ベネディクト・アントン・アウフシュナイター

ベネディクト・アントン・アウフシュナイター（1665年洗礼 - 1742年没）は、17世紀後半から18世紀前半にかけて活躍したオーストリアのバロック音楽作曲家です。チロル地方キッツビュールの出身。ウィーンで音楽教育を受け、皇帝の宮廷に仕えた後、ドイツとの国境に近いパッサウの宮廷楽長としてキャリアを確立しました。

生涯

アウフシュナイターは西オーストリアのキッツビュールに生まれ、ウィーンで専門的な音楽教育を受けました。後に皇帝の宮廷礼拝堂での職を得るなど、首都で音楽家としての第一歩を踏み出します。1705年、彼は重要な転機を迎えます。パッサウ司教の宮廷に、楽長として迎えられたのです。この地位は、当時著名な作曲家ゲオルク・ムッファトが死去した後の後任として極めて重要なものでした。パッサウに移り住んだアウフシュナイターは、この地で生涯を過ごしました。彼は二度結婚しており、二度目の妻との間に一人息子がいました。パッサウの宮廷楽長として、亡くなる1742年までその任を務め、多くの作品を生み出しました。

作品

アウフシュナイターの音楽作品は、現在約300曲が現存しています。その中心は、カトリック教会で用いられるための宗教音楽です。彼の主要な作品集には以下のようなものがあります。

『調和ある不調和』 (Concors discordia) Op.2：1695年、ニュルンベルク出版の6曲のセレナーデ集。
『甘美なる和声の調べ』 (Dulcis Fidium Harmonia) Op.4：1703年、アウクスブルク出版の8曲の教会ソナタ。各曲は聖人に献じられています。
『晩祷詩篇集』 (Memnon sacer ab oriente) Op.5：1709年、アウクスブルク出版。
『ミサ曲集』 (Alauda V) Op.6：1711年出版の5曲のミサ曲。
『オッフェルトリウム集』 (Aquila clangens) Op.7：1719年、パッサウ出版の12曲のオッフェルトリウム。
『晩祷詩篇集』 (Cymbalum Davidis) Op.8：1728年、パッサウ出版の4曲の晩祷詩篇。
* その他、1738年のレクイエム ハ長調、未出版のミゼレーレ Op.9 (1724年)、各種コンチェルト、ソナタなども知られています。

音楽理論

アウフシュナイターは、音楽理論に関する著作『Regulæ Fundamentales Musurgiæ』（良い音楽を作曲するための基本原則）を残しています。この本の中で、彼は自身の音楽観や作曲法について述べています。理想的な作曲家として、イタリアのジャコモ・カリッシミ、フランドル出身のオルランド・ディ・ラッソ、そしてドイツのヨハン・カスパール・ケルルといったバロック期の巨匠たちの名前を挙げ、彼らの作品に学ぶことの重要性を説きました。

結び

ベネディクト・アントン・アウフシュナイターは、ウィーンでのキャリアを皮切りに、パッサウの宮廷楽長として長きにわたり活躍した、バロック中期の重要な作曲家です。彼の遺した約300曲に及ぶ作品、特に教会音楽は、当時の典礼音楽の実態を知る上で貴重な資料となっています。また、音楽理論に関する著作は、彼の音楽観や当時の作曲教育の一端を垣間見せてくれます。現代では、国際楽譜ライブラリープロジェクトなどを通じて彼の楽譜が入手可能となり、知られざるバロックの響きに触れる機会が広がっています。

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