プラウエン市電

ドイツ中東部のザクセン州に位置する都市、プラウエン市内を走行する路面電車網は、プラウエン市電（Straßenbahn Plauen）として知られています。2022年現在、この公共交通機関の運営は、プラウエン路面電車有限会社（Plauener Straßenbahn GmbH、略称PSB）が行っています。

歴史

プラウエン市における軌道系公共交通機関導入の試みは、19世紀末まで遡ります。1885年には、ライプツィヒの企業がプラウエン市と、環境への配慮から煤煙を出さない馬車鉄道や路面電車、あるいはケーブルカーの建設に関する契約を締結しましたが、これは残念ながら実現しませんでした。現在のプラウエン市電の礎を築いたのは、1893年にドイツの電機メーカーであるAEGが市との契約に基づいて建設を開始した路線です。線路や架線の敷設、車庫や関連施設の整備、そして車両の納入を経て、翌年の1894年 11月17日に営業運転が始まりました。

開業と同年に最初の路線延伸が行われ、その後も路線の拡大は続きました。ただし、第一次世界大戦後のハイパーインフレーションの影響により、1923年から1924年にかけて一時的に運行を休止しています。この中断期間を挟みつつも、1930年代にかけてプラウエン市電の路線網は拡充され、これに合わせて多数の車両が導入されました。1905年には路線の増加に対応するため系統制が導入されましたが、当初は系統の色分けが行われ、数字による系統表示が始まったのは1939年のことでした。

第二次世界大戦中は、物資輸送のために一時的に貨物輸送にも使用されました。しかし、1945年の空襲によってプラウエン市電は甚大な被害を受け、多くの区間で長期にわたる運休を余儀なくされました。一部の被害が大きかった区間は廃止が決定されましたが、それ以外の路線については1948年までに復旧作業が完了し、運行が再開されました。

戦後、東ドイツ領内となったプラウエン市電は、運営組織がそれまでの株式会社から人民公社へと改められました。この体制下で路線の延伸が実施されたほか、終端部のループ線の設置や路線の複線化といったインフラの改良が進められました。また、乗車券の提示を乗務員に求めない信用乗車方式の導入など、運行の合理化も推進されました。車両面では、1950年代以降に東ドイツ製の2軸車が投入された一方、1976年からはチェコスロバキア（現チェコ）の重工業メーカーであるČKDタトラが製造した車両が多数導入され、プラウエン市電の主力として活躍しました。

1990年のドイツ再統一に伴い、人民公社から現在のプラウエン路面電車有限会社に運営主体が転換されました。これ以降、同社は路面電車事業に加え、路線バスや乗合タクシーといった自動車交通事業も手掛けるようになりました。2007年には運行系統の一部廃止や、深夜帯の運行を深夜バスに置き換えるなどの再編が行われました。しかし、路面電車の近代化は継続して進められており、線路や施設の改修、古い車両の置き換え、そしてバリアフリー化に貢献する超低床電車の導入などが実施されています。なお、2007年に一旦廃止された「2号線」という系統名は、2020年に行われたダイヤ改正で新設された系統に再び使用されることとなりました。

系統

直近では2020年のダイヤ改正で運行系統が見直され、プラウエン市電には以下の6系統が設定されています（各系統の詳細なルートは省略）。

車両

営業用車両

KT4D-M: 旧東ドイツ時代の1976年以降に導入が始まったチェコスロバキアのČKDタトラ製の小型2車体連接車タトラKT4を、1990年代以降に機器更新した車両です。2022年現在は15両が在籍しており、うち1両（車両番号216）は導入当初の塗装への復元がなされています。
NGT6: アルストム（旧ボンバルディア・トランスポーテーション）が製造する部分超低床構造の連接車、フレキシティ・クラシックシリーズの一形式です。全長は約21mの2車体連接構造で、勾配区間が多いプラウエンの街に適した設計が施されています。プラウエン市電としては37年ぶりとなる新型車両として、2013年より導入が開始されました。2022年現在の在籍数は9両です。

その他

営業用車両のほか、過去に活躍した車両の一部は動態保存されており、特別なイベントなどで運行されることがあります。また、軌道の保守などに使用される事業用車両も複数形式も在籍しています。

プラウエン市電は、開業から一世紀以上にわたる歴史を持ち、度重なる困難を乗り越えつつ、地域の重要な公共交通機関としてその役割を果たし続けています。

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