プロ野球ワールドスタジアム

プロ野球ワールドスタジアム (アーケード版)

『プロ野球ワールドスタジアム』は、株式会社ナムコ（後のバンダイナムコエンターテインメント）が1988年に日本のゲームセンター向けにリリースした野球ゲームです。家庭用ゲーム機の人気シリーズ『プロ野球ファミリースタジアム』（通称：ファミスタ）から派生した、『ワールドスタジアム』（通称：ワースタ）シリーズの記念すべき第一作として位置づけられています。

概要と特徴

本作は1988年3月に稼働を開始しました。ファミリーコンピュータ版からアーケード用の高性能な基板へとプラットフォームを移したことにより、グラフィック表現、サウンド、そしてゲームを盛り上げる演出が大きく強化されています。基本的なゲームシステムは、完成度が高く評価されていた初代『ファミスタ』やその改良版である『ファミスタ'87』を踏襲しています。

本作稼働後、1989年にはバランス調整と最新の選手データに更新した『プロ野球ワールドスタジアム'89開幕版』、1990年には同様のアップデートが行われた『プロ野球ワールドスタジアム'90激闘版』がリリースされました。これらにより、アーケードにおけるワースタシリーズの基礎が築かれました。

主な変更点と進化

本作のリリース前後から、プロ野球選手の肖像権や無断での選手名使用に関する問題がより厳しくなった影響もあり、選手名の扱いに変化が見られます。1作目である本作では、当時読売ジャイアンツに所属していた選手のみ「くわがた」「ほそずか」といったオリジナルの架空名に変更されていましたが、『'89開幕版』以降は全ての球団の選手名が架空のものとなりました。

また、初代『ファミスタ』および『ファミスタ'87』と比較して、以下のような点が変更・追加されています。

チーム編成の刷新:
前作までの地域別混成チーム「レイルウェイズ」と「フーズフーズ」が廃止されました。
これに伴い、現実のプロ野球と同様にセ・リーグをモデルとした「アーバンリーグ」とパ・リーグをモデルとした「カントリーリーグ」に分かれた、各リーグ6球団、合計12球団での編成となりました。
レイルウェイズを構成していたチームは、南海ホークスがモデルの「ホーネッツ」と近鉄バファローズがモデルの「バッカルーズ」として独立。フーズフーズを構成していたチームは、日本ハムファイターズがモデルの「ファイアーズ」とロッテオリオンズがモデルの「オリエンツ」として独立し、プレイヤーが選択可能なチームとなりました。
ただし、リーグ戦モードや指名打者制といったシステム的な違いはなく、このリーグ分けはゲームプレイ上ではほとんど意味を持っていません。また、ナムコスターズのような実在球団をモデルとしない架空のチームは、本作には登場しません。

複数の球場選択:
それまでのファミスタシリーズとは異なり、複数の球場から選択してプレイできるようになりました。
選択可能な球場は、1987年に閉鎖された後楽園球場がモデルの「こーらくえん」、阪神甲子園球場がモデルでラッキーゾーンも再現された「こーしえん」、そして「メジャー」の3種類です。

打順の変更機能:
それまでは固定だったスターティングメンバーの打順を、プレイヤーが自由に組み替えられるようになりました。ただし、試合に出場しない控え選手との入れ替えはできません。

OB選手の代打登場:
初代ファミスタではジャイアンツの代打に「おう」という選手が登場しましたが、本作では全ての球団にOB選手が2名ずつ代打要員として登録されています。このOB選手枠は、『'89開幕版』『'90激闘版』で各球団1名に減らされ、後継シリーズである『SUPERワールドスタジアム』では廃止されました。

サウンドと隠し要素

サウンド面では、ランナーが得点圏にいる場合に流れるBGMが、一部の選手（ジャイアンツを除く）に関しては、当時の選手個人に設定されていたテーマ曲になるという特徴がありました。ただし、広島カープの「らんす」選手のように、1987年時点で個人テーマを持たなかった選手の場合は、球団共通のテーマ曲が流れます。

また、本作にはアドレス「0x38E000」に「COPYRIGHT 1987 NAMCO LTD. ALL RIGHTS RESERVED. PROGRAM BY J.AMANAI」という隠しメッセージが存在しており、サウンド担当の川元義徳氏（kawagen）と、後にテンゲンで「アタリ語」を開発した天内潤氏がプログラムを手がけたことが判明しています。

移植版

アーケード版の稼働からやや遅れて、1990年12月14日にはエス・ピー・エスよりシャープのパソコンX68000向けに本作が移植・発売されました。このX68000版はアーケード版の選手データを含めて忠実に再現されており、さらに全ての球団の選手データをプレイヤーが自由に編集できるエディット機能が追加されています。

なお、1988年5月にはハドソンからPCエンジン向けに本作と同名の『プロ野球ワールドスタジアム』が発売されていますが、こちらはゲームシステムがファミリーコンピュータ版に近く、アーケード版とは内容が大きく異なります。また、パソコン向けにはゲームアーツ開発・発売のPC-88VA版やFM TOWNS版、コンパイル開発・ナムコ発売のMSX2版が存在しますが、これらは全て『ファミリースタジアム』のタイトルであり、『ワールドスタジアム』を冠しているのはアーケード版およびそのX68000移植版のみです。

アーケード版『プロ野球ワールドスタジアム』は、ファミスタの楽しさをそのままに、当時の最新技術でグラフィックとサウンドを強化し、新たな要素を加えて進化させた、ワースタシリーズの原点となる作品です。その後のアーケード野球ゲームの発展に繋がる重要なタイトルと言えるでしょう。

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