ベジマイト

ベジマイト：オーストラリアを代表する発酵食品

ベジマイトは、オーストラリアで広く愛されている、独特の風味を持つ発酵食品です。その強烈な味から「世界一まずいジャム」と評されることもありますが、オーストラリア人にとっては幼い頃から親しんだソウルフードと言えるでしょう。

歴史

第一次世界大戦中、イギリスからのマーマイトの輸入が途絶えたことがきっかけとなり、1923年にフレッド・ウォーカー氏の会社で食品技術者を務めていたシリル・パーシー・キャリスター氏によって開発されました。商品名は一般公募され、ウォーカー氏の娘シーラさんが無作為に選んだものが採用されました。

長らくモンデリーズ・インターナショナルが商標権を保有していましたが、2017年にオーストラリアの乳製品メーカー、ベガ・チーズが4億6,000万オーストラリアドルで買収しました。

製法

ベジマイトは、ビール醸造の副産物であるイースト菌抽出物（酵母エキス）と塩を主な原料として作られています。麦芽抽出物も含まれており、チアミン（B1）・リボフラビン（B2）・ナイアシン（B3）・葉酸（B5）などのビタミンB群が豊富に含まれています。

味や製法がマーマイトに似ていることから、かつては「パーウィル（Parwill）」という商品名を使用していた時期もありました。これは「ママはこの味が好きじゃないかもしれないけど、パパならきっと好きだと思う」という意味合いが込められています。

栄養価の高さから、第二次世界大戦時には軍の携帯食として採用され、現在もオーストラリア国防軍で利用されています。

ビクトリア州メルボルン近郊の工場で製造されており、オーストラリアを中心に年間2,300万個が販売されています。

食べ方

ベジマイトは非常に塩辛く、エビオス錠のような酵母製剤に似た独特の香りがあります。そのため、パンに塗る際はバターやチーズと一緒に、ごく薄く塗って食べることが一般的です。こうすることで、強烈な味が和らぎ、美味しく食べられます。

オーストラリアでは、ベジマイトにチーズを加えた「チージーバイト（Cheesybite）」という商品も販売されています。また、「チージーマイト・スクロール（Cheesymite Scroll）」や「チェダーマイト・スクロール（Cheddarmite Scroll）」といった、チーズとベジマイトを巻き込んだペストリーも人気があります。

離乳食としても利用され、1歳頃から食べ始める子供もいます。

文化的な影響

「We're happy little Vegemites」という歌を使った1940年代の販促キャンペーンは、ベジマイトのイメージを確立する上で大きな役割を果たしました。この歌は、健康的で笑顔の子供たちを描き、ベジマイトを国民的な食品として印象付けました。1956年のメルボルンオリンピックでもテレビCMで放映され、多くのオーストラリア人が「happy little Vegemite」というフレーズを、そのような子供たちを表す言葉として使っています。

オーストラリアのロックバンド、メン・アット・ワークのヒット曲「Down Under」の歌詞にも登場し、オーストラリア国外でもベジマイトが知られるきっかけとなりました。1980年代初頭に世界的なヒットとなったこの曲は、オーストラリアがアメリカスカップで優勝した際に「非公式の国歌」として歌われました。

ベジマイトは、オーストラリアの食文化を語る上で欠かせない存在であり、その独特な風味は、オーストラリアの人々のアイデンティティの一部となっています。

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