ベリーズの歴史

ベリーズの歴史

ベリーズの歴史は、先古典期から現代まで、多様な文化と歴史が織りなす複雑な変遷をたどります。

先古典期（紀元前1200年頃～紀元100年頃）

ベリーズの地では、マヤ文明が最も初期の段階から発展しました。特に、オレンジウォーク郡のクエリョ遺跡では、マヤ最古の土器であるスワジー式土器を伴う集落跡が発見され、紀元前1200年頃にまで遡る居住の痕跡が確認されています。この遺跡は、楕円形の基壇を持つ住居跡から成り、マヤ文明の初期における集落形成を知る上で貴重な情報を提供しています。

先古典期後期になると、ラマナイ遺跡では、壮大なピラミッド神殿が建設されました。この神殿は、33mにも及ぶ高さで、その両脇には、4mにも及ぶ漆喰彫刻の神々の顔が飾られていました。このスタッコ人頭は、当時のマヤの宗教観や芸術性を反映しており、セロス遺跡など他の地域でも同様の装飾が見られます。ノームルでも、大規模な建築活動が確認されており、この時期におけるマヤ文明の繁栄を物語っています。

古典期（紀元2世紀頃～紀元900年頃）

古典期に入ると、ベリーズにはテオティワカンの影響が見られるようになります。アルトゥン・ハ遺跡では、テオティワカンの儀式で使用されたと考えられる黒曜石製品や土器が発見されました。ただし、その影響は限定的であり、在地マヤ人の文化が主流であったと考えられます。この時期には、カラコルがマヤ山地のモパン川上流に位置する都市国家として繁栄しました。カラコルは、ヤハゥ=テ=キニチ2世の時代に、カラクムルと同盟を結び、ティカルを破るなど、地域における強大な勢力を誇りました。また、ラマナイでは、先古典期から使用されていた神殿が、さらに拡張されました。この時期には、ルバアントゥン、シュナントゥイニチなどの都市も建設され、マヤ文明がベリーズ全域に広がりました。

後古典期（紀元900年頃～1531年）

後古典期には、グアテマラ北部のペテン低地でマヤの都市が放棄される中、ラマナイは人口を維持し、繁栄を続けました。また、ノームルが復興し、ユカタン北部の影響を受けた建築物も建てられました。ベリーズ各地の遺跡からは、ユカタン半島の遺跡で出土するのと同様の香炉が発見されており、これはチェトウマルという国がこの地域で繁栄していたことと関連していると考えられます。沿岸部のキーでも遺跡が見られ、鉛釉土器の出土が見られることから、この時期のベリーズが交易において重要な役割を担っていたことが示唆されます。1527年には、スペインの征服者フランシスコ・デ・モンテーホがチェトゥマルの中心地を訪れ、2000もの家屋があったと記録しています。

スペイン植民地時代とイギリス人の入植（1531年～1798年）

1531年以降、スペインの侵攻によって、ベリーズのマヤ勢力は衰退に向かいました。この地はグアテマラ総督府の管轄下に置かれましたが、密林地帯の辺境であったため、実質的な支配は及んでいませんでした。1638年、イギリスの武装船団がベリーズに到達し、セント・ジョージ島に入植を始めました。スペインは一時的にイギリス人を追放しましたが、1660年には、イギリス人バルトロマイ・シャープがマホガニーやアカミノキの伐採を開始し、その木材をイギリスに輸出しました。このことがきっかけとなり、イギリスはベリーズへの定住を強化し、1763年と1783年の条約を通じて、スペインにベリーズの自由使用を認めさせました。1784年以降、イギリス人は対岸のベリーズ・シティに移住し、1798年にスペイン軍を破り、事実上のイギリス植民地となりました。

イギリス植民地時代（1798年～1981年）

1821年にグアテマラが独立すると、グアテマラはベリーズに対する領有権を主張し、イギリスの支配を不法占拠とみなしました。しかし、1859年にイギリスがグアテマラに道路を建設する代わりに、ベリーズの使用収益権を認めさせましたが、道路建設は実行されませんでした。イギリスは、入植者を増やし、1862年にはベリーズをイギリス王室植民地「英領ホンジュラス」としました。1884年にはジャマイカから独立したイギリス植民地となりました。1950年代に入り、ベリーズでは独立運動が高まり、人民連合党が誕生しました。1954年には憲法が制定され、1957年には自治権を獲得、1963年には自治政府が認められましたが、グアテマラとの間で独立交渉は難航しました。1972年に首都は内陸のベルモパンに移され、1973年には「ベリーズ」を国名とすることが決定されました。独立は1981年9月21日に達成され、イギリス連邦加盟国となりました。政治体制は、イギリス国王を元首とする英連邦王国です。

グアテマラとの国交回復から現在へ（1981年～現在）

1986年、グアテマラはベリーズの独立を承認し、領有権を放棄しました。1991年には、安全保障協定が締結され、両国間の国交が回復しました。ベリーズは、独立後、カリブ海地域における重要な国として発展を続けています。

関連項目

世界の歴史
世界の一体化
中央アメリカ史
スペインによるアメリカ大陸の植民地化
イギリスによるアメリカ大陸の植民地化
マヤ文明
グアテマラの歴史
ホンジュラスの歴史

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