ヘンリー・マーティン (レジサイド)

ヘンリー・マーティン：イングランド革命を駆け抜けた急進派

ヘンリー・マーティン (1602年-1680年) は、17世紀イングランドを揺るがした清教徒革命において、中心的な役割を果たした政治家でした。ジェントリ階級の出身である彼は、オックスフォード大学卒業後、法曹院を経て、1640年の短期議会、長期議会に庶民院議員として選出されます。

初期の議会活動から、マーティンは王政批判を積極的に行っていました。1641年12月には、ジョン・ピムら議会派のロンドン塔確保工作にも関与しています。しかし、第一次イングランド内戦が始まると、その行動はますます過激さを増していきます。

内戦勃発直後から、マーティンは議会内での過激な言動で物議を醸しました。国王攻撃のパンフレット焼却命令に反対し、議会の課税に抗議する法律家に反論、議会軍司令官エセックス伯の軍事行動の遅さを批判するなど、議会内で孤立を深めていきます。

1643年には、その過激さは頂点に達します。3月30日には、王妃ヘンリエッタ・マリアの礼拝堂を襲撃し、内部にあった聖像や祭壇画を破壊。国王との和睦交渉に対する国王の回答を拒否する発言も行い、偶像破壊を扇動するなど、その行動はもはや制御不能となっていました。さらに、ノーサンバランド伯の手紙を勝手に開封し、激怒したノーサンバランド伯から杖で殴られるという事件も引き起こしています。これらの行為は、ジョン・ピムら議会派指導部との対立を深めることにも繋がりました。

7月には、議会過激派を率いてエセックス伯を批判、ウィリアム・ウォラーを支持するなど、議会軍内部に深刻な分裂の危機をもたらします。ピムの介入で分裂は回避されましたが、マーティンは議会内で孤立を深め、8月には、国王への徹底的な反抗を主張する聖職者ジョン・ソルトマーシュを支持したことで議会から追放され、ロンドン塔に投獄される事態に陥ります。

2週間後に釈放されたものの、議会活動は停止され、1646年7月まで議会復帰は叶いませんでした。復帰後はオリバー・クロムウェルに接近、ヘンリー・ベイン、オリバー・シンジョンと共にクロムウェルの支持者となります。平等派とも関係を持ち、平等派指導者ジョン・リルバーンの著作にも関与したとされています。リルバーンが提唱した、70人の議員で構成される最高機関（サンヘドリン）構想にも関わっていたと伝えられています。

1647年には議会でチャールズ1世との交渉打ち切りを主張。1648年には、北に留まっていたクロムウェルを呼び戻し、プライドのパージ直後にクロムウェルと再会を果たします。そして、チャールズ1世の死刑執行令状に署名、イングランド共和国の樹立に貢献しました。共和国成立後も、貴族院廃止、王政廃止、国務会議への行政権委託など、共和政体制の整備に尽力します。しかし、1653年4月、クロムウェルがランプ議会を解散すると、ベインらと共に権力から排除されます。

王政復古後はチェプストウ城に投獄され、1680年に獄死しました。熱心な共和主義者であった一方、宗教心は薄く、長老派を嫌っていたと伝えられています。クロムウェルとの関係は複雑で、1653年の排除までは良好な関係を保ちつつも、クロムウェルとは異なる政治的信念を持っていました。チャールズ1世の脱走疑惑ではクロムウェルの関与を疑い、チャールズ1世処刑の正統性を議論したり、処刑令状に署名する際にクロムウェルとインクを互いの顔に塗り合ったという逸話も残されています。

マーティンは、徹底した共和主義者として、イングランド革命において重要な役割を果たしました。その過激な言動と政治的信念は、現代においても多くの議論を呼び起こしています。彼の生涯は、激動の時代を生き抜いた一人の政治家のドラマとして、歴史に刻まれています。

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