ペラゴニアの戦い

ペラゴニアの戦い：東地中海の覇権をかけた激戦

ペラゴニアの戦いは、1259年初夏（または初秋）に現在のギリシャ、ペラゴニア平原で繰り広げられました。ニケーア帝国と、エピロス専制侯国、シチリア王国、アカイア公国からなる反ニケーア連合軍が衝突し、東地中海地域の勢力図を大きく変えることになった、歴史的に重要な戦いです。

戦いの背景：十字軍による帝国の分裂

1204年の第4回十字軍によるコンスタンティノープル占領後、ビザンツ帝国は分裂し、各地に亡命政権が誕生しました。その中でも、小アジア西部のニケーア帝国と、ギリシャ西部のエピロス専制侯国が有力となり、互いにコンスタンティノープル奪還を目指していました。

ニケーア帝国は着実に勢力を拡大し、コンスタンティノープル奪還を視野に入れるようになりました。これに対し、エピロス専制侯ミカエル2世は、シチリア王マンフレーディ、アカイア公ギヨーム2世・ド・ヴィルアルドゥアンらと反ニケーア同盟を結び、ニケーア帝国に対抗しようとしました。

戦闘の経過：連合軍の足並みの乱れ

反ニケーア連合軍は、エピロス専制侯国とラテン人国家間の確執や対抗意識から、足並みが乱れていました。エピロスを率いるミカエル2世は、戦闘前日にラテン系国家を見限り撤退。さらに、彼の落とし子ヨハネス1世ドゥーカスはニケーア陣営に鞍替えするという事態に。

残されたアカイア・シチリア両軍は、ニケーア帝国軍によって打ち破られ、ギヨーム2世を含む多くの貴族が捕虜となりました。

戦いの影響：ビザンツ帝国の復活

ペラゴニアの戦いの勝利により、ニケーア帝国は1261年にコンスタンティノープルを奪還し、ビザンツ帝国を復活させることに成功しました。また、ニケーア帝国はエピロス、テッサロニキをも征服し、勢力を拡大しました。

1262年には、ペラゴニアの戦いで捕虜となっていたアカイア公ギヨーム・ド・ヴィルアルドゥアンが釈放されましたが、代わりにモレア半島の南東部にあった3つの砦がニケーア帝国に引き渡されました。これらの砦は、ニケーア帝国がギリシア半島を制圧するための橋頭堡となり、翌世紀にはモレアス専制公領が設立されました。

両軍の戦力

反ニカイア連合軍

エピロス専制侯国：ミカエル2世とその息子たちが軍を率いる。ヴラフ人を含む。
アカイア公国：ギヨーム2世がフランク人諸侯の軍勢を率いる。モレア年代記には誇張された兵力が記述されている。
* シチリア王国：マンフレーディはドイツ人騎士を派遣。

ニカイア帝国軍

ギリシア本土、小アジア、マケドニア、トラキアからの部隊、傭兵で構成。ドイツ人騎士、ハンガリー人騎馬弓兵、セルビア人弓兵、ブルガリア人騎馬隊、テュルク人騎馬隊、クマン人騎馬隊などが参加。

戦闘の戦略

ニカイア軍は数的に劣勢であったため、連合軍の連携の弱点をつき、戦術で対抗。ヨハネス・パレオロゴスは、連合軍の士気を下げるために、軽装部隊による襲撃や補給の妨害を行った。また、ミカエル2世を欺く策略を実行し、連合軍から離脱させた。

戦後の展開

ペラゴニアの戦い後、ニカイア帝国（後のビザンツ帝国）はギリシア方面への領土を拡大。しかし、ミカエル2世はイタリア人傭兵を率いてアルタを奪還し、ニカイア軍を駆逐。アカイア公国はニカイア帝国に圧迫され、モレア専制侯領が設置されることとなった。

ペラゴニアの戦いは、東地中海の勢力図を大きく変え、ビザンツ帝国の復活を決定づけた重要な戦いとして、歴史に刻まれています。

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