プロトパンク

プロトパンク：パンクロックの先駆け



プロトパンクとは、1960年代から1970年代中頃にかけて、主にガレージバンドによって演奏されたロック音楽のジャンルです。この音楽は、後に登場するパンクロック・ムーブメントの先駆けとなり、その音楽的、テーマ的な特徴を予示しました。プロトパンクに分類されるアーティストたちは、必ずしも互いに関連性を持っていたわけではなく、多様な背景や音楽スタイルを持っていました。

プロトパンクの定義



音楽ガイド「Allmusic」によると、プロトパンクに分類されるアーティストの多くは、1960年代から1970年代初頭に活躍したロックミュージシャンです。代表的なアーティストとしては、ガレージロックやアートロックの要素を持つゼム、ベルベット・アンダーグラウンド、シャッグス、MC5、ストゥージズなどが挙げられます。また、グラムロックバンドであるニューヨーク・ドールズも、プロトパンクの文脈で語られることがあります。

起源と発展



「パンクロック」という言葉の初期の使用例の一つとして、音楽評論家のデイブ・マーシュが1970年にクエスチョン・マーク&ザ・ミステリアンズを評した際に使った例があります。1960年代半ばから後半にかけては、多くのアメリカのバンドがガレージロックを演奏していました。評論家のマイケル・ハンは、13thフロア・エレベーターズやザ・ソニックスといった「タフで攻撃的なガレージロッカー」が、ガレージパンクの代表格であると考えています。AllMusicは、ザ・ソニックスやザ・モンクスのようなバンドがパンクを「予期していた」と述べています。

ザ・ソニックスの1965年のデビューアルバム『ヒア・アー・ザ・ソニックス』は、「パンクロックの初期のテンプレート」と評されています。また、音楽ジャーナリストのジェイソン・ドレイパーは、ローリング・ストーンズの1966年のライブアルバム『Got Live If You Want It!』をプロトパンクの例として挙げています。さらに、ザ・シーズのようなサイケデリックなガレージバンドの生のサウンドとアウトサイダー的な姿勢も、後のプロトパンクバンドのスタイルを予示していました。

1969年には、アメリカの2つの重要なプロトパンクバンドがデビューアルバムをリリースしました。デトロイトのMC5は1月に『Kick Out the Jams』を、アナーバーのザ・ストゥージズは8月にセルフタイトルのアルバムをリリースしました。後者のアルバムは、ニューヨークのベルベット・アンダーグラウンドの元メンバーであるジョン・ケイルがプロデュースし、パンクロックの形成に大きな影響を与えました。ストゥージズは1970年にセカンドアルバム『ファン・ハウス』をリリースしました。ミシガン州は、ザ・ドッグス、ザ・パンクス、そしてアフリカ系アメリカ人のプロトパンクグループであるデスバンドの発祥の地でもあります。

国外での展開



イギリスでは、ザ・フーが1965年にプロトパンクのシングル「マイ・ジェネレーション」をリリースしました。1970年代初頭には、ロンドンのラドブローク・グローブ周辺のアンダーグラウンドシーンから、デヴィアンツ、ピンク・フェアリーズ、ホークウインドなどのプロトパンクバンドが誕生しました。クラッシュド・バトラーは、「イギリス初のプロトパンクバンド」と呼ばれています。

Allmusicによると、グラムロックも多くのパンクに影響を与えました。グラムロックのシンプルで力強いギターリフ、独特なスタイル、そしてイギリス訛りで歌うアーティストの姿勢が、パンクの先駆けとなりました。デヴィッド・ボウイは、ジギー・スターダストのペルソナで、パンクに取り入れられることになる誇張を表現しました。グラムグループのハリウッド・ブラッツも、「パンクの原型」や「ニューヨーク・ドールズに対する英国の答え」として知られています。パブロックシーンのバンドも、R&Bの影響を受けたロックンロールをハードに演奏することで、パンクを予感させました。1974年頃には、Dr.フィールグッドがパンクの爆発に繋がる道を開き、ストラングラーズやコック・スパラーなどのバンドの登場を後押ししました。パブロックバンドの一つである101ersのリードシンガーは、後にジョー・ストラマーと名乗り、パンクバンドのザ・クラッシュを結成しました。

西ドイツでは、クラウトロックの影響を受けたノイ!が1971年に結成されました。カナダでは、1973年に結成されたシンプリー・ソーサーが、「カナダ初のプロトパンクバンド」と呼ばれています。日本では、反体制的な「頭脳警察」が、ガレージ、サイケ、フォークを融合させた音楽を演奏し、その精神が後にパンク運動に引き継がれました。

オーストラリアでは、ストゥージズとMC5に触発された新世代のガレージロックバンドが、パンクサウンドに近づいていきました。プリティ・シングスの影響を受けたラジオ・バードマンは、小さなファン層の前で演奏を始めました。セインツはパンクバンドと見なされていますが、ラジオ・バードマンはパンクの共同創設者、またはプロトパンクと見なされています。

南米では、1964年にペルーのリマでガレージバンドのロス・サイコスが登場しました。彼らは、プロトパンクに分類されるラテンアメリカ最初のグループの一つと考えられています。

代表的なアーティスト




プロトパンクは、後のパンクロックの基礎を築いた重要な音楽ジャンルです。その多様な音楽性と反抗的な姿勢は、世界中の多くのミュージシャンに影響を与え、その後の音楽シーンの発展に大きく貢献しました。

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