プロビア

富士フイルム「フジクローム プロビア」シリーズ：写真表現の進化を彩るリバーサルフィルム

富士フイルムのカラーリバーサルフィルム「フジクローム」ブランドの中で、ベルビアと並び主力製品として知られる「プロビア」。その誕生から現在に至るまでの歴史、多様な製品ラインナップ、そして技術的な特徴を詳しく解説します。

プロビアの歴史

プロビアシリーズは、1994年2月に「フジクロームプロビア100（RDP II）」「フジクロームプロビア400（RHP II）」「フジクロームプロビア1600（RSP II）」の3種類が発売されたことで幕を開けました。これらの製品は、それぞれ「フジクローム100プロフェッショナルD（RDP）」「フジクローム400プロフェッショナルD（RHP）」「フジクローム1600プロフェッショナルD（RSP）」の後継として登場しました。

2000年7月には、「フジクロームプロビア100F（RDP III）」と「フジクロームプロビア400F（RHP III）」が発売されました。富士フイルムはこの「プロビアF」シリーズを「世界最高級の粒状性」と自負しており、背景には印刷業界でのカラーリバーサルフィルムのスキャナ取り込みの日常化に伴う、粒状性向上の要求がありました。これらの「プロビアF」2種は、「世界最高の粒状性」、「抜群の減増感処理性」、「色再現性と調子再現性の向上」を特徴としていました。

2001年6月には、「フジクロームプロビア100F」と「同400F」が、カメラグランプリ2001で「カメラ記者クラブ特別賞」を受賞し、その性能が高く評価されました。

2003年6月には、「フジクロームベルビア100F」「フジクロームベルビア100」「アスティア100F」がラインナップに加わり、プロビアを軸に、硬調高彩度のベルビア、軟調低彩度のアスティアが加わることで、写真家の多様な撮影意図に応えることを目指しました。

2006年4月には「フジクロームプロビア400X（RXP）」が発売され、プロビアシリーズのラインナップがさらに拡充されました。

2010年4月には、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律（化審法）の改正により、ペルフルオロオクタンスルホン酸（PFOS）が第一種特定化学物質に指定されたことを受け、富士フイルムは、同成分を含有した製品の製造を中止しました。プロビアに関しては、「フジクロームプロビア100F」のシートフィルムの一部にPFOSが含まれていたことが発表されました。

プロビアの主な製品

プロビアシリーズには、様々な感度や特性を持つ製品が存在します。

RDP (フジクローム100プロフェッショナルD): 1983年3月発売。プロビア以前の製品。
RDP II (フジクロームプロビア100): 1994年2月発売。
RDP III (フジクロームプロビア100F): 2000年7月発売。
RHP (フジクローム400プロフェッショナルD): 1980年4月発売。プロビア以前の製品。
RHP II (フジクロームプロビア400): 1994年2月発売。
RHP III (フジクロームプロビア400F): 2000年7月発売。
RSP (フジクローム1600プロフェッショナルD): 増感専用フィルム（通常ISO 400）。プロビア以前の製品。
RSP II (フジクロームプロビア1600): 1994年2月発売。
RXP (フジクロームプロビア400X): 2006年4月発売。

フジクロームプロビア100F (RDP III)

2000年7月に発売された「プロビア100F」は、「フジクロームプロビア100（RDP II）」の後継製品であり、さらに「フジクローム100プロフェッショナルD」（RDP）、「フジクローム100プロフェッショナルタイプD」へと起源を遡ることができます。粒状性はRMS:8、ナチュラルカラー、高彩度、標準階調、高いシャープネスが特徴です。タングステン光下では、フィルターの使用が推奨されています。現像処理は、「フジクロームフィルムプロセスCR-56」または「E-6現像」が指定されています。

フジクロームプロビア400X (RXP)

2006年4月に発売された「プロビア400X」は、「フジクロームプロビア400F（RHP III）」の後継製品であり、さらに「フジクロームプロビア400（RHP II）」、「フジクローム400プロフェッショナルD」（RHP）へと起源を遡ることができます。増感によってEI1600まで感度を上げることができ、これは「フジクロームプロビア1600（RSP II）」、「フジクローム1600プロフェッショナルD」（RSP）の後継と言えます。粒状性はRMS:11、イメージカラー、高彩度、標準階調、標準シャープネスが特徴です。「感度・像構造画質の大幅な進歩」、「色再現性の向上」、「画像堅牢性」が開発時の目標とされました。タングステン光下では、フィルターの使用が推奨されています。2015年12月に生産終了となりました。

フィルムシミュレーションモード

富士フイルムのデジタルカメラには、「フィルムシミュレーションモード」が搭載されています。その中で「Provia（スタンダード）」という名称が使われていますが、これは同名のフィルムを模倣したものではなく、あくまでもフィルムの色を再現するものではありません。

プロビアの参考文献と関連情報

『カラーリバーサルフィルム入門 フジクロームの使い方』（日本カメラ社）
『CAMERA magazine 12』（枻出版社）
富士フイルム公式ウェブサイトのリバーサルフィルム関連情報
富士フイルム足柄研究所のプロビア関連研究資料

関連製品

写真フィルム
映画用フィルム
リバーサルフィルム
富士フイルム
フジクローム
ベルビア
センシア
アスティア
フォルティア
トレビ
エクタクローム
* ヴィットナー・シネテック

プロビアは、長年にわたり多くの写真家から愛されてきたカラーリバーサルフィルムです。その優れた性能と独特の表現力は、デジタルカメラが主流となった現代においても、写真表現の可能性を広げています。

もう一度検索