プレリュード・ノン・ムジュレ

プレリュード・ノン・ムジュレ（フランス語：prélude non mesuré、英語：unmeasured prelude / non-measured prelude）とは、拍子やリズムが明確に定められていない、非定量的な記譜法で書かれたプレリュードを指す言葉です。この様式は、特に17世紀後半のフランスにおけるクラヴサン音楽において典型的なものとして知られています。

このジャンルの楽譜は多様な方法で記されますが、一般に、記されている音符の長さが演奏される音の正確な持続時間を表すわけではなく、小節線も使用されません。しかし、この独特な記譜法を持つ楽曲の多くは、即興的な外見とは異なり、注意深く構成された完成度の高い作品であり、単なる未完成な草稿ではありません。

起源と歴史的背景

拍子を持たないプレリュードのための非定量的な記譜法は、もともとリュートのために生まれました。その起源は、演奏前に楽器の調弦を確かめる意図で弾かれたリュートのプレリュードに端を発し、1630年頃にはその例が見られます。17世紀を通して、リュートのためのプレリュード・ノン・ムジュレは即興的な性格を保ちつつ、より複雑かつ長大に発展しましたが、世紀の終わり頃には次第に姿を消していきました。この分野で重要な働きをした作曲家としては、ピエール・ゴーティエ、ルネ・メッサンジョー、ジェルマン・ピネル、ドニ・ゴーティエらが挙げられます。

リュートの他にも、ヴィオラ・ダ・ガンバのためにも同様の非定量的な作品が書かれました。サント＝コロンブやド・マシといった作曲家の作品にその例を見つけることができます。

クラヴサンのためのプレリュード・ノン・ムジュレは、これらのリュートやヴィオラ・ダ・ガンバの音楽からの影響に加え、ジローラモ・フレスコバルディのトッカータのように、定量的な記譜法で書かれていながらも演奏の際に自由なリズムが許容された鍵盤楽曲の存在を背景として誕生したと考えられています。クラヴサン向けには、50曲以上のプレリュード・ノン・ムジュレの例が確認されています。

クラヴサン音楽における発展

クラヴサンのためのプレリュード・ノン・ムジュレは、およそ1650年頃に登場しました。このジャンルをクラヴサンに導入した最初の作曲家は、通常ルイ・クープランであるとされています。

ルイ・クープランのプレリュードは、手書きの写譜によってのみ現代に伝えられています。これらの楽譜は、連続するスラーが付された全音符のみで記されているのが特徴です。このスラーは、音が保持されるべき箇所や音群のまとまり、あるいは和声の変化を示唆する役割を果たしています。彼のプレリュードの中には、中間に通常の定量的な記譜法で書かれたフーガが挿入されているものもいくつかあります。

ニコラ・ルベーグは、自身のクラヴサン曲集（1677年）の序文で、プレリュードを明確に記譜することの難しさを述べ、その解決のために記譜法の改善を試みました。彼は、全音符から16分音符まで、普段用いられる様々な音価の音符をプレリュードの記譜に取り入れました。小節線はありませんが、和声の変化を示す目的で斜めの線がしばしば用いられています。

ジャン＝アンリ・ダングルベールは、自筆譜ではルイ・クープランと同様に全音符のみでプレリュードを記していましたが、出版譜ではルベーグほど徹底的ではないものの、複数の音価の音符を使い分けました。彼は、和音主体となる部分には全音符、旋律的なパッセージには短い音価の音符を配置することで、楽譜の見た目を分かりやすくし、演奏者が内容を把握しやすくする工夫を凝らしています。

このような多様な記譜法は広く普及し、エリザベト・ジャケ＝ド＝ラ＝ゲール、ルイ＝ニコラ・クレランボー、ルイ・マルシャン、ジャン＝フィリップ・ラモーといった多くの作曲家が同様の手法でプレリュード・ノン・ムジュレを創作しました。

しかし、18世紀に入ると、こうした独特で一見すると謎めいた記譜法を持つプレリュード・ノン・ムジュレは、次第に廃れていきました。比較的後期の例としては、1777年にクロード＝ベニーニュ・バルバトルによって書かれた作品が挙げられます。

なお、フランソワ・クープランの著書『クラヴサン奏法論』（1717年）に含まれる8つのプレリュードは、教育目的のため、定量的な記譜法で書かれています。しかし、即興的な雰囲気を失わないよう、「ムジュレ」（拍節をはっきりと）と記されていない箇所では、リズムに柔軟性を持たせて演奏するよう指示されており、このジャンルの本質的な自由さを示唆しています。

もう一度検索