ヘム

ヘムについて

ヘム（英語: haem、米語: heme）は、鉄原子とポルフィリンから構成される錯体であり、主に酸素の運搬や電子伝達に関与する重要な分子です。ヘムは、通常2価の鉄とプロトポルフィリンIXからなるプロトヘム、すなわちフェロヘムを指します。ヘムは、ヘモグロビンやミオグロビン、ミトコンドリアの電子伝達系に存在するシトクロム、さらには薬物代謝に関与する酵素であるP450やカタラーゼ、一酸化窒素合成[[酵素]]、ペルオキシダーゼなど、多くのヘムタンパク質の構成要素として重要な役割を果たしています。

ヘムの生合成

ヘムは、8つの段階にわたる生合成過程を経て作り出されます。以下にその各段階を詳しく説明します。

第1段階

最初の段階では、アミノレブリン酸シンターゼという酵素がグリシンとスクシニルCoAを結合させて、δ-アミノレブリン酸を生成します。この過程はミトコンドリア内で進行し、鉄の有無によって厳密に調整されています。ここで生成されたアミノレブリン酸は、さらに生合成の次の段階へと進みます。

第2段階

生成されたδ-アミノレブリン酸は、細胞質内に存在するアミノレブリン酸脱水酵素によって脱水縮合され、ポルフォビリノーゲンに変換されます。これは、ポルフィリン合成の基盤となる重要なステップです。

第3段階

続いて、細胞質内でポルフォビリノーゲンが更に結合してヒドロキシメチルビランを形成します。この際、アンモニアが脱離し、ピロール環が連結された新たな構造を得ます。

第4段階

次に、ヒドロキシメチルビランがウロポルフィリノーゲンIIIシンターゼにより縮合してウロポルフィリノーゲンIIIを生成します。この段階でピロール環が適切に整列し、環を形成することが重要です。失敗した場合は他の化合物に変わり、ポルフィリン症の可能性を高めます。

第5段階

ウロポルフィリノーゲンIIIが脱炭酸を受けてコプロポルフィリノーゲンIIIとなり、この反応も細胞質で進行します。

第6段階

次に、コプロポルフィリノーゲンIIIはミトコンドリアに移動し、酸化を受けプロトポルフィリノーゲンIXへと変化します。これにより、ヘム合成の準備が整います。

第7段階

プロトポルフィリノーゲンが酸化され、最終的にプロトポルフィリンIXが形成されます。このステップも重要で、ヘムの主成分が得られます。

第8段階

最後に、鉄付加酵素によってプロトポルフィリンIXに鉄が配置され、ヘムの完成形が作られます。

ヘムの分解

ヘムは脾臓内のマクロファージによって分解され、古い赤血球の除去に寄与します。この過程で、最初にヘムオキシゲナーゼが働き、ヘムがビリベルジンに変換されます。これに続いてビリベルジンがビリルビンに還元され、次第に肝臓での処理を受け、最終的には胆汁や尿として排泄されます。

このように、ヘムは体内で重要な役割を果たし、その合成と分解の過程は多くの生理的機能に深く関わっています。

もう一度検索