ブラバム・BT58

ブラバムBT58：1989年から1990年にかけて活躍したF1マシン

1989年シーズン、1年間の活動休止を経てF1へ復帰したブラバムチーム。その復活を担ったのが、セルジオ・リンランドが設計したブラバムBT58です。このマシンは、ジャッド製V型8気筒エンジンとピレリタイヤを搭載し、チームにとって大きな期待を背負っていました。

セルジオ・リンランドとBT58の設計

BT58の設計を担ったリンランドは、1987年にはアンドレア・デ・チェザリス車のエンジニアを務めていました。ブラバムの活動休止期間中にはダラーラに移籍し、ダラーラ・BMS188の設計にも携わっています。そして、1988年オーストラリアグランプリの際、ブラバムのマネージャー、ハービー・ブラッシュからBT58の設計を依頼されます。

リンランドは、ブラバムのファクトリーで自由に設計できるという恵まれた環境を与えられました。1989年シーズンのブラバムは、金曜朝に行われる予備予選からの参加が決定していたため、リンランドはまずマシンの完走能力を重視しました。シーズン序盤でポイントを獲得し、予備予選免除の目標達成を目指したシンプルな設計がなされました。

輝きを放ったモナコGP

シーズンの序盤、BT58は予備予選で他チームを圧倒する速さを見せつけました。そして迎えた第3戦モナコGPでは、マーティン・ブランドルが予選4位を獲得。決勝ではステファノ・モデナが3位、ブランドルが6位とダブル入賞を果たします。モデナ自身にとっても、チームにとっても2年ぶりの表彰台となりました。この結果により、後半戦の予備予選免除が確定し、リンランドの狙いが達成されました。モデナはその後も安定した成績を残し、その才能を証明しました。

ジャッドV8エンジンとマシンの性能

リンランドは、ジャッドV8エンジンについて「当時のブラバムが手に入れられるエンジンの中で最高の物だった」と評価しています。初期には温度上昇の問題がありましたが、改良によって解決され、マシンの信頼性向上に繋がりました。

BT58Y：ヤマハエンジン搭載テスト

1990年には、BT58の後継機であるBT59が登場し、BT58は序盤2戦のみで使用されました。しかし、ブラバムは1991年シーズンからヤマハV12エンジンを搭載する契約を結んでおり、実戦から退いたBT58は日本へと送られました。そこで、ヤマハOX88（V8エンジン）を搭載したテストが片山右京や小河等によって行われ、翌シーズンへの準備が進められました。

BT58のスペック

まとめ

ブラバムBT58は、復活を遂げたブラバムチームにとって重要な役割を果たしたマシンです。リンランドの設計思想とチームの努力が結実し、モナコGPでの表彰台獲得という輝かしい結果を残しました。BT58Yへの発展も、その技術力の高さを物語っています。 このマシンは、F1の歴史において重要な1ページを刻んだと言えるでしょう。 限られたリソースの中で、最大限のパフォーマンスを引き出したBT58は、F1マシンの設計と開発における創意工夫の好例と言えます。

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