、メジロ牧場の基礎繁殖牝馬として名高いアサマユリが誕生しました。

1970年代から1980年代には、種光系のブロケード、ヤマトナデシコ系のテンモン、エベレスト系のスズパレード、そしてアサマユリ系のメジロデュレンがGI競走で活躍しました。そして1990年代に入ると、メジロデュレンの弟であるメジロマックイーンが菊花賞と天皇賞（春）を連覇。日本史上初の総獲得賞金10億円突破という偉業を達成し、アストニシメント牝系の頂点を極めました。また、チトセホープの曾孫であるオフサイドトラップも天皇賞（秋）を制覇しています。

2000年代以降も、アサマユリ系のショウナンカンプ（2002年高松宮記念優勝）、エベレスト系からはダート路線で活躍したブルーコンコルドなど、アストニシメントの血を受け継ぐ馬たちが活躍を続けています。2018年には種光の子孫であるニホンピロバロンがJ・GIの中山大障害を制し、2023年にはエベレスト系キングズソードがJBCクラシックを制するなど、21世紀においてもその活躍は衰えることを知りません。

結論

アストニシメントは、競走馬としての活躍こそありませんでしたが、その優れた繁殖能力によって、クリフジやメジロマックイーンといった数々の名馬を輩出し、日本競馬の歴史に多大な影響を与えた、まさに伝説的な繁殖牝馬と言えるでしょう。その血統は現代においても脈々と受け継がれ、日本競馬を支え続けています。

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