ブランディ・ステーションの戦い

ブランディステーションの戦い：南北戦争最大の騎兵戦

ブランディステーションの戦いは、1863年6月9日、南北戦争中に起こった大規模な騎兵戦です。この戦いは、ゲティスバーグ方面作戦の開始を告げる出来事であり、北軍のアルフレッド・プレソントン少将率いる騎兵隊と、南軍のJ・E・B・スチュアート少将率いる騎兵隊が激突しました。この戦いは、それまで南軍が優勢だった騎兵戦の様相を一変させ、北軍騎兵隊の自信と力を高めるきっかけとなりました。

戦いの背景

1863年5月、チャンセラーズヴィルの戦いで勝利した南軍は、バージニア州カルペパー郡に進軍しました。ロバート・E・リー将軍の指揮下、南軍はカルペパー周辺に集結し、ペンシルベニア州侵攻の準備を進めていました。リーは、北部に侵攻することで、軍隊の食料、馬、装備を確保し、フィラデルフィア、ボルチモア、ワシントンD.C.といった主要都市を脅かすことで、北部における休戦運動を促そうとしました。6月5日までに、ジェイムズ・ロングストリートとリチャード・イーウェル各中将率いる2個歩兵軍団がカルペパー周辺に集結しました。

南軍騎兵隊は、ラッパハノック川の前線を守り、敵の急襲から南軍を遮蔽するため、カルペパーの北東約10kmの地点に展開していました。スチュアートは、その勇猛さを示すため、リー将軍に部隊の野戦演習の査察を求めました。6月5日に行われた演習には、9,000名近い騎兵と4個騎馬砲兵大隊が参加しました。この演習はブランディステーションの南西約3kmの場所で行われました。リー将軍も6月8日にも査察を行いましたが、模擬戦闘は行われず、行進のみに留まりました。この演習に対し、スチュアートの自己満足に過ぎず、馬を疲れさせているだけだと不満を漏らす者もいました。

6月9日、リーはスチュアートに、ラッパハノック川を越えて北軍の前哨陣地を襲撃し、南軍が北進する際の監視や妨害から守るよう命じました。スチュアートは疲弊した騎兵部隊をブランディステーション近くの露営に戻しました。

対戦した戦力とプレソントンの作戦

ブランディステーション周辺にいた南軍の騎兵隊は約9,500名でした。一方、北軍は11,000名が集結しました。アルフレッド・プレソントン少将はポトマック軍の騎兵軍団を指揮し、部隊を2つの翼に分け、それぞれジョン・ビュフォードとデイビッド・グレッグ准将に指揮させました。また、第5軍団から複数の歩兵旅団で補強しました。プレソントンは南軍の配置を正確に把握しておらず、自軍が優勢であると過信していました。ジョセフ・フッカー少将は、カルペパー周辺に敵の騎兵がいることは、北軍の補給線を襲撃するための準備であると解釈しました。フッカーは、プレソントン隊に南軍に対して「妨害攻撃」あるいは「追っ払い破壊する」ことを命じました。

プレソントンの攻撃作戦では、ビュフォード翼がブランディステーションの北東3kmの地点で川を渡り、グレッグ翼は南東10km下流で川を渡る計画でした。プレソントンは、両翼包囲で南軍を急襲し、打ち破れると予測していました。

戦闘の経過

6月9日午前4時半頃、ビュフォード翼は濃霧の中、ラッパハノック川を渡り、ビバリー・フォードの南軍前哨隊を蹴散らしました。南軍は奇襲を受け、ジョーンズの旅団は着の身着のままで現場に駆け付けました。南軍は、ビバリー・フォード道路の屈曲部で北軍の先導旅団を一時的に食い止めました。この戦闘で、ベンジャミン・F・デイビス大佐が戦死しました。南軍の砲兵隊が陣地を築き、ビュフォード翼の進撃を阻止しました。ジョーンズ隊は砲台の左に、ハンプトンの旅団は右に集結しました。第6ペンシルベニア騎兵隊が教会の大砲に突撃し、大きな損害を受けました。南軍兵の中には、この突撃を「素晴らしく栄光に満ちた」騎兵突撃だったと証言する者もいました。

ビュフォードは、ブランディステーションへの道を塞ぐ砲台を取り除こうとしましたが、ルーニー・リーの旅団が立ちはだかりました。ルーニー・リー隊は石壁を拠点に抵抗し、北軍は大きな損害を受けました。ビュフォード隊が苦戦している最中、グレッグの北軍騎兵師団が到着し、南軍は撤退を始めました。

グレッグは、ビュフォード隊の進軍に合わせてケリー・フォードを渡るはずでしたが、部隊の集結が遅れました。グレッグ隊はブランディステーションに繋がる道が塞がれていることを知り、回り道で進軍しました。午前11時頃、グレッグ隊はブランディステーションに到着しました。グレッグ隊と教会の戦場の間にはフリートウッドヒルという尾根があり、そこにスチュアートの作戦本部がありました。スチュアートとその参謀は前線に出ており、丘には使える大砲が1門しか残っていませんでした。スチュアートの副官は、丘の頂上に大砲を配置し、北軍の進軍を遅らせました。ウィンダム隊が丘に近づくと、教会から撤退してきたジョーンズ旅団が丘の頂上に到達しました。グレッグの次の旅団がフリートウッドヒルの南端と東斜面に攻撃を仕掛けました。丘の上では、何度も突撃と反撃が繰り返され、南軍が最終的に丘を制圧しました。北軍は3門の大砲を捕獲され、大きな損害を被りました。

ルーニー・リーは、ビュフォード隊と戦い続け、丘の北端に後退しました。ルーニー・リーはフィッツフュー・リーの旅団に支援され、ビュフォード隊に対する反撃を始めましたが、日没が近づいたため、プレソントンは全軍に撤退を命じました。これにより、10時間に及ぶ激戦は終わりを迎えました。

戦闘の結果とその後

北軍の損失は907名（戦死69名、負傷352名、不明486名）でした。南軍の損失は523名でした。この戦いには、両軍合わせて約20,500名が参戦しました。南軍の損失の中には、ロバート・E・リーの息子ルーニー・リーが含まれていました。彼は重傷を負い、捕虜となりました。

スチュアートは、プレソントンの攻撃を撃退したため、南軍の勝利と主張しました。しかし、南部の新聞は、スチュアートの指揮を批判しました。北軍の将校たちは、プレソントンがスチュアート軍を打ち破ることができなかったことを批判しました。フッカー少将は、プレソントンに南軍騎兵隊を「追っ払い破壊する」ように命じましたが、プレソントンは「威力偵察」を行っただけだと主張しました。

この戦いは、南北戦争において初めて、北軍の騎兵隊が技術と決断力において南軍と対等になったことを示しました。スチュアート軍が2度も急襲されたことは、騎兵隊にとって屈辱であり、その後のゲティスバーグ方面作戦におけるスチュアートの苦境を暗示する出来事となりました。

戦場跡の保存

ブランディステーション基金は、ブランディステーション戦場跡を開発から保護するために設立されました。1990年には、アメリカ合衆国国立公園局が、戦場の歴史的資源の地図を完成させ、4つの異なる戦闘場所で5.1平方キロメートルの土地を保存することを推奨しました。また、南北戦争保存信託も、戦場跡の保存活動を続けており、これまでに多くの土地を取得しています。

まとめ

ブランディステーションの戦いは、南北戦争における最大規模の騎兵戦であり、戦局を大きく変える転換点となりました。この戦いで、北軍の騎兵隊は自信をつけ、南軍の騎兵隊は弱点を露呈することになりました。戦場跡は現在、歴史的な価値を認められ、保護活動が進められています。

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