プログレッシブ・フォーク

プログレッシブ・フォークとは

プログレッシブ・フォークは、元来、進歩主義的な政治思想を反映したアメリカのフォーク音楽の一形態でした。しかし近年では、ボブ・ディラン以降のフォークミュージックの流れを汲み、多様な民族音楽の影響を取り入れ、音楽的、そして叙情的な複雑さを増した現代的なフォークのスタイルを指す言葉としても用いられています。

歴史

用語の起源

プログレッシブ・フォークという言葉の起源は、1930年代のアメリカン・フォーク・リバイバルにおける進歩主義との繋がりまで遡ります。音楽学者のチャールズ・シーガーの研究がその背景にあります。アメリカにおけるプログレッシブ・フォークの発展に大きく貢献したのは、ピート・シーガーとウディ・ガスリーです。彼らは、1960年代にボブ・ディランやジョーン・バエズといったアーティストに影響を与えました。彼らの音楽は、進歩的な政治的メッセージと伝統的なフォークミュージックの楽曲やテーマを融合させたものでした。

イギリスにおいては、1950年代後半に短期間流行したスキッフル・ブームから生まれたアコースティック・アーティストたちが、アメリカのプログレッシブな楽曲を演奏しました。また、1960年代半ばにアメリカのカウンターカルチャーとイギリスのアンダーグラウンドシーンが出現したことも、プログレッシブ・フォークの発展に不可欠でした。当時、「プログレッシブ」という言葉は、このシーンから生まれたポップス、ロック、フォークなどのサイケデリックミュージックを指す言葉としてラジオ局で使用されていました。

サイケデリック・フォーク

「サイケデリック」という言葉が音楽に使われたのは、1964年にニューヨークを拠点とするフォークグループ、ホーリー・モーダル・ラウンダーズが、ブルースのスタンダードナンバー「Hesitation Blues」を独自に解釈したバージョンであると考えられています。サイケデリックミュージックは、1960年代半ばには東海岸と西海岸両方のビート・フォークシーンで急速に広まりました。サンフランシスコでは、カレイドスコープ、イッツ・ア・ビューティフル・デイ、ピーナッツ・バター・コンスピラシーなどのバンドが活躍しました。ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジからは、ジェイク&ザ・ファミリー・ジュエル、キャット・マザー&ザ・オール・ナイト・ニュースボーイズなどのグループが登場しました。シカゴでは、H.P.ラヴクラフトが重要な存在でした。これらのサイケデリック・フォークグループの多くは、1965年頃からザ・バーズを追いかけるようにフォークロックへと移行し、その結果、ジェファーソン・エアプレイン、グレイトフル・デッド、クイックシルバー・メッセンジャー・サービスなどがより広く知られるようになりました。

1960年代半ば以降、ブリティッシュ・インヴェイジョンの影響もあり、アメリカとイギリスの両国でフォーク、フォークロック、ロックのシーンが並行して発展し、相互に影響を与え合いました。特に重要なフォークアーティストとしては、ボブ・ディランなどのアメリカ人アーティストの影響とフラワーパワーへの言及を組み合わせたスコットランドのパフォーマー、ドノヴァンや、1967年以降、中世や東洋の楽器など、アコースティックベースの音楽に様々な影響を取り入れたインクレディブル・ストリング・バンドなどが挙げられます。1960年代後半から1970年代初頭にかけて、イギリスとアイルランドのプログレッシブ・フォークが短期間に開花し、サード・イヤー・バンドやクインテセンスなどのグループ、そしてコーマス、ダンド・シャフト、トゥリーズ、スパイロジャイラ、フォレスト、ヤン・デュークス・デ・グレイなどのグループによる、より抽象的な作品が登場しました。

フォーク・バロック

イギリスでは、1950年代後半から、主に都市部を中心にフォーククラブのネットワークが全国に広がり、第二次フォークリバイバルが起こりました。1960年代初頭には、これらの会場でアメリカの伝統的、かつ進歩的なフォークが演奏されましたが、1960年代半ばからは、イギリスの伝統音楽が主流となり、アメリカの音楽は衰退していきました。ロンドンのサイケデリック・フォークアーティストの多くは、コーヒーハウスやUFO、ミドルアースといったクラブを拠点として活動していましたが、多くのアーティストが伝統音楽とプログレッシブ音楽の中間の領域で活動していました。デイヴィ・グレアム、マーティン・カーシー、バート・ヤンシュ、ジョン・レンボーンなどのアーティストは、様々なスタイルのアメリカ音楽とイギリスのフォークを融合させ、「フォーク・バロック」として知られる独特のフィンガースタイルのギター演奏を生み出しました。彼らは、中世音楽、ジャズ、ブルースの要素を演奏に取り入れ、イギリスのフォークミュージックを新たな領域へと押し広げました。これは、プログレッシブ・ロックの先駆けとも見なすことができます。このジャンルで最も優れた作品は、ニック・ドレイク、ティム・バックリー、ジョン・マーティンといった1970年代初頭のアーティストによって生み出されました。

カントリー・フォーク

カントリー・フォークは、1966年にディランがアルバム『ブロンド・オン・ブロンド』をレコーディングするためにナッシュビルを訪れた後、プログレッシブ・フォークとカントリーのハイブリッドによるサブジャンルとして登場しました。フォークは、1970年代にジョン・デンバーやエミルー・ハリスなどのアーティストによって取り上げられ、近年ではプログレッシブ・カントリーというサブジャンルの発展に貢献しています。

衰退

1970年代初頭には、サイケデリアは時代遅れとなり始め、フォークグループは大部分が解散しました。ディランやバエズのようなアーティストは、1970年代にアメリカのフォークミュージックがブルース、ブルーグラス、オールドタイムなどの分野に細分化していく中で、キャリアを継続しましたが、プログレッシブ・フォークという言葉は姿を消し始め、その主要なテーマは「コンテンポラリー・フォーク」へと移行し、クリス・キャッスル、スティーヴ・グッドマン、ジョン・プラインなどのアーティストを含むコーヒーハウス・サーキットを使用する新しいシンガーソングライターに焦点が当てられました。

イギリスでは、アコースティックデュオのティラノサウルス・レックスがエレクトリックコンボのT・レックスになったように、フォークグループも電化する傾向がありました。これは、プログレッシブ・フォークがメインストリーム・ロックに大きな影響を与えたプロセスの継続でした。1969年からフェアポート・コンヴェンションとスティーライ・スパンによって開拓されたブリティッシュ・フォーク・ロックの影響を受けたと思われる他のアーティストは、ダンド・シャフト、アメイジング・ブロンデル、北部のプログレッシブ・フォークグループであるリンディスファーンの分派、ジャック・ザ・ラッドなど、より伝統的な楽曲に移行しました。プログレッシブ・フォークとプログレッシブ・ロックの境界に位置していたバンドの例としては、短命ながら後に再結成したコーマスや、フォークとロックをクラシックの要素と組み合わせたルネッサンスなどが挙げられます。ムーレッツは、イギリスで最も著名なプログレッシブ・フォークアーティストの一つです。

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