ペラルゴン酸

ペラルゴン酸

ペラルゴン酸は、炭素数9の飽和脂肪酸で、特有の不快な臭いを持つ油状の液体です。化学的には、9個の炭素原子が連なった鎖の末端にカルボキシル基（-COOH）が付いた構造をしています。水には溶けにくい性質を持ちますが、クロロホルム、エーテル、アルコール、酢酸エチルなどの有機溶媒にはよく溶けます。消防法上は、第4類危険物 第3石油類に分類されます。

概要

ペラルゴン酸は、天然にはテンジクアオイ属（Pelargonium）、キイチゴ属、Ajania属などの植物の精油中にエステルとして存在します。高濃度では皮膚や角膜に対する刺激性を示すことがあります。また、エルカ酸をオゾン分解することによっても生成されます。

工業用途

ペラルゴン酸は、その化学的特性から様々な工業分野で利用されています。

可塑剤、ラッカー、接着剤、アルキド樹脂、柔軟剤の製造: これらの製品の性能や特性を向上させるために添加されます。
除草剤: 動物に対する毒性が比較的低いことから、除草剤としても利用されています。植物に付着すると、細胞壁を破壊し、細胞内のpHを急激に低下させることで植物を枯死させます。
香料: ペラルゴン酸メチルなどの合成エステルは、食品添加物として香料として使用されます。
催涙スプレー: ペラルゴン酸のアミドである4-ノナノイルモルホリンは、催涙スプレーの活性成分として用いられます。

ヒトのにおいとの関連

ペラルゴン酸は、ヒトの皮膚にも存在し、加齢に伴う体臭の原因物質の一つとして知られています。2008年には、「30代男性特有のにおい」の原因物質として特定されました。これは、加齢臭の原因となる2-ノネナールとは異なるものです。

このにおいは、皮脂の酸化によって生じると考えられており、紫外線などの外的要因や、ストレス、不規則な生活習慣などの内的要因によって促進されます。特に30代男性は皮脂分泌量がピークに達するため、酸化が顕著になりやすいとされています。発生源としては、皮脂腺の多い胸、背中、首周りなどが挙げられます。

ポリフェノールを豊富に含むメマツヨイグサ抽出液には、ペラルゴン酸の酸化を抑制し、においを緩和する効果があるという報告もあります。

関連項目

* 加齢臭

もう一度検索