ゲティスバーグ方面作戦

ゲティスバーグ方面作戦：南北戦争の転換点

1863年6月から7月にかけて、南北戦争の東部戦線で展開された一連の戦闘がゲティスバーグ方面作戦です。南軍のロバート・E・リー将軍率いる北バージニア軍は、チャンセラーズヴィルの戦いでの勝利を背景に、北部への侵攻を敢行しました。この作戦は、ペンシルベニア州南部を中心に「1863年の緊急事態」として広く認識され、州知事アンドリュー・カーティンは民兵を緊急招集し、南軍の侵攻に対抗しました。

背景

チャンセラーズヴィルの戦いでの勝利後、リー将軍は北部への二度目の侵攻を決断しました。この戦略的な動きは、北軍の夏の作戦計画を混乱させ、南軍に北部豊かな農地の恵みを享受させ、一方で戦争で疲弊したバージニアに休息を与えることを目的としていました。また、フィラデルフィア、ボルチモア、ワシントンD.C.といった主要都市を脅かすことで、北部における休戦の動きを促進する狙いもありました。

リー将軍は当初、ミシシッピ州ビックスバーグの北軍の圧力を軽減するために部隊を派遣することを拒否し、北東部への攻撃に焦点を当てる戦略を主張しました。彼の戦略は、1862年のメリーランド方面作戦と類似しており、以前の侵攻の失敗が北軍のジョージ・マクレラン将軍にリーの命令書が漏洩したことが原因だと考えていました。リーは、ジョセフ・フッカー将軍に対してなら北部侵攻を成功させられると自信を持ち、チャンセラーズヴィルでの勝利によって自軍への信頼を深めていました。

対戦した勢力

ストーンウォール・ジャクソン中将の戦死後、リーは北バージニア軍を3つの軍団に再編しました。ジェイムズ・ロングストリート中将が第1軍団、リチャード・イーウェル中将が第2軍団、A・P・ヒル中将が第3軍団を率い、総勢は約75,000名でした。一方、ジョセフ・フッカー少将（後にジョージ・ミード少将に交代）率いる北軍ポトマック軍は、7個の歩兵軍団、1個騎兵軍団、砲兵予備隊からなり、総勢90,000名以上でした。

フッカー将軍はチャンセラーズヴィルでの敗北とリー軍の侵攻への対応を巡り、エイブラハム・リンカーン大統領によって解任され、ジョージ・ミード少将が後任となりました。

主要な戦闘

ゲティスバーグ方面作戦は、数多くの戦闘から構成されています。以下に主な戦闘とその概要をまとめます。

ブランディ・ステーションの戦い（6月9日）:
北軍の騎兵隊が南軍の騎兵隊を急襲しましたが、両軍とも決定的な勝利を得られませんでした。この戦いは、南北戦争で最大の騎兵戦の一つとなり、北軍の騎兵の能力向上を示しました。

第二次ウィンチェスターの戦い（6月13日-15日）:
イーウェル軍団がウィンチェスターの北軍守備隊を破り、シェナンドー渓谷を南軍の支配下に置きました。この勝利により、南軍はブルーリッジ山脈を越えて北進する自由を得ました。

アルディーの戦い（6月17日）:
ラウドアン渓谷への進出を試みた北軍騎兵隊と、南軍騎兵隊との間で激しい戦闘が行われました。北軍は援軍を得て南軍を後退させましたが、作戦の遅延を招きました。

ミドルバーグの戦い（6月17日-19日）:
南軍騎兵隊が北軍騎兵隊を攻撃し、一時的に撃退しましたが、最終的に後退しました。

アッパービルの戦い（6月21日）:
北軍騎兵隊が南軍騎兵隊の側面を衝こうとしましたが、撃退されました。この戦いの後、スチュアートはポトマック軍の右翼を迂回する広範な偵察と襲撃を始めました。

スポーティングヒルの小競り合い（6月30日）:
南軍騎兵隊が北軍民兵隊と小競り合いを行い、ゲティスバーグ方面作戦で最も北での戦闘となりました。

ハノーバーの戦い（6月30日）:
スチュアート率いる南軍騎兵隊が北軍騎兵隊を攻撃し、一時的に撤退させましたが、北軍の反撃により撤退を余儀なくされました。この戦闘により、スチュアートはリー軍との連絡を失いました。

ゲティスバーグの戦い（7月1日-3日）:
南北戦争における最大の戦闘であり、しばしば戦局の転換点とみなされます。3日間の激戦の結果、北軍が勝利しましたが、両軍ともに大きな損害を被りました。ピケットの突撃は、南軍に壊滅的な打撃を与えました。

カーライルの戦い（7月1日）:
スチュアートがカーライルを襲撃し、北軍民兵隊と戦闘を行いました。

ハンターズタウンの戦い（7月2日）:
南軍騎兵隊が北軍騎兵隊と戦い、北軍の側方攻撃を阻止しました。

フェアフィールドの戦い（7月3日）:
南軍騎兵隊が北軍騎兵隊を破り、リー軍の撤退路を確保しました。

ウィリアムズポートの戦い（7月6日-16日）:
リー軍がポトマック川へ撤退する間の、一連の小規模な戦闘。

ブーンズボロの戦い（7月8日）:
南軍騎兵隊が北軍騎兵隊を撃退し、リー軍の撤退を遅らせました。

マナサスギャップの戦い（7月23日）:
ミード将軍がリー軍を攻撃しようと試みましたが、南軍は無傷で逃れました。

戦闘の後

ゲティスバーグ方面作戦は、リー将軍による最後の大きな攻勢となりました。この作戦での南軍の損失は27,000名以上に達し、作戦目標を達成できなかったことで、南軍にとって大きな痛手となりました。一方、北軍の損失は約30,100名でした。

ミード将軍は、リー軍を逃がしたことで批判を浴びましたが、リンカーン大統領の圧力を受け、リー軍を破るための作戦を続行しました。また、1863年11月19日には、エイブラハム・リンカーン大統領がゲティスバーグ国立墓地の除幕式典で有名なゲティスバーグ演説を行い、この戦争の意義を再定義しました。

ゲティスバーグ方面作戦は、南北戦争の帰趨を決定づけた重要な出来事の一つであり、その後の戦争の行方に大きな影響を与えました。

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